01_空母飛龍
(画像は空母飛龍 wikipediaより転載)

 

超要約

 

 仮にミッドウェー海戦で日本海軍が大勝利を収め、米機動部隊壊滅、ミッドウェー島占領を成し遂げたとしても日本と戦うには十分な国力を持っている米国が講和に応じる可能性は低い。その後米国は空母その他の兵器を大量生産、実際の戦史と同じく日本に勝利する。

 

ミッドウェー海戦で日本が勝利したら米国は講和に応じるか?

 

遊びの思考実験

 1942年6月5日、日本海軍の主力空母4隻を中心とする機動部隊は米機動部隊と交戦、主力空母を全て失う大敗北を喫した。これによりそれまでの日本軍の快進撃は止まることになった。日本人にとってよっぽど悔しいのか、この海戦、様々な架空戦記物の題材となっている。超兵器が時空を超えて登場、米軍を木っ端みじんにやっつけるというのが結構、ありがちなパターンかもしれない。もちろん当時、イージス艦は存在しないし、時空を超えた各種超兵器もない。

 それはそれでよいのだが、極まれに、それなりの文化人の中にはミッドウェー海戦で日本が勝利できていれば有利な条件で停戦できたと考える向きもある。「だまし討ち」された米国はそんなに簡単に講和には応じないと私は考えるのだが、以下、簡単にその理由を書いていこう。因みにこれは「私はこう考えている」程度の話なのでまあ、あまり深く考えずに軽く読み流しておくれ。

 

軍令部と連合艦隊の軋轢

02_ミッドウェー島
(画像はミッドウェー島 wikipediaより転載)

 

 1942年5月末、連合艦隊は大挙内地を出発した。連合艦隊の大部分を動員する大作戦であったが、主力空母6隻の内、第五航空戦隊の空母翔鶴瑞鶴は同月上旬に起こった珊瑚海海戦での被害が回復しきらないために参加していない。それでも太平洋戦争初戦以来暴れまわった第一、第二航空戦隊の空母赤城、加賀飛龍蒼龍が機動部隊主力として参加している。他にも新たに就役した空母隼鷹と軽空母龍驤で編成された第四航空戦隊も陽動を兼ねたアリューシャン作戦のために参加している。

 では作戦の目的は何であったのか。実ははっきりしない。これは少し複雑になるが、当時の日本海軍には実戦部隊を統括する海軍軍令部というのがあり、その下に海軍の艦艇の大部分を統括する連合艦隊という部隊があった。実戦部隊を統括するのであるから軍令部が上位機関で連合艦隊はその指揮命令に従うのであるが、これがこの時期の軍令部と連合艦隊は意外とそりが合わなかった。

 1942年5月時点で各地で破竹の進撃を続けていた日本海軍は瞬く間に東南アジア地域を制圧、オーストラリアの北東ラバウルまで制圧した。そして問題となったのが次の作戦である。軍令部が考えた次の作戦はオーストラリアとアメリカ大陸の中間地点にあるフィジー・サモア攻略でここを攻略することでオーストラリアへの補給路を遮断するというものであった。

 これに対して連合艦隊が望んでいた次の作戦とはミッドウェー島攻略、そしてハワイ攻略であった。冷静に考えればどちらにせよ日本の国力を完全に超えており、「寝言は寝て言え」レベルの話であるが、当時は勝った勝ったの景気の良い時期、どんどん夢が膨らんでいたのであろう。

 軍令部と連合艦隊、どちらもミッドウェー海戦を行うのは承知したが理由が違う。軍令部はミッドウェー海域で米機動部隊を撃滅してフィジー・サモア作戦を円滑にするめるのが目的、連合艦隊はミッドウェー島攻略、そしてハワイ占領を夢想していた。こういうトップの意思がバラバラで一番困るのはいつも現場、当時は今以上に空気に支配されたナアナアの状態、目標を一つにすることなく何となく初めてしまったのがミッドウェー海戦であった。

 

講和に応じる可能性は低い

03_空母ヨークタウン
(画像は空母ヨークタウン wikipediaより転載)

 

