清水 政彦,渡邉 吉之 著
宝島社 2015/8/7

 

清水 政彦,渡邉 吉之『零戦神話の虚像と真実』

 

撃墜戦果ってホントなの?

 私は結構戦記物が好きなのだ。特に太平洋戦争の海軍航空隊の戦記物は大好きだ。子供の頃からよく読んでいたが、大人になってくるにつれてちょっと気になることが出てきた。それは「これって日本側からみたものであって実際はどうなの?」ということだ。特に岩本徹三の『零戦撃墜王』等を読むと、少数の日本機が多数の米軍機を次から次へと撃墜していく様が描かれている。

 『日本海軍戦闘機隊』という本がある。その本に著者が調査した主要航空戦の日米双方の損害一覧表があるのだが、案の定、どちらも戦果に対して実際の損害は少ない。逆に言えば、実際の損害に対して戦果は過大ということだ。要するに過大戦果だ。これは感覚的には米軍の場合は3〜5倍程度、日本は5〜7倍程度、中には10倍以上の誤認戦果を報告している例もあった。最近になって『海軍零戦隊撃墜戦記』や『源田の剣』、『台南空戦闘日誌』等、実際の戦果を調べた本が出るようになったがやはり双方とも誤認戦果はひどいものだ。でもそれは仕方がない。激しい空中戦のさなかに悠長に撃墜確認をしている暇はない。生きるか死ぬかの世界だから。

 

 

元F15パイロットとの対談

 今日、紹介する『零戦神話の虚像と真実』はタイトルの通り、伝説と化している零戦とは本当に無敵の戦闘機だったのかということを元航空自衛隊のパイロットと対談という形で解き明かしていく。ちょっと専門的過ぎて分からないところもあるけど面白い本だ。実戦では敵味方の区別ができないこと、そもそも空中で敵を発見することが非常に困難であり、航空自衛隊F-15乗りであった著者が現役の頃でも、レーダーで誘導されても敵編隊(演習)に遭遇できないこともあったようだ。

 それが太平洋戦争時代ともなれば言わずもがなである。さらに運よく?遭遇出来たとしても実際の空戦では敵味方の区別ができないことも多かったという。零戦隊の戦果についても初戦期は圧勝していたと言われているが、実際は互角、数が多い時は優勢で少なくなると劣勢になるという当然と言えば当然の結果だったという。

 内容は目から鱗の連続で、元空自のパイロットが上梓しているだけにF-15とF-2はレーダーがF-15の方が優れているからF-2はF-15を発見する前に撃墜されてしまうが、格闘戦になればF-2に分がある等、零戦のことだけでなく、現用機の話もふんだんにある。操縦の細かい部分は素人には分かりにくいが、値段の割には内容は素晴らしい。これは買って損はないと思う。

 




 

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