01_m53
(画像はwikipediaより転載)

 

要約

 M53はS&W社が1961年に発売したKフレームリボルバーである。最大の特徴は22口径ジェットマグナム弾を発射することでこの弾丸は初速700m/sと357マグナム弾や44マグナム弾の倍の速度を発揮する。但し貫通力は強いが破壊力は低い。15,000挺が製造されたがマイナーな銃のためコレクターには非常に人気がある。

 

S&W M53

 

 

性能(6インチ)

全長 292mm
重量 1,134g
口径 22口径
使用弾薬 レミントン22ジェットマグナム、22口径リムファイア弾各種
装弾数 6発
総生産数 14,956丁
設計・開発 S&W社

 

レミントン22口径ジェットマグナム

02_22ジェットマグナム
(中央が22ジェットマグナム wikipediaより転載)

 

  22口径ジェットマグナム。何かすごいのだかすごくないのだかわからない。銃に詳しい人間から見るとマグナムと名が付く銃は何か凄いように感じるのだが、22口径というと「なーんだ」という風になってしまう。22口径とは直径6mm程度、正確には5.56mmとBB弾よりも小さい口径なのだ。そこで22口径ジェットマグナム、すごいのかすごくないのかといえば「すごい」のだ。このカートリッジはS&W社製M53リボルバー専用に開発されたカートリッジで、製造元は弾薬製造では世界有数のレミントン社である。

 22口径というと一般的なのは22LR(ロングライフル)弾で威力は無いが、直進性の良さ、カートリッジの価格の安さで競技や訓練用として世界で最も売れているカートリッジである。22口径というとどうしてもこのイメージがあるのだが、この22口径ジェットマグナムは全く違う。弾丸の口径こそ22口径だが、カートリッジは38口径の大きさがあり、そのカートリッジが先細りの形状で先端に22口径の弾丸が装着されている。つまりは三角形の塔のような形状である。先端に行くにしたがって細くなっていくのだ。

 なんのためにこの形状になっているのかというと火薬を大量にカートリッジに装填するためである。22口径のストレート形状のカートリッジでは火薬の装填量というのは限界がある。もちろんカートリッジを長〜くすれば火薬は無限に装填できるのだが、それは現実的ではない。ではどうするかというとこの22口径ジェットマグナムの形状になるのだ。そこで疑問が出る。それであれば38口径のカートリッジで38口径の弾丸を装着する、つまりは38口径の通常弾で良いではないかと。

 それは質量の問題だ。38口径の弾丸と22口径の弾丸では重さが違う。38口径の弾丸は9mm、22口径ジェットマグナムの弾丸の直径は5.56mm、質量は標準的な38スペシャル弾の弾頭重量が10g程度であるのに対してジェットマグナムの質量は2.6gでしかない。質量が1/3以下なのだ。そうすると同じ火薬量で発射した場合、弾丸の速度が全く変わってくる。弾丸の速度のことを銃の世界では「初速」と呼ぶが、もちろん質量が小さい方が初速は大きい。

 

貫通力と破壊力

 22口径ジェットマグナムとはその名の通り、ものすごい高速弾なのだ。具体的な数値で示すと通常の38口径、158gr(グレイン)の弾丸の初速は290m/s、357マグナムにしても453m/sだ。これに対してジェットマグナムの初速は700m/sと38スペシャル弾の倍以上、357マグナム弾と比べても圧倒的に高速なのだ。因みに44マグナム240gr弾の初速は460m/s、45ACP230gr弾の初速はジェットマグナムの1/3以下の260m/sである。

 かなり面倒くさい数値を並べてしまったが、とにかく初速が早いカートリッジであるというのは分かってもらえたと思う。ところで上記の初速を見ていると44マグナムの初速は460m/s、ジェットマグナムの初速が700m/s、そうすると44マグナムよりもジェットマグナムの方が威力が強いのではないかと思うかもしれないが、それは違う。初速が速ければ破壊力が強いとは限らないのだ。初速とは単純に弾丸の速度である。これに対して破壊力とは弾丸の質量も関係する。大きな質量を高速でぶつければ破壊力は増すが、22口径のようは質量の小さい軽量弾では速度はあっても破壊力はないのだ。

