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要約

 B-32ドミネーターはコンソリデーテッド社で開発された大型爆撃機である。初飛行は1942年9月7日で要目は全幅41m、全長25m、最高速度575km/h、航続距離は6,100km、爆弾搭載量は9,100kg、12.7mm機銃10門である。ボーイング社が開発しているB-29が米陸軍の本命であったが失敗した際の保険として開発されたのがB-32である。118機が製造されたが与圧室でないため高高度での運用は出来なかったが中高度ではB-24に対して圧倒的な高性能を発揮した。終戦までに実戦配備され数度の空戦を経験している。

 

B-32 ドミネーター

 

 

性能

全幅 41.15m
全長 25.02m
全高 9.80m
自重 27,342kg
最大速度 575km/h(高度9,144m)
上昇力 5.3 m / 秒
上昇限度 9,400m
エンジン出力 2,200馬力(ライト R-3350-23A エンジン)4基
航続距離 6,100km
乗員 10名
武装 12.7mm機関砲10門
爆装 最大積載量9,100kg
初飛行 1942年9月7日
総生産数 118機
設計・開発 コンソリデーテッド社

 

開発経緯

 1934年、米軍は航続距離8,000km、爆弾搭載量10,000トンの超長距離大型爆撃機を開発する計画「プロジェクトA」を始動させた。1939年9月、ドイツのポーランド侵攻によりこのプロジェクトは加速、1940年1月29日、正式に性能要求が航空各社へ発行、6月27日にはこのプロジェクトに応じたボーイング社、ロッキード社、ダグラス社、コンソリデーテッド社の4社と契約を締結、それぞれXB-29、XB-30、XB-31、XB-32の名称が与えられた。

 本命は以前からこのプロジェクトの開発を行っているボーイング社のXB-29であったが、XB-29が失敗した際の保険としてその他3社に開発を依頼したのだった。のちにロッキード社、ダグラス社はこのプロジェクトから撤退、開発はボーイング社のXB-29とバックアップ用のコンソリデーテッド社のXB-32の2機種となった。

 

B-32の性能

03_B32

 

 XB-32はB-24リベレーターを彷彿とさせるようなデイビス翼を採用、当初はB-24と同様に2枚の垂直尾翼を装備したツインテールであった。与圧室の装備を前提としており、このため胴体は圧力に強い断面が円形の形状をしていた。エンジンはB-29と同じ2,200馬力ライト R-3350エンジンを採用、機銃は機内が与圧されるため機銃も旧来のように射手が直接射撃する訳にはいかずB-29と同様にリモート操作によって射撃される設計となっていた。

 初飛行は1942年9月7日であったが、与圧室とリモート砲塔に問題があったため初飛行では省略された。それでも飛行後20分でトラブルが発生、緊急着陸している。1943年5月10日の試験飛行でもXB-32は着陸に失敗、パイロット1名が死亡した。これらの試験の中でリモート砲塔は通常の砲塔に変更、与圧室の採用は見送られた。垂直尾翼も当初のツインテールからB-29と同様の大型1枚の垂直尾翼に変更されている。これらの改修によりB-32は中高度以下の爆撃を行う爆撃機となった。

 完成したB-32は全幅41.15m、全長25.32m、全高10.06mで垂直尾翼は5.8mにもなる大型のものが1枚装備された。エンジンはB-29と同様の2,200馬力ライト社製R-3350-23Aエンジンで最高速度は575km/h、航続距離は6,115kmであった。武装はリモート砲塔が廃止され旧来の有人砲塔となった上で12.7mm連装砲塔が機首に1基、機体上部に2基、下部に1基、尾部に1基の計5基10門であった。

 

B-29との比較

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 B-29は全幅43.05m、全長31.18mと全幅2m、全長5mほどB-29が大きい。爆弾搭載量の9,100kgと最高速度575km/hはどちらもB-29と同等であるが、航続距離はB-29の9,000kmに比べて6,115kmと足は短い。上昇限度はB-32が9,400m、B-29が9,710mとほぼ同じであるが、B-32は機内が与圧されていないために高高度での運用はできない。B-29と比較した場合、高高度性能と航続距離で大きく劣ってしまっている。

 1944年9月19日にはB-32量産機が米軍に納入されたが、すでにB-29は完成して実戦配備までされている状況、バックアップ用としては全く無意味になってしまった。但し、これを中高度以下の爆撃機、B-17やB-24と比較した場合、爆弾搭載量から航続距離と圧倒的に高性能であった。この時期、すでにドイツは降伏していたが、未だに日本は頑強に抵抗していたため完成したB-32は中高度爆撃機として第386爆撃飛行隊に配属されることとなった。

