
(画像はwikipediaより転載)
要約
P9とは1969年にH&K社から発売された9mmピストルで全長192mm、重量880g、内蔵式ハンマー方式でローラーロッキング方式を採用している。装弾数は9mm仕様が9発、45ACP弾仕様が7発である。樹脂製トリガーガード、プレス製フレームを採用するなど当時としては先進的な自動拳銃であった。
H&KP9
性能
全長 192mm
重量 880g
口径 9mm、45口径
使用弾薬 9mmパラベラム弾、45ACP弾
装弾数 7〜9発
発売年 1969年
設計・開発 H&K社
ブローバックという機構
マッハで動くスライド
P9とはドイツの銃器メーカーH&K社が開発した自動拳銃で同社初の大型拳銃である。大型というには微妙な大きさではあるが、ワルサーP38やルガーP08が使用する9mmパラベラム弾を発射することができるハンドガンである。
最大の特徴はローラーロッキング方式を採用したことだ。ローラーロッキング方式と言われてもピンとくる人はわずかだ。そのためまずはローラーロッキング方式、いやいや、それ以前に自動拳銃という物体がどうして連続射撃ができるのかから説明していこう。
自動拳銃の自動とはいちいち射手が撃鉄を起こすこと必要がなく銃が自動で撃鉄を起こしてくれるシステムを持つ銃のことだ。自動拳銃は初弾を発射するとカートリッジの爆発力でスライドが後退して空薬莢を排出。スライドが前進する際に弾倉からスプリングにより押し出されたカートリッジを装填して最初の状態に戻る。これにより連続して射撃ができるというシステムである。しかし何だな。これ。実はタイミングが難しいのだ。
カートリッジの爆発力というのはかなり強烈でわずか数百グラムの金属製スライドなんて吹き飛ばしてしまう。このため何もしないとスライドの後退速度は異常に速くなりマッハで後退してスプリングの力で秒で前進する。結果、空薬莢が排出される前にスライドが前進、次弾が装填されてしまう。まあ、空薬莢と次弾で薬室は大混乱だ。
ストレートブローバック
それではカートリッジの火薬の量を減らし重いスライドを装着すればいいじゃないかと思うだろうと素人は考える。実はこれは正解。これで正常に作動する。これがストレートブローバックというもので、ワルサーPPKやSIG P230、ブローニングM1910等の中型拳銃で多く採用されている。
しかしストレートブローバックの問題は低威力のカートリッジしか使用できないことだ。高威力のカートリッジは爆発力も大きい。これに対応するためにはスライドの質量を増やすことしか方法がないので銃の重量はどんどん重くなってしまう。ヘビー級の重量を持つ低威力銃の完成だ。
それでは困るので銃器設計者は質量を増やさずにスライドの後退速度を遅らせる様々な方法を考案した。要するにスライドの速度を落とせばいいのだからスライドに何か抵抗を与えてやればいいのだ。そこで考案されたのがショートリコイル方式だ。
ショートリコイル方式
このショートリコイル方式で最も有名なのがコルトM1911で採用された方式だ。この方式では発射の際に後退したスライドが一時的に銃身パーツに引っかかるように設計されている。銃身パーツに引っかかったスライドは銃身パーツを引きずって後退、ある程度のところで引っかかりが外れスライドのみが後退する仕組みになっている。このアクションによりスライドの後退速度が遅くなるのだ。これはかなりうまい方法で現在でも多くの自動拳銃がこの方法を採用している。
非常にシンプルで信頼性が高いため現在においてはこの方法が最も一般的な方法である。
ローラーロッキング方式

(画像はwikipediaより転載)
これに対して主にH&Kが採用しているローラーロッキング方式というものがある。これはスライドが前進し薬室にカートリッジが装填された際、同時にスライドに装着されているローラー状のロックが銃身部の本体側溝に引っかかりロックされる。
そして弾丸が発射された際には爆発の圧力でスライドは後退しようとするが、何せロックが掛かっているものだから抵抗となりすぐには下がらない。しかし質量とエネルギーの計算によって弾丸が銃口から離れや薬室圧力が低下したところでロックが外れるような仕組みになっておりスライドが後退して次弾を装填、スプリングによってスライドは押し戻され次弾に備える。
長所と短所
前述のようにショートリコイル方式は銃身が一時的に後退する。これに対してローラーロッキング方式は銃身は固定されたままでローラーロッキング機構によって反動も抑制されるために命中精度非常に高くなる。さらにこの方式は高圧弾にも対応しやすい。
そうなるとローラーロッキング方式は良いところばかりと思われるかもしれないが当然欠点もある。前述の何だか分からない複雑な説明からもわかるように構造もまた複雑なのだ。このため整備性が悪く汚れに弱い。部品点数も多いため軽量化が難しく製造コストも高くなる。
これらの特徴を考慮した上でH&K社は敢えてこの構造を採用した。H&K社のG3自動小銃、MP5サブマシンガンはこの方式が採用されている。/p>
P9
P9はこのローラーロッキング方式を採用したハンドガンである。全長192mm、重量880gで装弾数は9mmパラベラム弾仕様が9発+1発、45ACP弾仕様が7発+1発である。銃身は102mmで多角形バレルを採用している。フレームはプレス製でトリガーガードは樹脂製と当時としてはかなり斬新であった。
照準器はフロント、リア共に固定式で全体的に突起をなくしたデザインで安全装置はスライド後部に配置、下げるとセイフティが作動し上げると射撃可能となる。グリップ下部に設置されたマガジンキャッチを相まって伝統のヨーロピアンスタイルとなっている。
設計は1965年頃から始まり、1969年に完成、同年発売されるが、当初のモデルP9はシングルアクションモデルで1973年までの間にわずか485丁が製造されたのみであった。しかし1973年からはP9Sというダブルアクション機構を採用したモデルにバージョンアップ、こちらはかなりのヒット作のようで1978年に製造中止になるまでかなりの数が製造されたようだ。
全長は192mm、重量880gでバレルは4インチ、口径は9mmと45口径の2種類があり、装弾数は9mm弾仕様が9発、45ACP弾仕様が7発である。装弾数9発というのは今では普通であるが、当時の標準は8発であり、当時主流のリボルバーに至っては6連発である。1発だけ多いとはいえハイパワーピストルであった。
外観上ハンマーはないが、P9は内蔵ハンマー方式でスライド内部にハンマーが存在する。このハンマーは左側面のデコッキングレバーでコックすることが可能であるが、通常のデコッキングレバーのようにハンマーを倒す機能はない。全く逆の機能である。グリップ左側には親指を掛けるためのサムレストがあるが、これは左利きの射手にとっては無駄なでっぱりである。P9の設計された60年代は、未だ左右の射手に対応する時代ではなかったのだ。
バリエーション
バリエーションとしては調整式サイトを装備したターゲットモデルと4丁のみ短銃身モデルが試作されている。銃身が固定されていることが良かったのかもしれないが、P9Sのサプレッサー(消音器)を装着した特殊モデルも米海軍に採用された。もちろん特殊部隊であろう。
採用した組織とか
西ドイツというかつて存在した国の国境警備隊が採用している他、同国の特殊部隊GSG-9、日本の警視庁特科中隊(のちのSAT)、マレーシア陸軍、前述の米海軍特殊部隊SEALs等が採用している。
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