要約
モデルガンは1971年の法規制によって金属モデルガンは銃口を完全に閉塞した上で黄色または白色に着色しなければならなくなった。さらに1977年には金属素材を柔らかい素材にすること銃口シリンダーに改造防止の鋼材を入れること銃身分離式の禁止などが法規制された。これらはモデルガンに限らずエアガンにも適用される。スライド、フレーム等の主要パーツが金属というのは違法である。エアガンはパワー規制もあり、2006年にパワーの上限が0.98ジュールと決められている。
私が初めてWAのマグナブローバックを購入した当時、確か、1990年代中盤だったと思う。サードパーティーからコンバージョンキットが発売された。当時はフルメタルというのは違法ではなかったので、興奮しながら購入したものだった。何たって、トイガンが全金属製になるのだ。ガンファンにとっては夢に一歩も二歩も近づいたのだ。興奮しないはずがない。しかし一抹の不安というのもあったのは確かだ。子供の頃からのガンマニアだった私にとって日本の銃規制というのは良く知っている。
これはモデルガンの生みの親であり、我らガンマニアの実の親でもある小林太三氏、通称「タニオコバ」大先生様の貴重な話。モデルガンの規制について語っている。本記事では触れていないモデルガンの火薬量の話なども語っている。時間を作って是非視聴して欲しい。
モデルガンの2度の規制
46年規制
今では想像もつかないが、当初のモデルガンは金属製で銃口がガッポリ開いた実銃と見間違うばかりの外観と実銃と同じ撃発システムを持ったものであった。とはいっても、素材は強度の非常に弱い亜鉛合金で、メーカーによっては実銃よりも小さめに製作したりしていたが、一般人に素材の強度や実銃の大きさの違いが分かるはずもなく、残念ながら威嚇用途で犯罪に使用されてしまった。そのため1971年(昭和46年)にモデルガンは銃口にあたる部分を完全に閉塞した上で黄色、または白色に着色しなければならないという法律が制定された。これがいわゆる46年規制というものだ。
52年規制
この時点では外観上の規制はされはしたが内部機構等には規制が無く相変わらず銃口が閉塞された状態の金色または白色(金色も黄色と看做される)のモデルガンであったが、モデルガンの構造上、実銃への改造が容易と考えた一部の人によりモデルガンに実弾を込め発射出来るように改造するという事件が勃発した。所謂「改造拳銃」というもので、これに対応するように1977年(昭和52年)、モデルガンを改造して実弾を発射できるようにした「改造拳銃」を取り締まるために構造の規制が行われることになった。
この規制の主な内容はモデルガンの材質として柔らかい金属を使用すること、銃口、シリンダーにインサートという改造防止の鋼材を入れること、同時にリボルバーはシリンダーの強度を低下させるために隔壁に切れ目を入れること、銃身分離式モデルガンの禁止(銃身のみを交換することで実弾を発射することが可能となるという判断)等、厳しいものだった。これが52年規制と呼ばれるものだ。
これにより構造上、コルトガバメントのような銃身分離式の金属モデルガンは違法になった。因みに金属以外のモデルガン、エアーガンにはこの法律は基本的には適用されないが、メーカーの自主規制としてプラスチック製モデルガンにも銃口にインサートが設置されている。
フルメタルエアーガン誕生
1980年代になるとモデルガンは徐々に衰退していきエアーガン全盛の時代となる。6mmBB弾もこの時に生まれた。実銃とは全く異なる発射機構を持つエアーガンはガスガンとなり、徐々に高性能化して外観上のリアリティも実銃さながらの完成度にまで達したのだった。この進化は現在でも続いている。
ここで1990年代になるとサードパーティからフルメタルに改造可能なパーツが発売されることが多くなった。上記の規制がありながら大丈夫なのかと心配になったが、どうも実銃と全く異なる発射機構であるが故に法律には抵触しないという理屈であったようだ。
しかし、間違いなく46年規制には抵触しており、現在では全金属製のガスガン(模造拳銃)は違法という認識で間違いはない。パーツとして所持する分には問題は無いようだが、それはあくまでもパーツとしてであって、警察は工具無しで組み立てられる状態はパーツとは認識していない。
模造銃に金属の使用が認められるのは内部構造等のまさにパーツであって、スライドのみ、フレームのみであれば合法というのも根拠はない。これはかつてASGKが「ハーフメタルはOK」という通達を一度出しすぐに訂正したものの、これが独り歩きしてしまった結果であると言われている。基本的に銃の主要部分にメタルパーツを使用することは禁止されていると理解するのが安全である。
因みにモデルガンやエアガンのライフルやショットガン、サブマシンガン等のいわゆる「長物」に関してはフルメタルは合法である。理由は定かではないが、日本でもこれら「長物」の実銃を所有することが可能であるということからそれほど厳しくは取り締まっていないようだ。
法律は守ろう
実銃の世界でポリマーフレームが流行している現在、実銃=全金属という発想自体がガンファンからすると前時代的だし、ガスガンを全金属製にしたところで実弾を撃てる訳でもない。発射機構が全然違うのだ。そもそも実弾を持っている段階で違法だ。
実際、この法律に怒っているファンは少なくない。しかし、おかしいと思っても法は法。「おかしいと思うので守りませーん」という訳にはいかない。日本に住んでいる以上、法律は守らなければならない。ちょっと面倒は話になってしまったが、とりあえず、これが私のフルメタルに対する考えだ。
金属製スライド、フレーム
