(画像はwikipediaより転載)
要約
2008年にスタームルガー社が発売したLCPに対抗してS&W社が2011年に発売したのがボディーガードM&Pである。380ACP弾を使用する護身用のハンドガンで装弾数は6発、小型であるがショートリコイル機構を備えている。スライドはステンレス、フレームはポリマーで構成されているため全長133mm、重量335gと非常に軽量である。内蔵ハンマー方式でトリガーは安全上の理由もあり非常に重い。
S&W ボディーガード380
性能
全長 133mm
重量 335g
口径 9mm
使用弾薬 380ACP弾
装弾数 6発
完成 2011年
設計・開発 S&W社
護身用ハンドガン
(画像はルガーLCP wikipediaより転載)
現在の米国では護身用ハンドガンの携行許可が取得しやすくなったようだ。これに合わせて銃器メーカー各社は護身用ハンドガンの開発、販売を行っている。この中でスターム・ルガー社が発売したルガーLCPは重量272gと超軽量でありながら、弾薬は380ACP弾を使用、装弾数6発と護身用としては十分な性能を持ったものであった。
これに対してS&W社も同種のピストルの開発を開始、2011年にボディーガードとして販売した。ボディーガードというのは言わずと知れたS&W社が1955年に発売したM38エアウェイトのオールスチール版、1959年に発売されたM49ボディーガードがその名称のルーツだ。日本ではハマの刑事が使用していたことでも有名である。
ミリタリー&ポリスの名称を受け継ぐ
(画像はM10ミリタリー&ポリス wikipediaより転載)
この銃のコンセプトはまさかのスターム・ルガー社とほぼ同じなのであろう。ステンレス製のスライドとバレル、ポリマー製のフレームを装備した380ACPを使用する6連発のピストルである。2014年にはM&Pファミリーに移行されている。この際にグリップのデザインが少し変更されたようだが、大きな改良はされていない。
M&Pとは「ミリタリー&ポリス」の略で、その名称のルーツは1899年に登場した38口径リボルバーだ。このモデルは大ヒット、1957年にS&W社製品にナンバー制が導入されて以降はM10と呼ばれている。総生産数600万丁以上の名銃中の名銃である。さらにこの名称を受け継いだのが2005年に発売されたポリマーフレーム製オートであるM&P、そのものズバリミリタリー&ポリスである。
このモデルは大ヒット、現在でもS&W社オートの主要モデルである。発売前にS&W社のレジェンドである「ミリタリー&ポリス」の名称を与えたことからもS&W社の自信のほどが分かるというものだ。ボディーガード380も2014年よりこのファミリーにめでたく仲間入りをした。
内部構造
全長は133mm、重量は335g、前述のようにスライド、バレルはステンレス製、フレームはポリマー製である。発射機構はショートリコイル、ティルト・バレル・ロックである。小型ピストルには複雑かつゼイタクな仕様であるが、これにより重量の軽減に役立っている。
一見、ストライカー方式に見えるが、内蔵ハンマー式でスライド内部にハンマーが内蔵されている。コルト32オートと同じ方式だ。トリガーはDAO(ダブルアクションオンリー)で撃針の安全装置はトリガーを引き切らないと解除されない。そしてこのトリガープルは4.3kgと結構重くそして長い。「栄養を十分に摂った上で引き金を引き始めないと、途中で昼食と摂らなければならない」という米国人らしいジョークがあるくらいである。但し、このジョークを目の前で言われた時には多少リアクションには困るだろう。
しかしこれは護身用ピストルとして装弾して常時携行している状態での暴発を防ぐための意図的な設計で決して設計ミスではない。このクッソ重いトリガー以外にもマニュアルセイフティがM1911と同様に左側面グリップ上部に位置している。しかし突起がないため親指で跳ね上げるという訳にはいかなそうだ。このマニュアルセイフティがないモデルもあったが、現行ラインナップでは全種類マニュアルセイフティが装備されている。あまり安全を軽視すると裁判沙汰になってしまうからだろうか。
逆にかつて一般的であったマガジンセイフティはない。これは最近の流行らしく、もしもマガジンが無い状態で弾を発射する必要がある際に不便だからということらしい。確かにその通りだと思う。戦闘のさ中にバラ弾をエジェクションポートから装填するという可能性だけでなく、マガジンを紛失した場合という問題もある。廃止の流れは妥当だろう。
バリエーション
全長133mmであるため照準半径が短い。照準半径とはフロントサイトとリアサイトの間の長さのことで、この長さが長いと狙いやすくなるが、逆に短いと照準を合わせるのが大変になる。このためボディーガード380ではクリムゾントレース社製レーザーサイトを搭載したモデルも発売されている。但し、どうもレーザーサイトモデルはあまり人気がないようでレーザーサイト無しモデルもラインナップされている。
レーザーは赤または緑で2023年現在の価格は475ドル、レーザーサイト無しモデルは396ドルと100ドル近い違いがある。レーザーサイトが敬遠されるのは携行性と共に価格の問題もあるかもしれない。我らガンファンにとっては高性能な実銃が入手できるとあってはテンションMAX、レーザーサイトも搭載した全部乗せを頼みがちであるが、普通に護身用のハンドガンを必要としている人はそこまで銃に金を掛けたくないのだろう。食費を切り詰めてでも銃を購入する我らとは違うのだ。
現行ラインナップは3種類で上記2種類以外にステンレスの地肌が露出したスライドとポリマー製フレームのデュアルトーンモデルにスライド側面にだけエングレーブが入った良く分からないモデルが430ドルで販売されている。ポリマーフレームの銃にエングレーブというのはどうなの?という疑問もないではないが、売れるからラインナップされているのだろう。
ルガーLCPとのスペック比較
ここでライバルであるルガーLCPと比べてみよう。ルガーLCPのスペックは全長131mm、幅20.1mm、重量272g、カートリッジは380ACP弾で装弾数は6発。スライド、バレルはスチール製、2023年現在の価格は369ドルである。これに対してボディーガード380は全長133mm、幅19mm、重量335gでカートリッジや装弾数は同じく380ACP弾で6発。スライド、バレルはステンレス製、現在の価格はレーザーサイト無しモデルが396ドルとなっている。
機構はどちらもショートリコイル方式でスペック的にはほぼ同じ。そうなるとやはり最大の違いは価格であろう。30ドルの違いをどう捉えるのかという問題だ。ご存知のようにS&Wは1852年創業の名門銃器メーカー、これに対してスターム・ルガー社は1949年に創業した新興メーカー。新興メーカーといってももう創業70年以上なのだが・・・。スターム・ルガー社は当初から高品質・低価格を売りにしてきたメーカーで当初はB級品的な扱いであったが、現在では押しも押されぬ一流メーカーである。特に銃器の堅牢さにかけてはS&Wやコルト社以上の高評価を受けている。
これに対してS&Wにはブランドがある。「天下のS&W」「世界のS&W」である。どちらを選ぶのが正解なのかは結局、個人の好みなのだろう。グロック17がハンドガンの世界に革命を起こして以降、ポリマーフレームが市場に溢れ、どの銃も同じような感じになってしまった。そう考えるとグロック17というのはとんでもないバケモノだった。結論としては、グロック17は素晴らしいということである。
トイガン
トイガンとしては東京マルイとクラウンが発売している。性能を重視すれば東京マルイだが、値段と楽しさを考えるとクラウン製も捨てがたい。因みにルガーLCPも東京マルイからモデルアップされている。サバゲ等では使えないと思うが、室内プリンキングにはこれ以上楽しい銃はない。
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