（画像はwikipediaより転載）
要約
M83はフリーダムアームズ社が1983年に発売したSAリボルバーである。スタームルガー社スーパーブラックホークをベースにカートリッジは454カスール弾を使用できるように改良されている。価格は非常に高いが、ほぼ手作業で製造されており、ライン・ボーリング法を使用してチャンバーを製作するなど超高品質である。ハイグレードモデルは永久保証がされている。
フリーダムアームズ M83
性能
全長 274mm
重量 1,440g
口径 45口径
使用弾薬 454カスール弾
装弾数 5発
完成 1983年
設計・開発 リチャード・ディック・カスール / フリーダムアームズ社
SF映画『エイリアンネイション』
1988年に『エイリアンネイション』というSF映画が公開された。この映画は宇宙人が地球に移民してきて地球人と同じ様に生活している世界の話であった。エイリアンの多くは友好的で地球の生活に溶け込んでいるが、一部には犯罪に手を染めるエイリアンもいた。
それらの犯罪を取り締まる立場にあるロス市警の刑事マシューは、身体的に人間よりも屈強であるエイリアンの犯罪者に対してはそれまで使用していたベレッタ92Fが全く役に立たないことを知る。そこで入手したのがフリーダムアームズ社製シングルアクション（SA）リボルバーM83である。
フリーダムアームズ社もM83も日本ではあまり馴染みのない銃であるが米国では狩猟のバックアップ用のハンドガンとしてや競技においてトップクラスの人気を誇る銃である。今回はこのM83について解説したい。
非常に頑丈
1950年代、リチャード・ディック・カスールという若者がいた。彼は大口径カートリッジを開発することを夢見て45ロングコルト弾をベースにカートリッジの開発を行っていた。1957年にはついに44マグナムの1.5倍の威力を持つ454カスール弾を開発、1959年に発表している。この454カスール弾は威力が強すぎるため意図的に45ロングコルト弾よりもカートリッジを長くして誤って同口径を使用するSAA等に装填できないようにしている。
しかし高威力カートリッジは完成したもののそれを撃つ銃がない。「なければ作ればいいじゃなーい？」ということで454カスール弾を発射できるハンドガンの開発を開始した。当初はSAAをベースに開発していたが、より新しく強度の高いスターム・ルガー社から発売されたスーパーブラックホークに変更した。
44マグナム弾を使用するスーパーブラックホークであったが、454カスール弾となると強度不足は否めなかった。このためフレームを強化、さらに2度の熱処理を行った上で、シリンダーをノンフルーテッドシリンダー（溝無し）、装弾数を6発から5発に減らして454カスール弾にも耐えられる強度を確保した。ノッチもチャンバーの間に設置して強度を保つというこだわりようである。
全てにおいて最高品質
このようにして完成したM83はまた命中精度に関しても一級であった。チャンバーは0.452インチという最小寸法に設定されており（45ロングコルトの弾丸の直径は0.45インチ）、フレームに合わせてチャンバーを削るライン・ボーリング法によってシリンダー内にチャンバーが製造された。M83の工場出荷時の命中精度は25ヤード（約23m）で1.3インチ（約3.3cm）である。
リチャード・ディック・カスールは銃器製造をするために1979年3月にフリーダムアームズ社を創業、1983年に満を持してM83を発売している。上記の作業はほぼ手作業で行っているため価格は非常に高くベースモデルでも3,000ドル前後の価格設定である。
フレームの材質はオールステンレス製で外観はスターム・ルガー社スーパーブラックホークそのままであり、作動方式はSA、プラウハンドルグリップと呼ばれるピースメーカーと同じタイプのグリップを装備する。フロントサイトは艶消しブラックの固定でリアサイトはアジャスタブルサイトである。
バリエーションとしては、基本のバレル長が4.75、6、7.5、10インチの4種類で、口径は当初は454カスール弾仕様のみであったが、人気が出るにつれて口径のバリエーションを増やしていった。1991年1月には22LR弾モデルを発売、1992年1月には357マグナム弾仕様、さらに1993年12月には50AE、1997年12月には41マグナム弾仕様のM654、1999年4月には475ラインボー仕様が発売された。
フレームサイズも1997年にはミッドフレームというM83の90%程度のサイズのフレームを開発、同年357マグナム弾仕様のM97が発売された。さらにミッドフレームでは、1998年に45ロングコルト仕様、2000年4月には41マグナム弾のミッドフレームモデルが発売されている。
外観から見るとスーパーブラックホークの「パチモン」のように見えるが、前述のように極めて高い工作精度で設計されほぼ手作業で製造、表面仕上げも白磨き仕上げで丁寧に処理されているという超高級モデルでM83一丁でスーパーブラックホーク3〜4丁が買える金額である。品質に関してはフリーダムアームズ社は自身を持っており、最高級品のハイグレードモデルは永年保証がなされている。
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