(画像はwikipediaより転載)
要約
S&WM10ミリタリー&ポリスは、まさにマスターピースである。現在では今ひとつパッとしない拳銃という印象があるM10であるが、1899年に登場して以来、現在に至るまで生産が続けられている安定した人気を獲得している銃である。S&Wのスタンダードであり、以後のS&Wのリボルバーに大きな影響を与えた革命的な銃であった
M10ミリタリー&ポリス(実銃)
性能
全長 237mm
重量 870g
口径 38口径
使用弾薬 38スペシャル弾
装弾数 6発
設計・開発 S&W
開発経緯
S&W M10は、アメリカの銃器メーカースミス&ウェッソン社が開発した回転式拳銃である。総数600万丁が生産された。誕生した19世紀から現在においてもS&Wのカタログにラインナップされている。ハンドエジェクターは1896年の発売当初は32口径であったが、米西戦争の戦訓により32口径では威力不足と判明したため、1899年に米軍はS&Wに38口径ロングコルトを使用するハンドエジェクターを発注した。これに対してS&W社は前年に開発された38スペシャル弾を装備できるハンドエジェクターで米軍の要望に答えた。これにより38LC弾に比べて威力の強い38スペシャル弾とハンドエジェクターの組み合わせが誕生した。これが現在まで続く38口径ミリタリー&ポリスの始まりである。
特徴
ミリタリー&ポリスの特徴はといえばこれは全てであると言って良い。今は何の変哲もないリボルバーに見えるかもしれないが、このスタンダードを初めて作ったのがこのミリタリー&ポリスであるからだ。
まあ、凄いのはハンドエジェクターであると言ってしまえはそれまでであるが、ミリタリー&ポリスはそこに38口径スペシャル弾を使用できるようにしたことにある。38口径スペシャル弾とは今では何の変哲もないカートリッジであるが、当時は高威力であった。
その高威力カートリッジをハンドエジェクターというスイングアウト方式のリボルバーで発射出来るというのは当時としては革新的であったのだ。当時はまだスイングアウト方式は少なくリボルバーといえばローディングゲートから装填する方式やトップブレイク方式等が主流であった時代である。
そこに「簡単に装填出来て尚且つ高威力な銃」が登場するのがどれほど革新的であったのかを理解するには、ミリタリー&ポリスが現在でも生産されているという事実を知れば十分だ。現在でも通用する銃、それがミリタリー&ポリスなのだ。
内部構造はシリンダーを固定するためのセンターピンが設置され、シリンダーはフレームとバレル下部にしっかりと固定される。このセンターピンをサムピースで押すことでシリンダーが解放されるメカニズムは現在でも変わらない。
撃発システムもほとんど変わらない。唯一変わった場所といえば、1899年から1905年までのモデルはトリガーを戻すスプリングがメインスプリングになっているが現在ではトリガーを戻すために設置されたコイルスプリングになっているくらいである。
このためS&WM10の性能は安定しており、タイムプルーフもされている。357マグナムは撃てないが、そもそも狩猟でも行かない限り357マグナムを使用する事態にはならない。普段の法執行者や一般市民は38口径で十分なのだ。このように考えると無駄の無いシンプルな拳銃だということが分る。
バリエーション
S&Wのリボルバーはフレームの大きさに対してアルファベットを振っているが、このミリタリー&ポリスのフレームはKフレームに該当する。銃身長は2インチ、2.5インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、6.5インチがある。
1940年には38レギュラー弾仕様モデル(のちに「M11」というモデルナンバーが割り振られる)、1953年にはアルミ製モデルの「M12」、ターゲットモデルの「M14」マスターピース、「M15」コンバットマスターピース、22口径モデルの「M17」、1970年にはステンレスモデルの「M64」も発売された。
トイガンのミリタリー&ポリス
1970年代生まれの私としてはミリタリー&ポリスというとどうしても80年代に発売されたマルシン製ガスリボルバーの印象が強い。第一印象とは恐ろしいものでどうしてもミリポリと言われると実銃より先にマルシン製ガスガンを思い出してしまう。
