01_烈風
(画像は十七試艦戦烈風 wikipediaより転載)

 

要約

 一八試甲戦闘機 陣風とは、海軍が計画した対戦闘機用戦闘機で川西航空機が設計開発を行った。同時期に開発中であった烈風に比べ高高度性能を重視しており、要求性能はほぼ全ての点で烈風を上回っている「全部乗せ」戦闘機であった。開発中のエンジンが完成することを前提に開発が進んでいたがエンジンの完成の目途が立たず開発は中止された。

 

一八試甲戦闘機 陣風 〜概要〜

 

性能(計画値)

全幅 12.50m
全長 10,118m
全高 4.130m
自重 3,500kg
最大速度 685km/h(高度10,000m)
上昇力 10,000mまで13分20秒
上昇限度 13,600m
エンジン出力 2,100馬力(誉42型エンジン)
航続距離 2,055km
乗員 1名
武装 20mm機銃(または30mm機銃)2挺、13mm機銃2挺または
   20mm機銃6挺
初飛行  - 年 - 月 - 日
総生産数 計画のみ
設計・開発 川西航空機

 

戦闘機を甲戦、乙戦、丙戦に分類

 海軍の戦闘機分類は、艦上戦闘機局地戦闘機、長距離戦闘機、さらには陸上戦闘機等に分かれていたが、1943年になるとこれらの分類の統合整理が行われ、対戦闘機戦闘を主任務とする「甲戦闘機」、対爆撃機戦闘を主任務とした乙戦闘機、夜間戦闘を主任務とした丙戦闘機の3種類に分類された。対戦闘機戦闘を主任務とする甲戦闘機は、これまでの艦戦、長距離戦闘機が該当し、空戦性能に重点を置き、使用高度4,000mから10,000m、武装は20mm機銃2門、13mm機銃2挺程度と設定されていた。

 かつての局地戦闘機に相当する乙戦闘機は、速度と上昇力に重点が置かれ、使用高度は7,000mから10,000mと高高度での使用を想定していた。武装も対大型機用に重武装であり、20mm機銃2挺、30mm機銃2挺以上としていた。丙戦闘機は夜間行動能力が重視され、高高度性能、安定性、航続力が求められ複座式とされた。1943年以降、海軍はこれらを基準として戦闘機の開発を進めていった。

 

開発

 1943年夏、海軍は、十八試甲戦闘機試製陣風(J6K1)の名称で川西航空機に開発を命じた。この性能要求は凄まじく、最大速度は666.7km/h(高度10,000m)、高度10,000mまでの上昇時間13分以内、航続距離が2,315km、武装が20mm機銃2挺、13mm機銃2挺でさらには防弾装備までが要求されていた。この性能要求は当時、開発中であった十七試艦戦烈風を全ての面で凌ぐものであり、米国で開発中であったF8Fベアキャットの性能すら超えていた。

 しかしこの性能要求を満たせるエンジンは当時の日本にはなく、可能性があるとすれば中島飛行機が開発中であったハ45/42(海軍名「誉42型」)であった。このエンジンは2,100馬力で酸素噴射装置により高度10,000mで1,600馬力を出すことが可能であったものの、このエンジンはまだ開発中であり、酸素噴射装置に関しては実験段階であり、実用化にはほど遠かった。

 これに対して川西航空機は、第二設計課が設計を担当。1943年末に計画の概要が完成、1944年2月には基礎設計を終えた。全幅12.50m、全長10.118m、自重3,500kg、翼面荷重163.5kgの単座戦闘機で、全幅、全長共に零戦よりも1mほど大きいコンパクトな全体的にはオーソドックスな形の機体に設計されていた。主翼は、烈風と同様に主翼には上反角が付けられており、エンジンは上記誉42型、プロペラは直径3.5m4翅プロペラが採用されていた。

 武装は左右翼内のプロペラ圏外に設けられた九九式2号機銃(または五式30mm機銃)2挺、三式13mm機銃2挺、または30mm機銃2挺、三式13mm機銃2挺であった。この三式13mm機銃というのは日中戦争時に中国で鹵獲した米国のブローニングM2機銃をベースにした機銃で1943年9月11日に三式13mm固定機銃1型として制式採用されたものだ。要するに米国製機銃をパクったものだ。その後、九九式2号機銃はのちに最新の一八試20mm機銃に変更、1944年3月には計画が変更され、13mm機銃は廃止、20mm機銃6挺(携行弾数各200発)に増強することとなった。さらに両翼下に250kg爆弾2発、または60kg爆弾4発を搭載可能であった。

 性能は、最大速度が高度10,000mで685.2km/h、着陸速度が130.6km/h、高度10,000mまでの上昇時間が13分20秒、実用上昇限度は13,600m、航続時間が高度4,000mで5時間であった。1944年6月2日には実物大木型審査が行われたが、実在しないエンジン、機銃を使用することを前提とした本機は完成の可能性が低く、同年7月8日に開発中止が決定した。

 

 

生産数

 計画のみ

 

まとめ

 

 陣風は計画のみの戦闘機であり、完成していれば米国のF8Fすら凌ぐ究極の戦闘機となっていた。全て海軍にとって理想的な計算の下に計画が立てられていたが、実際は、設計の基本となるエンジンすら完成していなかった。「完成していれば世界最強の戦闘機だった」ということは稀に言われるが、完成していないのだからこのような言葉は無意味である。兵器に限らずその他の製品も実現してこそ意味のあるものだ。特に戦時に於いては尚更である。実現できない兵器を賛美しても仕方がないし、このような実現不可能な計画に多くの資材や労力が消費されたことを忘れてはならない。陸海軍問わず、実現可能性の非常に低い計画が他にも多く立案されたが、それに注がれたリソースはすさまじいものであった。

 

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