 

欠点

 B-32の運用上の問題点としてはコックピットで搭乗員が感じる騒音は尋常ではなく計器類のレイアウトも使い辛いものであった。さらに視界も悪くエンジンに対して機体重量が重すぎる上にエンジン火災が頻発、足回りの故障も多かった。しかしこれらの欠点は設計変更や品質管理により解消されていった。らしい。

 

戦歴

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 太平洋戦争も最終局面に近づいた1945年5月中旬、開戦当初フィリピンを電撃的に制圧した日本軍は米軍の圧倒的な戦力の前にあえなく撤退。すでに3月中にマニラを放棄していた。このマニラの飛行場に3機の見慣れない大型爆撃機が姿を現した。この爆撃機は米陸軍航空隊第312爆撃集団第386爆撃隊のB-32で実戦テストのためフィリピンに輸送された機体であった。

 初の実戦は5月29日のルナ市の日本軍補給廠への爆撃で続いて台湾、海南島への爆撃も行った。さらに6月15日、22日、25日と台湾を爆撃している。7月には第386爆撃隊はB-32への移行を完了、8月13日には沖縄の読谷飛行場に移動、8月15日の終戦まで数度の作戦行動を行った。

 

終戦後の空戦

 終戦後の16日も2機が写真偵察に出撃している。翌17日にも2機がと写真偵察を行っているがこれに対して日本軍は高射砲で反撃、さらに海軍厚木航空隊の零式艦上戦闘機12機が迎撃して2時間に及ぶ空中戦となった。

 この空戦では、B-32には軽微な損害しかなく日本機2機の撃墜を記録しているが日本側に損害の記録はない。これに対して米軍はこの攻撃が前線部隊単独のものなのか、または日本が降伏を拒否したのかを確認するため8月18日、再度B-32 2機を東京偵察に派遣した。これに対して海軍横須賀航空隊が迎撃、紫電改、零戦からの激しい攻撃を受けることとなった。この戦闘でB-32搭乗員1名が機上戦死しているもののB-32自体は無事に読谷飛行場に帰還している。この空戦に関しては「【終戦後の空戦】1945年8月18日、名門横須賀航空隊最後の空戦」に詳述。

 

最後の出撃が最悪の事故に

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 B-32の偵察任務は8月28日で4機が出撃した。日本軍は19日には完全に武装解除していたため戦闘こそはなかったが1機が離陸時に爆発炎上、帰還時に3機の内1機のエンジン2基が停止して墜落した。この作戦行動を最後にB-32は30日には戦闘活動を終了した。これによりB-32の運用は終了、10月12日には生産も終了した。試作機3機を含む118機が生産された他、130機が工場で飛行可能状態まで建造されていたという。B-32はB-29やB-24に比べて信頼性が低かったためか戦後運用されることも外国に売却されることもなく1949年までに全機がスクラップにされた。

 

名称

 B-29にスーパーフォートレスという別称があったようにB-32にも別称があった。当初は「ターミネーター(終結させる者)」であったが、1944年8月に名称を「ドミネーター(支配者)」に変更されている。この名称変更は米軍ではたまに起こることで戦中に初飛行したF7Fタイガーキャット艦上戦闘機も当初は「トムキャット(※スラングでヤリチン的な意味)」という名称であったが、お下品であるとの理由で「タイガーキャット」という名称に変更されている。

 しかし変更された「ドミネーター」という名称も1945年8月には廃止。単にB-32と呼ばれるようになった。この廃止された理由は定かではないが、同年同月に日本は降伏したことが関係しているのかもしれない。

 

 

まとめ

 B-32と名称だけ聞くとB-29よりも新型高性能な爆撃機であると勘違いしてしまいそうであるが、性能はB-29が圧倒している。与圧室の実用化に失敗、リモート砲塔も失敗、故障や事故が頻発、バックアップ用爆撃機が米軍に納入された時にはすでに本命爆撃機が実戦配備された後であったり、第二次世界大戦最後の戦死者を出した機体であったり、最後の出撃が最大の事故となったり、さらには名称の度々の変更の挙句に最後は名称が無くなってしまう等、何となくツイていない機体である。

※画像は全てwikipediaより転載

 

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