そんな余談は良いとして、ここでトイガンの歴史を振り返ってみよう。一番最初に発売されたミリタリー&ポリスはどうも1969年に発売されたコクサイ製モデルガンが初のようだ。金属製でバレルバリエーションは2、4、6インチの3種類があったようだ。1974年にはWAが31挺限定でミリポリを発売している。これは何と真鍮製の超高級モデルで価格は何と110,000円である。
1976年にはミリポリ業界にモデルガンの老舗マルシン工業が参入、コンバットマスターピースを発売した。そして1979年にはコクサイが再びニューミリタリー&ポリスと命名したミリポリ、マスターピースを発売しており、発売時期は不明であるが、これとは別にM10としても発売しているようだ。むろんこれらは全てモデルガンである。
1983年にはコクサイが樹脂製モデルガンのM10を発売している。この時期になるとモデルガンの人気に陰りが見え始め、少しずつエアガンの人気が高まってきた。このコクサイの樹脂製M10も1980年代後半の月刊『GUN』に4,000円程度の額でたたき売りされていたものだ。
そのガスガンでもM10は発売されている。1988年にマルシンのブランドであるレプリカからM10カート式ガスガン、1989年にはコクサイからもM10カート式ガスガンが発売された。一年のずれはあるもののトイガン業界では珍しく同モデルが競合した。現在ではどのモデルも製造終了してしまっているが(マルシンはガスガンであれば再販する可能性はある)、タナカワークスが完成度の(非常に)高いミリポリを生産しており当分、入手することはできそうだ。
おじさん個人の感想です。
こうやってM10ミリポリのトイガンを総ざらいしてみると意外にモデルアップされていないなぁという印象を受ける。リボルバーのレジェンドというだけでなくハンドガンのエポックメーキング的な傑作中の傑作であるが、マグナムでもないリボルバーというのはトイガンとしてはあまり魅力的ではないのかもしれない。そういう私もM29やパイソンばかり買っていてミリポリは一挺も所持していなかった。
しかし現在になって。。。つまりはおじさんになって銃器を見てみるとミリポリの味わいというのが良く分かる。当時は野暮ったかったテーパードバレルはアンティークの渋みがあるし、固定リアサイトやサービスグリップにも味がある。こういうのが分かるようになった点だけはおじさんになって良かったと思う。
コクサイ、マルシンが競作
どうもミリポリはコクサイとマルシン、特にコクサイがご執心だったようで一番モデルアップしているようだ。このコクサイというメーカーは若い人は知らないかもしれないが「リボルバーのコクサイ」と呼ばれるほどリボルバーの完成度が高く、我々信者から厚く信仰されているメーカーであった。
初期のモデルは考証が甘かったりしたが1980年代後半あたりから強烈なリアリティを発揮している。内部構造をリアルに再現しすぎて作動しないモデルがあったりしたほどだ。だからといってマルシン製がポンコツだった訳ではない。マルシン製トイガンも再現性は高い。
私のミリポリ原風景である1988年発売のカート式ガスガンも外観の完成度は高かった。しかし残念だったのは当時の他のマルシン製リボルバーもそうだったのだがシリンダーストップが無かったことだ。このため射撃をするとシリンダーがストップしてくれないので、何発かに一発、フライヤーが発生していた。もちろん現行品はシリンダーストップはついている。
コクサイは今はもうない。信者としては教祖様の復活を祈るばかりであるがどうも職人さんも引退してしまったようなのでそれもないだろう。そうはいってもまだマルシン工業もあるしタナカワークスもある。高品質のトイガンを作ってくれるメーカーはまだあるのだ。これからも頑張ってほしいなぁ。。。(おじさんの思い)
タナカワークス S&WM10ミリタリー&ポリス ver.3
タナカワークス S&W M10 MILITARY&POLICE Ver....性能
全長 238mm
重量 600g
装弾数 13発
タナカワークスのペガサスシステム搭載のM10。シリンダーは回転するがカートレスのため排莢はできない。モデルガンメーカーだけあって外観の完成度の高さは秀逸。実射性能は、装弾数13発、初速は70m/s前後と平均的。オートに比べると構造上劣ってしまうが命中精度は比較的高い。
まとめ
地味なM10であったが、発売当初は画期的な銃だった。あまりに画期的であり、パラダイムシフトを起こしてしまったという言い方もできる。ミリポリが無い状態というのが理解できなくなってしまったのかもしれない。シルエットは非常にバランスがとれて美しい銃である。
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