
(画像は南部式大型拳銃 wikipediaより転載)
要約
試製甲式自動拳銃は南部式大型拳銃の後、恐らく1920年代に試作された自動拳銃で当時最新のダブルカラムマガジンを採用、装弾数15発のファイアパワーを誇る。しかしこのためにグリップは非常に太く日本人の手には大きすぎる。総重量も1,3kgと実用品としてはかなり問題のある銃である。
試製甲式自動拳銃
性能
全長 -
重量 1,100g
口径 8mm
使用弾薬 8mm南部弾
装弾数 15発
完成 1920年代(推定)
総生産数 -
設計・開発 南部麒次郎 / 東京砲兵工廠
大体ここらへんの時期に試作されたようだ
南部式大型拳銃とは1907年に日本の銃器デザイナー南部麒次郎によって開発された自動拳銃である。高性能であったものの構造が複雑すぎて高コストであるため、海軍陸戦隊で採用されたのみで陸軍での採用は見送られた。そして1924年には南部式大型拳銃をベースとして構造を簡略化した南部十四年式拳銃が陸軍に制式採用される。この間に恐らく何種類かの試作モデルがあったのだが、その一つが試製甲式自動拳銃と呼ばれるものである。
外観の美しさは美術品クラス
この試製甲式自動拳銃は、外観は非常にスマートで作動はショートリコイルで撃発機構はストライカー方式、南部式大型拳銃と同じロッキングメカニズムを持つ。製作されたのは1920年代前半と推定されるが、驚くことに当時は未だ実用化されていない脱着式ダブルカラムマガジンを採用している。このため装弾数は15発と現用オートマチックに匹敵するファイアパワーである。外観は南部式大型拳銃や十四年式よりもグリップアングルが大きく、ルガーP-08のような外観をしている。
丁寧にポリッシュされたブルー仕上げで上部フレームには重量軽減のためか四角形の窪みが左右側面に2ヵ所ずつあり、後部にはリコイルスプリングを取り出すための穴が二か所ある。安全装置は十四年式と同様に銃左側面にあるが、十四年式がレバーを時計のように左右に半回転させる方式であるのに対して試製甲式は上下に動かすようになっており、上に跳ね上げると発射可能となる。これは親指で跳ね上げることができるために十四年式よりも実用性が高く思えるが、ダブルスタッグマガジンによりグリップが極太になってしまったために大体の日本人では指が届かない。
マガジンキャッチはグリップ前下部にある押しボタン式のものでマガジンは前述のようにダブルスタッグである。但し、後年のダブルスタッグマガジンのように上部に行くにしたがって細くなるシングルフィードではなく、トップ部分まで四角の角材のような形状をしている。同じくダブルスタッグマガジンを持つブローニングハイパワーとほぼ同時期の開発ではあるが、完成度からするとブローニングハイパワーには及ばない。リアサイトはタンジェントサイトで100m、200m、300mの目盛りがある。この時代では一般的なリアサイトの形式である。
まあ試作品だね
重量は約1,100g、フルロードで1,300g、東京砲兵工廠で15〜20挺が製造されたのみで、部隊配備はされておらず工場内で試験用に使用されただけである。現存が確認されているのは6挺で、ビックリするほどの高値が付いている(ウン百万円)。
試作されたのみで実用化はされていないが、スペックを見る限りは十四年式よりも優れているように見える。ただし、フルロードで1,300gとあまりにも大型であることやグリップが太すぎること等運用上に相当問題があり、当時の日本の工業水準からしても大量生産というのは難しいかったのであろう。
あまりに先進的な技術を取り込み過ぎて現場での運用や生産性は今ひとつ考慮されていなかったように思える。
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