(画像はwikipediaより転載)
要約
エセックス級航空母艦はヨークタウン級空母をベースに改良された空母で開放型格納庫を持つ。最高速度33ノットで32隻が計画され24隻が竣工、第二次世界大戦では米海軍の中核として活躍した。戦後は数度の大改装を行い1990年代初頭まで運用された。
航空母艦 エセックス級
性能(竣工時)
基準排水量 27,100トン
全長 265.8m
全幅 32.9m
飛行甲板 270.7m×45m
エレベーター 3基
機関出力 150,000馬力
最大速力 33ノット
航続距離 20,000海里 / 15ノット
乗員 2,631名
武装 38口径12.7cm高角砲連装4基
38口径12.7cm高角砲単装8基
40mm4連装機銃8基
20mm単装機銃46挺
搭載機 90-100機
同型艦 24隻
開発経緯
日本がロンドン海軍軍縮条約を脱退したため、条約締結国はエスカレーター条項を発動した。エスカレーター条項とは批准国が脱退した場合、残りの批准国は条約の条件を緩和する規定でこの条項の発動により批准国は戦艦のトン数、主砲の大きさの拡大、さらには保有枠の拡大などが可能となった。
空母はさらに40,000トンの保有枠が追加されたため米国はヨークタウン級空母を1隻(CV-8 ホーネット)を建造、さらに残りの20,000トンで新造空母の建造を計画したものの世界は無条約時代に突入したため、それまで条約の枠内での建造を行っていた米海軍もそれまでの空母の運用で得た経験から理想的な航空母艦の設計、開発を開始した。
ベースとしたのはヨークタウン級空母であったが、理想的な条件を盛り込んだためヨークタウン級空母が20,000トンクラスであったのに対して27,000トンと巨大化することになった。エセックス級は全長270.7m、幅45m、最高速度33ノットという大型高速空母となった。
エセックス級空母
アイランドは飛行甲板右側に煙突と一体化した艦橋を設置、格納庫は解放型で飛行甲板は262.7m×32.9m、前後から着艦が可能になった(1944年に廃止)。航空機の発艦も1番艦エセックスには搭載されていないが、2番艦以降にはカタパルトが搭載された。エレベーターは3基である。
飛行甲板には装甲は無く、格納庫下の第一甲板に装甲板が装備されるという開放型格納庫を採用した。これは飛行甲板に装甲を施してしまうと航空機の搭載数が減少してしまうことと艦のトップに重量のある装甲があることで艦の復元力の低下を防ぐためのものであった。第一甲板には装甲が施されているため上部から爆弾の直撃を受けた場合も飛行甲板を貫通した爆弾は第一甲板の装甲によって深部への被害を防ぐことができるが航空機や燃料、そして整備員やパイロット待機室がある第一甲板上は地獄絵図となる。
対空兵装も38口径5インチ連装砲4基、同単装砲8基、56口径40mm機関砲68基と充実している(後に撤去)。艦内にはCIC(戦闘指揮所)が設けられた上でそれが旗艦のCICを中心に有機的に結合しており旗艦CICの指示の下効率的な対空戦闘を行うことが可能となった。エセックス級は32隻が計画、24隻が竣工した。
1番艦エセックスは1941年4月28日に起工、1942年7月31日に進水、1942年12月31日に竣工した。以降24隻が続々と竣工、第二次世界大戦中に17隻が竣工した。最後に竣工したのは1950年9月25日に竣工したCV-34オリスカニーである。
第一次近代化改装(SCB-27)
1947年から1955年の間に実施された改装である。第二次世界大戦終結後、航空機の主流はジェット機となっていったが、ジェット機はレシプロ機に比べて着陸速度が早く相対的に重量が重いためジェット機を運用するために空母も改修が必要となった。SCB-27の改修内容はカタパルトの設置、飛行甲板、エレベーターの拡張、強化、艦橋の再設計、燃料を大量に消費するジェット機に対応して航空燃料の積載量を1.5倍に増加させた。
さらには緊急時の消火システムを強化、艦内にはパイロットのためのエスカレーターまで設置された。対空火器も38口径5インチ連装砲4基が撤去されより高性能の50口径3インチ連装砲に換装されている。この改装はカタパルトの違い等からSCB-27AとSCB-27Cの2タイプが存在する。15隻が改装された。
第二次近代化改装(SCB-125、SCB-144)
1954年から1959年に実施された改装である。主な改造は米空母で初めてアングルド・デッキ(着艦用の斜めの滑走路)が装備したこと、艦首部と甲板が一体化したことである。SCB-27の改装が施された艦の内14隻が改装された。さらに1960年初頭にはSCB-144改装を実施してソナーが装備された他、CICも一部改良された。
対潜水艦作戦用支援空母(CVS)と強襲揚陸艦
上記の近代化改装を受けていない8隻はより最新鋭の空母フォレスタル級が竣工すると対潜水艦作戦用支援空母(CVS)として運用され、内3隻は強襲揚陸艦として改装、固定翼機の発着艦装置を撤去、対空火器の削減、主機関の削減が行われ、新たに海兵隊員や機材の収容スペースが確保された。
艦載機は全てヘリコプターで格納庫内に10機、甲板上に20機の合計30機が搭載された。この強襲揚陸艦はCVS-21ボクサーが最初に改装されたためボクサー級強襲揚陸艦と命名された。ボクサーの他2隻が改装されそれぞれの船体分類記号はCVS-21ボクサーがLPH-4、CVS-37プリンストンがLPH-5、CVS-45ヴァリー・フォージがLPH-8である。
戦歴
1942年12月31日1番艦エセックスが竣工、1943年春には戦列に加わった。以降続々と竣工、米機動部隊の中核としてマキン・タラワ攻撃を皮切りにトラック島空襲、マリアナ諸島攻撃、マリアナ沖海戦等、終戦まで活躍した。戦争末期には特攻機の攻撃により多数のエセックス級空母が損傷を受けたが、撃沈された艦は皆無であった。
戦後は海軍の縮小により前述の改装中の一部の艦以外のほとんどの艦は予備役に編入されたが朝鮮戦争が始まると現役に復帰、1950年代中盤までに24隻中22隻が現役に復帰した。因みに復帰しなかった2隻は空母CV-13フランクリンとCV-17バンカー・ヒルでこの2隻は近代化改装を上回る「究極の改装」計画のために温存されていた。
1950年代後半になるとエセックス級空母も徐々に退役、1955年以降、フォレスタル級空母が竣工すると、1958年にCV-47フィリピン・シー、1959年にCV-32レイテ、1960年にCV-40タラワと退役していった。この退役は近代化改修を施されていない艦が対象であり、退役を免れた艦も対潜水艦作戦用支援空母に変更され対潜水艦戦用に運用、のちに数隻は強襲揚陸艦に改装される。
1960年代後半から1970年代になると近代化改装を施された艦も退役が始まり、「究極の改装」計画のために温存されていたCV-13フランクリンやCV-17バンカー・ヒルも退役、1991年のCV-16レキシントンの退役により全エセックス級空母の退役が完了した。
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