最近、忙しくて中々本を読む時間が無かった。何とか読み終わったのが本書、『神龍特別攻撃隊』である。本書は潜水艦搭載水上機の搭乗員をしていた高橋氏の貴重な記録である。高橋氏は乙種予科練6期修了。日本のトップエースと言われる西澤廣義氏は高橋氏の後輩にあたる7期出身であることからも6期というのがどれほどのベテランなのかが分かるだろう。同期には零戦初空戦に参加した岩井勉氏がいる。

 著者は数少ない潜水艦搭載水上機の搭乗員であり、さらに戦争末期には水上攻撃機晴嵐に搭乗していたというかなり貴重な体験をした人だ。晴嵐とは日本海軍が1943年に完成させた特殊水上攻撃機で「潜水空母」伊400での運用を前提に設計された機体である。28機が生産され、最高速度は474km/h、非常時にはフロートを投棄することも可能である。航続距離は1,540km、800kg爆弾1発または魚雷1本、250kg爆弾4発を搭載することが出来たが、あまりの高性能故に生産コストは零戦50機分に相当すると言われている。

 

貴重な潜水艦偵察機の搭乗員の記録

 私は元々零戦の搭乗員の戦記が大好きだった。しかし最近はもう読む本が無くなってしまったこともあり、水上機搭乗員の戦記を読み始めたのだが、水上機搭乗員の戦記は今まで読んだものはどれもかなり濃い内容だった。本書も他の水上機戦記と同様に内容は濃い。訓練中にいじめられていた搭乗員がいじめた上官を後席に乗せ海面に突入して殉職した話などは衝撃だった。

 さらにペナン島ではドイツのUボートが10隻ほど作戦行動をしており、その性能の高さは日本の潜水艦長を羨ましがらせた。乗っていたのは15歳くらいの少年達が多かったというのもあまり知られていない事実なのではないだろうか。さらに目を背けたくなることだが、撃沈した商船の捕虜を無差別に処刑したことについても書かれている。この処刑命令は潜水艦隊司令部から出ていたものだったという。著者は敢えてその事実と商船の名前を書いているのは勇気のいることだと思う。戦争はスポーツではない。現実はこんなものだろう。

 その他、呉軍港空襲の際に戦艦が特殊砲弾(恐らく三式弾)を発射して米軍機が撃墜されている様子等もあるが、やはり水上攻撃機晴嵐についての記述は特に貴重だ。晴嵐はかなり操縦しやすい航空機だったようである。爆弾は800kgの大型爆弾を搭載することが可能で雷撃もできた。そしてフロートを外すと最高速度は560kmと零戦五二型と同等の速度を出すことが出来るというあまり知られていない高性能機でもある。

 さらに著者は瑞雲にも搭乗している。瑞雲もかなり高性能だったようであり、空戦性能は零戦と互角であると評している。本書は潜水艦搭載水上機搭乗員の記録としてもかなり貴重であるが、晴嵐や瑞雲に実際に乗った数少ない搭乗員の記録であり、戦記に興味のある人にとっては貴重な本だと思う。おススメだ。。。いや、絶対に読んだ方がいい。

 

 

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