
(画像はwikipediaより転載)
要約
M3グリースガンは1942年に完成した短機関銃である。全長570mm、重量3,7kg、45ACP弾を30発装弾できる。総生産数は655,363挺で設計者はジョージ・ハイド、ゼネラル・モーターズで生産された。生産性を高めるため機構は極力単純化、木製部品を排除してプレス加工と溶接のみで製造できる。
M3 グリースガン
性能
全長 570mm(ストック展開時 745mm)
重量 3,700g
口径 45口径
使用弾薬 45ACP弾
装弾数 30発
回転速度 500発/分
完成 1942年
総生産数 655,363挺(M3:606,694挺 M3A1:48,669挺)
設計・開発 ジョージ・ハイド / ゼネラル・モーターズ
開発経緯
米軍は1920年代からトンプソン短機関銃を採用していたものの、トンプソン短機関銃は削り出し工法で製造されているために大量生産には不向きであった。このため米軍はドイツ軍のMP40、英軍のステン短機関銃というプレス加工を大幅に採用した短機関銃に関心を持った。
1942年10月、米軍武器科はステン型短機関銃の研究を開始した。研究を開始するにあたって陸軍から提出された要件は30カービン弾または45ACP弾を使用して、個人で携行でき、セミオート又はフルオートでの射撃が可能というものだった。
開発
実際に設計を行ったのはM2短機関銃を開発したゼネラルモーターズ(GE)の技師ジョージ・ハイドであった。当初ハイドはステン短機関銃の弾倉をそのまま使用する9mm弾仕様のセミ・フルオート切替式のT15を開発、そしてこれを45ACP弾仕様に変更、さらにセミオート機能を排除したT20を完成させた。
このT20は早速テストされたが成績は良好で5,000発以上発射して装填不良はわずか2回であった。その後も空挺部隊や機甲部隊などでテストされたが装填不良の原因は全てマガジンの給弾の問題であったためT20本体の設計は変更されることはなかった。
1942年12月、この結果を受けた米陸軍はT20をM3として制式採用した。M3はオープンボルト方式のストレートブローバックを採用、円筒形のフレームにピストルグリップを装備、グリップ前方にはフォアグリップを兼ねたマガジンが配置された。
ストレートブローバックで45ACP弾の反動によって後退させ2本のリターンスプリングにより元の状態に戻すというシンプルな機構であった。強力な45ACP弾の反動を吸収し連射速度を下げるためにボルトは重く設計されている。このため重量は小型であるにもかかわらず3.7kgと若干重い。それでもトンプソン短機関銃の5kgに比べれば軽量化されていた。
全体を極力プレス加工と溶接とすることで安価かつ低コストで製造することを目指しており、全体は強度を確保するために曲面を多用したプレス加工でフレームは左右同型のパーツを溶接で張り合わせるという極めて簡素化されたものであった。その他クリーニングロッド(銃身の煤を落とすための棒)を兼ねたストックはパイプを折り曲げただけのもので木製部品は一切使用されていない。
安全装置はエジェクションポートカバーに設置されており、エジェクションポートカバーの内側の突起がボルトに噛み合うことでボルトを固定する方式であった。コッキングレバーは右側面にありハンドル方式で反時計回りに回転させることでボルトをコッキングすると同時にエジェクションポートカバーが開き、安全装置が解除されて射撃可能となる。
フロントサイトはフレーム先端にある突起でリアサイトは鉄板に穴を開けたのみの固定式で91mで照準が合うように設計された。このようにM3は極めて簡略化され大量生産用に製造された銃であり、基本的には故障したら捨てる「使い捨て」の銃器として開発されたためスペアパーツの供給は想定されていなかった。
バリエーション
実戦部隊に投入されたのは1944年6月でシンプルな構造で故障が少ない上に500発/分という少し遅めに設定された回転速度も取り回しには便利で兵士達には好評だったようだ。しかしハンドル形式のコッキングレバーが戦場での手荒な扱いによって破損すること、そしてマガジンリリースボタンが誤って押されやすい等の欠点もあった。
これを改良したのがM3A1で1944年12月31日に制式採用された。改良された部位としてはコッキングレバーがハンドル形式からボルトに直接指を掛けて後方に引く方式に変更、これに伴ってエジェクションポートカバーは大型化、さらにマガジンキャッチを不用意に押してしまわないようにシールドが付けられた。その他細かな改良が行われた結果、重量も若干軽くなりより使い勝手が良くなっている。
その他改良型としては9mmパラベラム弾モデルがある。これはドイツ占領地域のレジスタンス向けのものでドイツ軍が採用している9mm弾を使用できるようにするためである。この1,000挺はCIAの前身OSSに納入された。さらに消音機能を搭載した45ACP弾モデルも1,000挺製造されている。
戦歴
米軍が第二次世界大戦以降、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも使用されている以外にも世界各国の軍隊でも運用されており日本の自衛隊でも2011年まで使用されている。近年では2004年にフィリピンがM3を採用している等シンプルな構造故の汎用性の高さ、寿命の長さが分かる。
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