
(画像はwikipediaより転載)
要約
ステン短機関銃は1941年にエンフィールド王立造兵廠によって開発された短機関銃である。口径は9mmパラベラム弾でドイツ軍の拳銃弾と同一規格である。生産性を考慮して極力簡略化した構造で木製部品を排除、プレス加工と溶接を多用している。発射機構はオープンボルト機構でセミ・フルオート選択可能である。意外にも性能は良く46万挺が製造された。
ステン短機関銃
性能
全長 760mm
重量 3,180g
口径 9mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 32,50発
回転速度 500発/分
完成 1941年
総生産数 370,000〜460,000挺
設計・開発 エンフィールド王立造兵廠
開発経緯
1940年6月、第二次世界大戦でドイツ軍に追い詰められた英軍はダンケルクから英本土へ撤退に成功したものの7月にはドイツ空軍による英本土爆撃が開始された。ダンケルクの撤退により大量の人員は無事に英本土に帰還できたものの武器弾薬は撤退時に放棄された。このため英軍は喪失した兵器、小火器の生産が急務となっていた。しかし英本土はドイツ空軍の爆撃により兵器産業も被害を受けており、英国では簡単な構造で設計された生産性が高い小火器が求められた。
当然、近距離戦闘では有効な短機関銃も必要とされており、米国からトンプソン短機関銃が輸入されたものの輸送中にドイツ海軍のUボートによる攻撃でほとんどが到着しなかった。このため英国は自国内で短機関銃を製造する必要に迫られた。
これを受けて開発されたのがドイツ製短機関銃MP28をコピーしたランチェスター短機関銃であった。1940年に完成したこの短機関銃は性能は高性能であったものの木製ストックや着剣装置まで持つ銃で生産性からさらに簡略化した設計の銃が求められた。
開発
1941年エンフィールド王立造兵廠は生産性を最大限に高めたステン短機関銃を完成させた。この銃はドイツ軍の短機関銃MP28とMP40を参考に設計された銃で極力部品点数を減らした上でプレス加工を多用した設計となっていた。
フレームはパイプでその先端に銃身がある構造で銃身先端には反動を抑制するためにガスを上方に吹き上げるスプーン状のフラッシュハイダーがあった。フレーム下部にはトリガーシステムがある。このトリガーシステムは木製パーツで覆われている。グリップはなく、トリガーシステム後方から伸びたパイプ製ストックがグリップ代わりとなる。グリップは無いが木製のフォアグリップがあり、左側面から水平に挿入される30発入り弾倉も同様にフォアグリップ代わりに使うこともできる。
作動方式はオープンボルト方式でボルトの先端に撃針が固定されている。右側面にボルトから突き出したコッキングハンドルがあり発射の際はコッキングハンドルを引くとボルトがオープンの状態となり固定される。引き金を引くとそのロックが外れ撃発、その反動でボルトが作動して連続射撃が可能となるシステムであった。引き金を戻すとボルトが再びロックされる。
Mk2
最初に完成したMk1はかなり生産性を考慮した構造であったものの木製パーツを使用しており、まだ生産性を上げる余地が残されていた。このためMk1をさらに省略化したMk2が開発される。Mk2は生産性という点からすれば究極といって良い短機関銃であった。
発射機構はMk1と同じであるが、木製パーツを全廃、トリガーシステムを覆っていた木製パーツはプレス加工の平らな鉄板に変更、ストックは1本の鉄パイプに肩当てを付けたもの、ストックの本体付け根下部には右手親指を入れるための穴の開いた鉄板が溶接された。
銃身先端のフラッシュハイダーは廃止され何もない銃身そのままとなった。フロントサイトは筒状のフレーム先端に付けられた突起でリアサイトは丸い鉄板に穴を開けただけのピープサイトであった。驚くことにこんなに簡略化したにも関わらずセミ・フルオート切替えが可能である。
使用弾薬は9mmパラベラム弾であるためドイツ軍のMP40やワルサーP-38、ルガーP-08等と弾薬の互換性がある。重量は3.18kgと軽量で発射速度は500発/分と比較的遅い。このためコントロールが容易であった。上記のような背景から急造された銃であるがシンプルな構造で基本性能は高く戦後にスターリング短機関銃が登場するまで使用され続けた。総生産数は370,000〜460,000挺と言われている。
バリエーション
前述のMk1、Mk2の他にさらに簡略化したMk3がある。これはMk2とほぼ同時期に完成したモデルで部品点数48個、製造時間は5時間という極端な省略化モデルであった。製造メーカーが自転車やブリキのミニカー等を製造していたおもちゃメーカーであり、実銃の製造経験が皆無であったためかメンテナンス性も悪くMk2との部品の互換性もなかったためMk3は作動不良が多く早々と製造が打ち切られた。それでも876,886挺が生産されホームガード(ドイツ軍が上陸してきた場合のゲリラ兵となる人達)に支給された。
Mk4は試作モデルのみで、最終量産バージョンはMk5である。これは1944年初頭に開発されたものですでに対ドイツ戦での連合国の勝利は確定していた状態であったため再び木製ストックや着剣装置が復活、木製グリップに木製フォアグリップまで装備されたラグジュアリーなモデルとなった。これら以外にもMk2にサプレッサーを装着したMk2S、Mk5にサプレッサーを装備さたMk6もある。
トイガン
MGCが1970年に(おもちゃメーカーだけに)ステンMk3を5,900円で発売しており、翌年にはCMCがステンMk2を7,800円で販売している。1983年にはハドソンがMk2を28,000円で発売した。
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