規制とは別に、実際的な問題として金属スライドの装着はお勧めしない。これは純粋に性能面からの理由だ。アルミフレームはともかく、アルミスライドはプラスティックに比べて頑丈だ。実銃のトレーニングとして使用している人には強度を確保するためにアルミスライドに交換する人や外観のリアリティが増すので好む人もいる。
但し、アルミスライドに交換することによりプラスチック製よりも質量の重いスライドの動きは当然遅くなる。そもそもメーカーはプラスチックのスライドを使用することを前提にエンジンを設計している。アルミの重量が負担になるのは当然のことだ。それを改善するためにはリコイルスプリングを軽くしたり、バルブのガス流出量を増やしたりするカスタムが必要だ。パーツ代もバカにならないがそれだけではない。スライド、パワーは命中精度にも影響するのでそのへんの調整もしなければならない。最近のエアガンメーカーの製品は出荷時で命中精度が高い。昔とは比べ物にならない。
アルミスライドを組み込めば、どんなに調整してもなかなか正規品以上の命中精度にはならない。どんなに頑張って調整しても、性能は落ちるか維持できるかのどちらかだと思う。もちろん腕のいいガンスミスが調整すれば命中精度が上がることもあるだろうけどそれなりのコストまたは知識、技術が必要だ。
プラスチック製といえども現在のメーカーのプラスチックの技術はかつての比ではない。HW材の使用やブルーイング済の製品、メッキ技術も今では外観上は実銃と遜色のないところまで高められている。それらを捨てて敢えて「ちょっとだけ重くなる」「金属の作動音がでる」という程度の目的のために大枚を払って金属パーツを購入する必要はあるのだろうか。重さも作動音もしょせんは実銃には遠く及ばない。私は法規制がなくてもメタルフレーム、スライドは組み込まない。
ということで私は基本的にドレスアップパーツを装着する以外のカスタムはしていない。リアルな外観であれば、タナカのジュピターフィニッシュ、WAのダメージ仕様等、プラスティックでも金属顔負けの外観のものもある。現在のトイガンメーカーの成型技術は非常に高い。プラスチックでもかつてとは比べ物にならないくらい仕上げが良い。コンパウンドで表面を磨くだけでかなりリアルな外観になる。カスタムメーカーに頼めばメッキ加工をしてくれるところもある。それで十分じゃないか。
エアーガンのパワー規制
カスタムに関してもう一つ、エアーガンのパワーについても少し書いてみたい。エアーガンのパワーは実は2000年代に入るまで規制はなかった。ASGK(日本遊戯銃協同組合)というエアーガンの組合がかつて0.4ジュールと自主規制していたが、これは自主規制に過ぎなかった。
1980年代のエアーガンは基本的にこの自主規制内に収まっていたものがほとんどだったと思う。しかし90年代に入ると徐々に威力を高めたエアーガンが発売されるようになった。さらにはカスタムパーツによって改造したエアーガンが犯罪に使用されるようになり、2006年に改正銃刀法が施行された。
この法律では、パワーの上限が6mmBB弾では約0.98ジュールとされ、それを上回るエアーガンは準空気銃として規制の対象になる。つまりは違法である。現在市販されている国産のエアーガン、ガスガンは当然、この基準を上回ったパワーの銃は存在しない。国産のメーカー純正品を購入していれば問題は無い。
しかし、海外ではこのようなパワー規制はないため、海外製品が日本に輸入される場合には日本仕様として威力を落としたものとなっているものがほとんどであるが、一部、パワーが法定値を超えてしまっているものもあるという話を聞いたことがある。これは注意が必要である。
同様に注意が必要なのは、個人でのカスタムだ。上記の金属パーツの使用さえ気を付けていればカスタムをするのは全く問題ない。しかし、内部のエンジンをいじってパワーを上げた場合、この改正銃刀法に抵触する可能性がある。エアーガンのパワーは安定しているが、ガスガンは季節によって威力が異なる。冬場では法定内であったパワーも夏場では違法となる可能性もあるのでこれも注意が必要である。
まとめ
私は個人的にはフレーム、スライドはメーカー純正品のままでカスタムをするのが好きだ。上記のように今のエアーガンはメーカー純正品の箱出し状態が最も高性能でバランスのとれた状態だ。個人ですごい技術を持っている人はいるが、何十年もトイガンを作り続けてきた企業が生み出したファクトリーメイドを甘く見てはいけない。これは全く好みの問題ではあるが、私は日本メーカーの純正品愛好者だ。金が無くてカスタムパーツが買えないという説もあるが。。。
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コメント
コメント一覧 (10)
規制内ですごいものを作り上げる…
日本人ならではですな。
まあ規制があったおかげでその枠内でより実銃に近づけるためにエンジニアが工夫を凝らした結果、現在のような精密なモデルガンが完成したという考え方もありかな。
規制がなかったら実銃になってしまう(笑)
さすがにカシオペアの件には納得いかないが。
開放型のコイルガンすら規制されましたな。
人間に両腕(arms)があるから犯罪を起こす!
なら、全ての人間から両腕を切断しましょう!
こうなるのも時間の問題ではないかと。
こーゆー阿呆が地雷を踏むのよねいつの時代も
「第二十二条の三 何人も、販売の目的で、模擬銃器を所持してはならない。」
つまり、模造銃器を個人の趣味で所持するのは適法ではありませんか。
本文は修正させて頂きました。
貴重なご指摘ありがとうございます。
今後も当ブログをよろしくお願いいたします。
いつも興味深く拝見しています
第一期規制(46年規制)の際に、銃身は閉塞された記憶があります。
ご確認をお願いします。