(画像はwikipediaより転載)
要約
M52マスターは1961年にS&W社が開発した自動拳銃である。M39を38口径スペシャル弾仕様に改造したM52Aをベースに誕生した。使用弾薬は38スペシャルで装弾数は5発、精密射撃用であるため精度は驚くほど高い。多くの作業が手作業で行われグリップアングル、トリガープルから表面処理まで丁寧に仕上げられている。
S&W M52マスター
性能
全長 220mm
重量 1,100g
口径 38口径
使用弾薬 38スペシャルワッドカッター
装弾数 5発
完成 1961年
設計・開発 S&W
1955年、S&W社は自社初の9mmDA(ダブルアクション)オートのM39を市場に投入した。このモデルはワルサーP-38の設計を参考に製作されたモデルで完成度の高いものであった。このモデルに目を付けた米軍は独自規格の38口径AMU弾が使用できるM39の開発を依頼した。この38口径AMU弾とは標的射撃を目的に作られたカートリッジで38口径でありながらリムが無く、ミッドレンジ用ワッドカッターであった。
ミッドレンジとは25ヤード(22.86m)を指し、その距離での射撃に最適化するように設計されたワッドカッター弾であった。ワッドカッターとは弾頭が平面になっている標的射撃専用弾のことで、この弾薬を使用すると標的にキレイな穴が開くのだ。このモデルはM52Aと命名され90挺が米軍に納入された。米軍との契約はこれで終わってしまうのだが、S&W社はこのM52Aに目を付けた。
というのは、当時、標的射撃は38口径スペシャル弾を使用するリボルバーで行うのが一般的であった。この精密射撃の世界に自動拳銃を送り込もうというのだ。そこでM52Aをベースに社内で研究が始まる。9mm弾を使用するハンドガンをリボルバーが使用するリムド弾の38口径スペシャル仕様にすること、そして精密射撃に適した高い命中精度を担保すること等々、研究は実に数年を要した。
類稀な高精度オート
1961年、精密射撃用のM52が誕生する。M39のフレームがアルミ合金製であったのに対して、M52はスチール製のフレームを採用、これで重量は1,100gとM39の780gに比べて重くなったが、安定性は増した。銃身も4インチから5インチに延長、装弾数はリムド弾の38口径スペシャル弾を使用するために5発のみとなり、DA機能を消すためのスクリューが設置され、SA(シングルアクション)のみでの射撃を可能にした。
命中精度を高めるためにバレルには特に気を使った。バレルはハードクロームメッキが施され、バレルブッシングも特にタイトに設計された独自のブッシングを使用、バレル基部にもバレルがブレないようにロックを設置した。これらの作業の多くは手作業で行われたが、当時のS&Wは未だ腕の良い職人が多かったために非常に精度の高いハンドガンを送り出すことが可能であった。出荷基準は異常に厳しく、50ヤード(45.72m)で2インチ(5.08cm)に集弾することで、この基準をクリアーした銃のみが出荷された。
この基準は厳格に守られたようで、M52を所有数数少ないユーザーからも否定するような意見は聞こえない。命中精度以外にも様々な部分に注意が払われ、グリップは射手が構えた際に自然に銃口が向く角度、握り易さも理想的である。トリガーのキレも良く、わずか0.9kgでトリガーを引くことができる。本体の表面仕上げも丁寧に行われたため磨き抜かれた美しいブルーになっている。
生産終了
1963年にはSAO(シングルアクションオンリー)に改良されてさらに精密射撃用として完成度を高めた。このモデルはM52-1(M52ダッシュワン)と呼ばれる。因みにS&Wの型式の分類としてモデル名の後に付く、「-」ダッシュというのは改良されたことを示す数字で改良が重ねられるごとに数が増えていく。1971年になるとM52-2が発売される。
このモデルはエキストラクターが改良され、左右上下調整可能なアジャスタブルサイト、パートリッジタイプのフロントサイトを装備、ハンマーにもセレーションが刻まれていた。このモデルは長らく生産され続けたが、1993年、このM52を製造する機械の老朽化によって製造が不可能となり生産が打ち切られた。最後の1挺は記念にS&Wの倉庫で保管されているという。
1986年にS&W初の45ACPモデルであるM645の競技用モデルM745が誕生したが、このM52の経験が活かされたであろうことは想像に難くない。2000年にはM52を9mmパラベラム弾仕様としたM952が発売、装弾数は9発で、チタンコーティングされたバレルブッシングにチャンバーインジケーターを装備している。2004年には改良型が発売、2006年には6インチモデルが発売されている。
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