 では、ただ速いだけの弾丸に何の意味があるのかというと、ここで登場するのは「貫通力」である。破壊力とはそれこそ物を破壊する力、弾丸をぶつけて壊す力だ。これに対して貫通力とは突き抜ける力で何かに命中しても弾丸がそのままの状態でひたすら直進し続けるのだ。22口径ジェットマグナムとはそういう性格のカートリッジなのである。用途は主に小動物の狩猟用で対人用ではない。

 

S&W M53

 この22口径ジェットマグナム弾を使用するために開発されたのがM53である。新型カートリッジを使用するリボルバーといっても従来のM19等に使用されていたKフレームを利用しているので外観上はM19とほとんど違いはない。銃に詳しい人でもぱっと見ではM53と判別できないだろう。しかし内部構造は独特である。シリンダーは38口径用のカートリッジを装填するためスイングアウトした状態で見る分にはM19と同様であるが、ジェットマグナムの形状に合わせて先端に行くにしたがって細くなっていく。但し、これだと22口径の通常のカートリッジが使用できないので、22口径の各種弾薬も使用できるように専用のインサートが付属する。要するに38口径のシリンダーに22口径のカートリッジを装填するのでその隙間を埋めるための筒である。

 しかしジェットマグナムはセンターファイア、22口径の通常弾はリムファイアでカートリッジの構造が異なる。このため当時のS&Wリボルバーはハンマーが直接カートリッジを打撃するタイプであるが、M53はフレームに撃針が内蔵されており、ハンマーはその撃針を叩くという間接的な打撃になっている。さらにフレームにはセンターファイア用とリムファイア用の2種類の撃針が装着されており、ハンマー上部のスイッチで切り替える。M19とM53を見分けるポイントはこのハンマー上部のスイッチが分かりやすい。よーーく見るとシリンダーが少し長い(らしい)のだが、それは私には判別不可能だ。

 

 

コレクターアイテムとして価値アリ

 このM53、1961年3月20日に発売された。バリエーションは4インチ、6インチ、8 3/8インチモデルの3種類でバレルの右側面には「22MAGNUM」の刻印がある。グリップはウォールナット製のもので銃本体の表面処理も手作業で丁寧に仕上げられている。とても美しい銃だ。ところが、実際に射撃してみるとあまりの圧力のためかその形状によるものか、カートリッジがシリンダーから後部に後退、これによりシリンダーが回転しなくなってしまう。これは完全に油分を除去しておけば問題ないのだが、少しでも油分が残っているとこの障害が発生してしまう。このため判明して以降の生産分からはその旨を書いた注意書きが同梱されている。

 そして強烈は音と爆風もこのM53の特徴であった。射撃する際にはイヤーマフや耳栓は必須だそうだ。あまりにも特殊なリボルバーであるため1971年には生産が終了するが、どうも1979年までは何らかの形で製造されていたようだ。それはともかくカートリッジのジェットマグナム弾も1989〜1990年の間製造が中止、現在は製造されているのかは不明であるが、入手は困難そうである。このためリロードして使用するのが一般的なようだが、この弾丸自体も入手困難であるという。

 実用性に関しては「???」であるが、コレクターアイテムとしては人気が高く、最近では2,000ドルの値段を付けている。米国政府も骨董品としての認定しており、実用的なハンドガンというよりもコレクターアイテムとしての価値が高いため、カートリッジの入手の難しさと相まってあまり撃つ人はいないようだ。

 

トイガン

 実銃でも激マイナーなM53、トイガンで出ているハズもない。そもそも外観上はM19とほとんど変わらないので顧客に訴求する力も無さそうだ。

 

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