01_S&WM36
(以下画像はwikipediaより転載)

 

要約

 1927年に発売されたコルトディテクティブスペシャルは世界初のスナブノーズリボルバーで画期的なものであった。1950年にはS&W社がチーフスペシャルを発表してさらにスナブノーズは小型化した。リボルバーのメリットは小型拳銃から高威力カートリッジを発射できることで大型拳銃や小型拳銃でメリットがある。現在では材料工学の進歩からさらに軽量化されている。チーフカッコいい。

 

ディテクティブスペシャルとチーフスペシャル

 

 

性能(ディテクティブスペシャル)

全長 178mm
重量 660g
口径 38口径
使用弾薬 38スペシャル弾
装弾数 6発
完成 1927年
設計・開発 ジョン・H・フィッツジェラルド / コルト社

 

 

性能(M36チーフスペシャル)

全長 160mm
重量 554g
口径 38口径
使用弾薬 38スペシャル弾
装弾数 5発
完成 1950年
設計・開発 S&W社

 

ディテクティブスペシャル

02_フィッツスペシャル
画像はフィッツスペシャル

 

 1920年代中盤にコルト社の従業員であったジョン・フィッツジェラルドはスナブノーズというリボルバーのコンセプトを考え付いた。それは当時誰も思いつかないくらい斬新なものであった。それはリボルバーの銃身を極端に切り詰め、DA(ダブルアクション)リボルバーでありながらハンマースパー(ハンマーをコッキングするために親指をかける場所)が省略、さらにはトリガーガードまで一部切断されている銃であった。

 このコンセプトに影響を受けたコルト社はスナブノーズリボルバーを開発した。これがコルトディテクティブスペシャルである。さすがにスパーハンマーやトリガーガードの切断は行われなかったが銃身長は2インチ重量660gと小型軽量であった。当時(現在でも)、小型銃は山のように存在するが小型で尚且つ人間に致命傷を与えることが出来る38口径スペシャル弾を発射出来る銃はほとんどなく爆発的大ヒットを記録した。

 

M36チーフスペシャル

03_M49
画像はM49ボディーガード

 

 このディテクティブスペシャルに遅れること20年。1950年にS&W社はチーフスペシャルというスナブノーズリボルバーを発表する。1957年にS&Wの銃にナンバー制が導入されたのちにはM36と呼ばれる銃である。このチーフスペシャルはディテクティブスペシャルが単に短銃身化しただけであったのに対して新規にフレームが設計された。

 新規に企画されたのはJフレームというフレームサイズでそれまでの38S&W弾専用であったIフレームを38口径スペシャル弾に耐えられるように拡大強化したものであった。因みにこのフレームの一つ上のサイズはKフレームで、Lフレーム、Nフレーム、M500のXフレームと大型化していく。

 チーフスペシャルは38口径に耐えられる最小のJフレームに装弾数も通常のリボルバーが6発であるのに対して5発と減らした。この結果、重量は554gとディテクティブスペシャルよりも100g軽量化することに成功した。別にディテクティブスペシャルと競っていた訳ではないだろうが意識はしていただろう。

 

 ディテクティブスペシャルは断続的ではあるが生産が続いていたものの現在はスナブノーズリボルバーはコブラのみとなりディテクティブはカタログ落ちしてしまった。これに対してS&Wのチーフスペシャルは近代化に対応しつつ現在でも主力商品として販売されている。聞くところによるとS&Wの売上の多くはこのチーフスペシャル系統の銃であるという。

 この自動拳銃全盛の時代になぜ小型リボルバーと思われるかもしれない。昔は自動拳銃に対してリボルバーは信頼性が高いというメリットがあったが現在の自動拳銃はリボルバーと同様に信頼性は高い。数万発作動不良を起こさずに発射できる自動拳銃も多い。リボルバーが信頼性で優るというのは過去の話だ。

 そうするとリボルバーには利点が全くないように感じてしまう。装弾数の多さやボックスマガジン式の自動拳銃は再装填のスピードもリボルバーとは圧倒的に違う。信頼性も問題無く装弾数、再装填の速度ともに自動拳銃の方が優れているのであればリボルバーは全く不要ではないかと考えがちであるが実はリボルバーにもメリットがある。

 

 上の画像の人のリロードは例外(汗)

 

リボルバーのメリット

 自動拳銃というのは基本的に反動やガス圧でスライドを自動的に後退させて再装填させるようになっている。このためどうしても構造が複雑になり大型化してしまう。これに対してリボルバーの構造は1836年にコルトパターソンが開発されて以来ほぼ変わっていない。DA機構が追加されたのと作動を正確にするための機構が追加されたくらいだ。

 このためリボルバーは高威力のまま小型化が可能なのだ。さらに近年は材料工学の進歩によって銃の強度を保ちつつ軽量化が可能になった。S&Wが2010年に発売したM&Pボディーガードは重量405g、スターム・ルガー社LCRは383gと400gを切るまでになった。それでも使用弾薬は38口径スペシャル弾やさらに強力な+P弾も使用できる。

 これに対して9mm弾を使用した自動拳銃で最小モデルの一つであるカー・アームズのK9というモデルがある。これは韓国出身の社長が設計、発売した小型自動拳銃だ。1995年に発売されたK9は装弾数は7発で9mm弾を使用する。全長こそ152mmとM&Pよりも小型であるが重量は710gと倍近い。これでも自動拳銃では最軽量だ。グロック19も同程度でやはりここら辺が自動拳銃の限界であろう。リボルバーもまだまだメリットがあるのだ。

 

 

大型銃と小型銃はリボルバーに勝算あり

 むろん軍隊が使用する銃や警察官が常時携行するような銃は多少大型でも上記の自動拳銃のメリットがあった方が良い。リボルバーのメリットとはあくまでも自動拳銃に比べて小型化が可能ということなのでメリットが享受できるサイズというのは大型銃か小型銃のどちらかである。

 大型銃とは主に狩猟時のサイドアームとして携行するハンドガンで常時携行するには軽量であることが望ましいが猛獣に襲われた時には致命傷を与えなければならないので高威力が必要だ。このために未だにS&W社製M29やスターム・ルガースーパーレッドホーク、フリーダムアームズM83等が人気を博している。デザートイーグル等は重すぎて実用には向かないのだ。

 小型拳銃は主に護身用であるためこれはこれで高威力が欲しいところだ。低威力では護身用にならない。麻薬を使用している人間相手には38口径スペシャル弾程度では効果がないというがそれでも通常の人間であればひとたまりもない。だがそれ以下の威力では致命傷とはならないことがままある。護身用としては失格だ。

 

伝説の名銃

 38口径スペシャル弾仕様の小型リボルバーは現在では護身用拳銃として重要な役割を担っている。その最初は1927年に登場したコルトディテクティブスペシャルであり、1950年に登場したチーフスペシャルである。この銃の登場によりスナブノーズリボルバーというジャンルが誕生して現在に至っている。どちらも記念碑的な銃だ。

 ちなみに私はどちらが好きかと言えばM36チーフスペシャルの方だ。モデルガンでもエアーガンでも持ってみれば分かるがチーフは非常に小さい。「ホントに38口径撃てるの?」と思ってしまうくらいだ。あの手にしっくりくる感じ、体の一部になった感じはたまらない。いつか2挺のセンチネルを買って早撃ちの練習がしたいと思う今日この頃。チーフじゃなくてセンチネルなの。ディテクティブスペシャルもカッコいいんだけどね。

 

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