01_m5906
(画像はwikipediaより転載)

 

要約

 M5906は1988年にS&W社が開発した9mm自動拳銃である。M39を複列弾倉化したM59の改良型。オールステンレス製で装弾数は15発。M59で評判の悪かったグリップの握りにくさが改良されている。海上保安庁の特殊部隊でも採用された。

 

S&W M5906

 

 

性能

全長 191mm
重量 1,070g
口径 9mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 15発
完成 1988年
設計・開発 S&W社

 

S&Wオートの歴史

 現在、S&W製自動拳銃といえば2005年に発売されたポリマーフレームを採用した自動拳銃M&Pであるが、それ以前にもS&W社にはM39に始まる長い自動拳銃の歴史がある。1954年にS&W初の自動拳銃M39が発売される。そして1970年代にM39を複列弾倉化したM59が発売、さらに1970年代から80年代にかけてM459、M659、M645等が立て続けに発売された。そして1980年代後半には第三世代と呼ばれるモデル名4桁の自動拳銃が登場する。M5906はこの第三世代に該当する自動拳銃である。

 S&W社のオートの歴史を振り返ってみると、1954年に発売されたM39に原点の一つを求めてもいい。少なくとも9mm弾を使用するオートの原点は間違いなくM39である。このM39はS&W初、そして米国初のDAオートで内部構造はドイツのワルサーP-38の影響を受けており、これは外観からもスライド上にあるサムセイフティ等にその影響をみることが出来る。M39、ワルサーP-38のメカニズムを参考にしただけあって完成度は高かった。そのM39を複列弾倉仕様にしたのがM5906のご先祖様M59である。1971年のことだ。

 

弾丸の種類

 ここで弾丸について少し書いておこう。弾丸とはカートリッジの先端に付いている「実際に目標に向かって飛んでいく部分」だ。カートリッジというのは弾丸と薬莢で成り立っている。引き金を引くと弾丸は銃口から飛び出し、薬莢は別の排莢口から排出される。その弾丸は基本的に昔から現在に至るまで鉛で出来ている。これは加工がしやすい上に質量が高いからだ。

 昔は鉛の弾をそのまま撃ち出していたが、次第に銅で鉛の弾を覆うことで貫通力、直進性が増すことが分かってきた。そこで弾丸というのは銅で被鋼されるようになってきた。これがFMJ(Full Metal Jacket)弾だ。しかし銃で欲しいのは貫通力ばかりではない。破壊力も必要なのだ。破壊力を増すには運動エネルギーを目標に全て吸収させる必要がある。つまりは目標を「撃ち抜いて」はいけないのだ。となるとFMJ弾だと都合が悪い。では被鋼されていない鉛の弾丸を使用するのかといえばそれも弾道の関係でマズい。で、間を取って半分被鋼の弾丸、JSP弾(Jacketed Soft Point)ソフトポイント弾が誕生した。

 このJSP弾というのは単に前半分が露出、後ろ半分が被鋼されているだけであるが、先端部の鉛に窪みを付けると目標に命中すると鉛が大きく変形して効果がより高くなる。この形状の弾丸をJHP(Jacketed hollow point)弾という。特に遠距離を狙う必要のない対人用と考えた場合、ハンドガンの弾丸には有効で、同時に市街地などで弾丸が目標を貫通して目標以外の人や物に当たってしまうことも防げる。このためハンドガンのカートリッジはJHP弾を撃てる必要が出てきた。だが、弾頭の形状が変わるとオートの場合、装填の過程が複雑なため装填不良が起こってしまうのだ。

 

 

世代を重ねて完成度アップ

 もちろんM39もJHP弾には未対応で装填不良が頻発する。そこでJHP弾に対応できるように改良、同時にスライドの先端に付いていたバレルブッシングの廃止、トリガー機構の改良をしたのが第二世代である。名称もそれまでのM○○の二桁からM○○○と三桁に変更された。M59もスチールモデルはM459という名称で第二世代のバリエーションに加わった。ステンレス製モデルはM659である。

 しかしこの第二世代、かなり良くはなっていたがさらに改良の余地アリとして1988年に第三世代が誕生する。この改良は詳しくは分からないが、どうも外観と操作性に関するものだったようだ。この第三世代の誕生によって、それまでのM459、659も第三世代のM5904、M5906として生まれ変わった。因みに番号の意味であるが、S&W製の銃は番号に意味がある。4ケタの場合は最初の2桁が口径、最後の1桁が材質を表す。S&Wでは「4」はアルミ製、「5」がスチール製、「6」がステンレス製を意味するのでアルミフレームとスチールスライドを装備しているM59はM459、さらにM5904へと変更された。同時にステンレスモデルもM659、M5906となる。

 それはそうとM5906、性能はかなり良い。第二世代のM659はグリップの握りにくさにかけては随一で角材を握っているようであったが、それが第三世代では非常に持ちやすくなった。手の小さい日本人にもフィットする。故に海上保安庁の特殊部隊でも採用されたのであろう。スライド、フレーム共にステンレス製で全長は191mm、銃身長はコルトM1911等に比べると若干短い4インチ、カートリッジは9mmパラベラム弾で装弾数は15発。サイトはフロントサイトに1つ、リアサイトに2つのホワイトドットが入った3ドットサイトである。1989年に製造開始、1999年まで生産された。

 バリエーションとしては、先に挙げたアルミフレームにスチール製スライドを装備したM5904、1991年にはフレームもスチール製のM5905が限定生産された。他にもアルミフレームとステンレス製スライドのM5903、ダブルアクションオンリー(DAO)のM5946、さらにDAOの上にシングルカラムマガジンで装弾数を8発にしたM3953、1990年には限定500挺のみステンレス製フレームにスチール製スライドを搭載したM5967も発売された。もう番号が多すぎて何が何だか分からなくなってくる。。。

 

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