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(画像はwikipediaより転載)

 

要約

 VP70とは、H&K社が1970年に発表した自動拳銃で、シンプル、低価格を実現させようとした銃で、世界初のポリマーフレームを採用し、9mmパラベラム弾使用でありながらストレートブローバック機構とするなど挑戦的な銃であった。専用ストックを装着することで3点バーストができるという面白ギミックもある。反面、独自の発射機構を採用したため反動は鋭く命中精度は悪く+P弾を使用すると装填不良を起こす。

 

VP70(実銃)

 

 

性能

全長 204mm
重量 820g
口径 9mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 18+1発
設計・開発 H&K社

 

開発

02_VP70
(画像はwikipediaより転載)

 

 VP70は、1970年にH&K社が開発した自動拳銃である。VPとは「Volkspistole(人民ピストル)」の略で、これは第二次世界大戦末期に即席で編成された国民突撃隊が装備する予定であったピストルの事で、このコンセプトを受け継いだVP70は特に貧乏な国の軍や警察向けに低価格で良く動くけど壊れないという銃を目指して設計された。

 1968年に設計が完了、1970年に発表されたVP70は、H&K社らしく非常にユニークな銃で、使用弾薬は9mmパラベラム弾でありながらストレートブローバック方式を採用した。このストレートブローバック方式というのはカートリッジの発射時の爆発力でスライドを後退させる自動拳銃では最もシンプルな機構であるが、高圧力のカートリッジだと質量の関係で弾丸が発射される前にスライドが後退してしまうので通常9mmパラベラム弾等の高圧力カートリッジを使用する銃では弾丸の発射とスライドを後退に時差をつけるために緩衝装置を使用する。

 但し、あくまでも弾丸とスライドの質量の問題なのでサブマシンガン等は質量のあるボルトを採用することで9mmパラベラム弾のストレートブローバックを採用しているモデルもある。VP70はこの方式を採用し、スライドの質量を増やすことで9mmパラベラム弾のストレートブローバックを可能にした。ただ、これだけだとスライドの質量がサブマシンガン並みになってしまうため、銃身内にあるライフリングを通常よりも深くしてカートリッジ発火時のガスを前方に逃がすという工夫をしている。

 撃発機構も元々シンプルなストライカー方式をさらに簡略化したもので、ストライカー方式の撃針をトリガーで引き切るというものであった。昔の「銀玉てっぽう」のようなものを想像すると分かりやすい。このようにこれでもかというくらい単純な構造を採用したことにより部品点数を減らすことに成功。同時にフレームをポリマーにするという思い切った設計を行った。このポリマーフレームは軽量で金属と異なり錆び等に強く、極寒地においても金属のように皮膚が付着しないという特徴がある。このポリマーフレームは現在では当たり前であるが、VP70で採用したのが世界初であった。

 シンプルな構造にポリマーフレームとユニークな銃であるが、さらにユニークなのがホルスターにもなる専用ストックで、このストックを装着すると3点バースト射撃が可能となる。これはサブマシンガンの代用として使用することを想定したものであり、このためVP70の装弾数も18発と多い。

 

VP70の問題点

 以上のように非常に革新的な銃であったが、問題が無かった訳ではない。いや、むしろ問題だらけだったと言って良い。ポリマーフレームの採用により重量の軽量化には成功したものの、銃は大型化し、トリガーフィーリングはリボルバーのダブルアクション並みに重くなってしまった。さらに上記のような構造のストレートブローバックを採用したことにより、ライフリングの溝から大量のガスが抜け出し、作動はするものの威力は380ACP並みに落ちてしまった。

 さらに問題であったのは「+P」と呼ばれる通常の9mm弾よりも威力を高めた強装弾を使用すると装填不良を起こしてしまうことである。ストレートブローバックを採用したためにスライドの質量とライフリングから抜けるガスの量で作動させるという微妙なバランスがVP70をデリケートな銃にしてしまったのだろう。

 つまりはVP70はストレートブローバック特有の非常に強い反動、質量のあるスライドからくる重く鋭いリコイルを持ち、通常の9mmパラベラム弾使用のハンドガンに比べて威力は弱く、命中精度も酷い上に、「+P」を使用すると頻繁に装填不良を起こしてしまうという性能的にはいいところが一つもないと言ってもよいほどのものになってしまった。

 このような試作品のような銃であったが、H&K社は、ポリマーフレーム用の生産ラインを新規に作るためにした多額の投資を回収するためなのか、VP70の設計者が社長にでもなったのかは分からないが、生産は1989年まで何と20年間も行われた。さすがにバリエーションは少なく、グリップからフィンガーレストを廃したVP70M、これをさらに民間向けにセミオートのみとしたVP70Z、使用弾薬を9×21mmIMI弾としたVP70 9×21があるのみである。

 

VP70(トイガン)

 

概要

 商業的には成功しなかったVP70であるが、その特徴ある外観とバースト機能搭載のハンドガンというギミックの面白さからトイガンとしては発売されている。1981年にMGCがモデルガンとしてモデルアップ。専用ストックも発売された。専用ストックを使用した3点バーストは作動が非常に不安定であり、一時期は「○○店のストックは性能がいい」等という都市伝説までささやかれた。1988年にはヨネザワがエアガンとして発売、近年ではタニオコバがガスブローバックとして発売している。

 

まとめ

 

 VP70は、商業的には失敗と言って良い製品であったが、この銃での技術的な挑戦はポリマーフレームを生み出した。保守的な設計であることも重要であるが、失敗を恐れずに新しく挑戦し続けることが技術を進歩させる。VP70の失敗はのちの世代に大きな成功をもたらしたといえる。

 

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