 さらに痛いのがこの作戦、実は米軍には筒抜けであった。米軍は諜報に力を入れていたが、そもそも日本海軍は初戦の勝利に油断、防諜も何もあったものではなく、ミッドウェー島攻撃に関しては呉の床屋のオヤジまで知っていたという。諜報を重視した米軍に対してザルの防諜、機密がバレるのは当然であった。そしてミッドウェー島への攻撃を諜報によって知った米軍はミッドウェー島の防備を強化、手持ちの空母を総動員、珊瑚海海戦で中破した空母ヨークタウンまで応急修理で参加させている。

 その結果、ミッドウェー島を攻撃中に敵機動部隊を発見、爆装を雷装に変更している最中に急降下爆撃を受け空母3隻が大破、残った1隻も奮闘むなしく撃沈されてしまった。北方の隼鷹、龍驤の部隊の損害は少なかったものの、所属機の零式艦上戦闘機が米軍に鹵獲されてしまうという想定外の事件も起こっている。まさに日本軍の大敗である。この敗北により日本海軍は空母翔鶴、瑞鶴、隼鷹を中心に機動部隊を再編するもそれまでのような強力な機動部隊となることは遂になかった。

 人災としか思えないこの海戦、仮に勝利していたとしてもどこかで同じようなことが起こり日本軍は大敗北を喫していたと思うが、仮に勝利した場合はどうなったのだろうか。ここで勝利というのは大勝利、可能性は低いのだが、日本海軍が米機動部隊を壊滅、さらにミッドウェー島も占領した状態としよう。

 結論から書くと、ここまでの勝利でも米国が講和に応じる可能性は低いだろう。日本側は勝利の後の講和なのでかなり高い条件を提示してくるのは想像できる。これに対して米国は日本、ドイツの両方と戦って勝利したほどの国力、大敗であったとしても、たかが一局面での敗北で大戦略を変更することは考えにくい。現実にミッドウェー海戦で大敗した日本だって「すぐに講和をしよう」とならなかったのだ。日本と同様、いや、日米の国力を考えるとさらに講和に応じる可能性は低い。

 

結局、国力の違いなの

 当時の日本は日中戦争で国力を消耗、太平洋戦争の開戦を知った時は下級士官ですら国力の限界を理解していたほどだ。当然、米国では日本の国力をよく把握している。実際、この時点で米国はアイオワ級戦艦6隻、大型空母エセックス級も32隻を発注、鋭意建造中である。さらにM4シャーマン戦車の量産も開始されており、米国にしてみればこれらの兵器が前線に出て来るまで耐えればよいだけであり、まさに戦争は始まったばかりなのだ。

 これに対して日本はどうかというとミッドウェー海戦の結果、日本海軍も無傷では済まない。空母の撃沈はなかったとしても航空機には相当の損害が出ているはずだ。例えば、珊瑚海海戦、南太平洋海戦の場合、どちらも空母1隻撃沈に対して日本側は航空機90機以上が撃墜されている。この数値をそのまま当てはめることはできないが、ミッドウェー海戦に参加した米空母3隻を全て撃沈した場合、海軍航空隊の損害は決して小さくはない。空母は無事だったとしても出撃した攻撃隊、特に急降下爆撃機と雷撃機は壊滅状態となっているだろう。ミッドウェー海戦に勝利した日本、空母という「箱」はあっても搭載する航空機を操縦するパイロットは払底しているはずだ。機動部隊による攻勢は当分は難しい。

 さらにミッドウェー島進駐部隊は悲劇である。ハワイが無傷である状態では、ハワイから近いミッドウェー島へは補給など届くはずがなく、米軍の戦艦部隊や重爆隊などの猛攻撃を受けることになる。それではそのままハワイ攻略となるかというと前述のように機動部隊は壊滅状態、さらに米軍は中部太平洋で唯一の拠点となってしまったハワイの防衛に尽力するはずである。ハワイ攻略は99.99%不可能である。

 そうこうしている内に米軍では新鋭戦艦、空母が次々と就役してくる。最終的に24隻が建造されるエセックス級は日本が戦時中に建造した雲龍型空母の倍近い艦載機を搭載できる。これらが広大な空間に分散した日本軍を各個撃破することになる。これ以降は現実に起こった太平洋戦争と同じである。結局、ミッドウェー海戦での日本側勝利と仮定しても戦争中盤以降は同じ状態になっていただろう。空母3隻を撃沈した程度で戦略を変えるほど米国の国力は小さくはないのだ。

 

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