01_Reising M50
(画像はwikipediaより転載)

 

要約

 レイジング M50は1940年に完成した短機関銃である。ユージン・レイジングが設計、H&R社が生産しており、全長959mm、重量3.1kg、45ACP弾を使用装弾数は20発で発射速度は550発/分、プレス加工を採用しているが木製ストックも装備している。発射機構はクローズドボルト遅延式ブローバックであるため命中精度は高いものの精密過ぎて戦場での使用には問題があった。その他ユーザビリティには問題があったものの米海軍、海兵隊が採用している。戦後に警察に払い下げられたが警察用としては好評であった。

 

レイジング M50 短機関銃

 

 

性能(M50)

全長 959mm
重量 3,100g
口径 45口径
使用弾薬 45ACP弾
装弾数 12発/20発
発射速度 550発/分
完成 1940年
総生産数 120,000挺以上
設計・開発 ユージン・レイジング / H&R社

 

開発経緯

 M1911の設計で有名なジョン・ブローニングの助手も務めたことのある銃器設計者ユージン・レイジングは1938年に短機関銃の設計を開始した。2年の歳月を経て短機関銃が完成、1941年、このレイジングが設計した短機関銃は米国の銃器メーカーH&R社からM50として発売された。

 1941年11月、米陸軍はM50の評価試験を実施した。この試験において3,500発の射撃中2回の作動不良と不具合が発生したため陸軍による採用は見送られたものの陸軍にトンプソン短機関銃が優先配備されていたため短機関銃が不足していた海軍、海兵隊がM50を採用することとなった。

 

開発

 M50は全長895mm、重量3.1kgでトンプソン短機関銃のようなピストルグリップは採用せずに木製の曲銃床を採用している。ストックは機関部からつながる通常の小銃と同様の形状でM1カービンのように薬室下部にマガジンが配置された。木製ストックを採用しているものの機関部はプレス加工を多用しており照準は銃身先端部分にフロントサイト、機関部後端にリアサイトという一般的な形状であった。使用弾薬は45ACP弾で弾倉は20連発のボックスマガジンでこれをシングルカラム化した12発マガジンもある。マガジンキャッチは弾倉後部のレバーでこれを押すことで弾倉を外すことが出来る。

 作動方式は短機関銃としては珍しくクローズボルト方式で遅延式ブローバックを採用している。この時代の多くの短機関銃はオープンボルト方式のシンプルブローバックを採用している。これはボルトを後退させた状態で引き金を引くとボルトが前進、ボルトにある撃針がカートリッジを撃発させることで弾丸が発射してその反動でボルトが後退、引き金が引かれている間はこの前後運動を繰り返し連続射撃を行うというもので最もシンプルな作動方式であった。

 しかしカートリッジの火薬量が多すぎるとボルトの後退速度が速くなり排莢前にボルトが前進してしまう作動不良が起こってしまう。このため大口径化するためにはボルトを重くする必要があった。その結果、45ACP弾という拳銃弾としては比較的高威力であるカートリッジを使用するトンプソン短機関銃は銃本体の重量が5kgにもなってしまった。米軍制式採用小銃であるM1ガーランドが4.3kgであることと比較するとその重さが分かるだろう。

 これに対してM50は遅延式ブローバックを採用しているため重量は3.1kgと非常に軽くなり、さらにオープンボルト方式の銃がボルトの前進時の振動で命中精度が悪くなるのに対してクローズドボルト方式のM50は命中精度も高かった。

 ボルトのコッキングは銃身下部の穴に指を入れて引き、リアサイト右側面にあるセレクターレバーでセミ・フルオートの切り換えを行う。

 

性能

 命中精度はクローズドボルト方式を採用しているため短機関銃としては高かった。発射速度は550発/分となっているが、実際の発射速度は750〜850発/分と非常に高速であったことが報告されている。軽量で命中精度が高い上にプレス加工を多用しているため製造単価は安いというこれだ見ると短機関銃としては理想的な銃であるように思うが欠点もあった。

 欠点としてはコッキングハンドルが本体下部に埋め込まれているため指を入れてコッキングしなければならないこと、そしてそのコッキングハンドルは射撃時にボルトと連動するため誤った保持方法で射撃をすると怪我をすることがあった。さらにセレクターレバーがリアサイト右側面にあるため暗闇での操作が困難であること等も問題であった。

 そしてこのM50の最大の問題はクローズドボルト、遅延式ブローバック方式を採用したことで機構が精密になり戦場等の劣悪な環境での使用に難があることだった。内部に泥や塵が入ってしまうと作動しなくなることがあった。このためトンプソン短機関銃の簡易生産型M1A1やM3グリースガンの調達が進むと最前線からは消えていった。

 

 

バリエーション

 バリエーションとしてはM55、M60、M65がある。M55は空挺部隊用に短銃身化し折りたたみストックを装備したモデルで重量が2.8kg、全長は565mmと小型化した。しかし折り畳み式ストックの強度は低かった。M3グリースガンで十分任務を遂行することができたため米軍で採用されることはなかった。M60は警察での運用を目的に開発されたセミオートカービンモデルで銃身を延長してセミオート化したものであった。M65は22口径の訓練用である。

 

戦歴

 M50が第二次世界大戦で最初に使用されたのは1942年8月7日の米軍のガダルカナル島上陸時であった。しかし前述の欠点のため1943年末までには前線部隊では全廃、以降は後方支援部隊、沿岸警備隊等で使用された他、連合国各国にも供給されている。軍隊で使用が終了した分は警察等の法執行機関に払い下げられている。

 戦場という劣悪な環境での運用では散々であったM50であるが、十分にメンテナンスが可能な状況で運用する警察では作動系の問題は少なく安価でセミオート時の命中精度が高いこともありおおむね好評であった。

 

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