01_赤旗
(画像はwikipediaより転載)

 

共産主義国家

 

駄目だったから駄目は駄目

 最近、共産主義について調べている。以前から興味はありその都度調べていたが、今回は一応系統立てて調べてみた。おおよそは分かっていたのだが、ソビエト連邦の歴史など調べると知らないことが多く楽しい時間であった。と、それは良いのだ。今回私が書きたいのは共産主義が何故、何がダメなのかということだ。共産主義が駄目だということはみんな知っている。何故ならソビエトは崩壊したじゃないか。今更何故そんなことを書く必要があるのかと思われるかもしれない。

 しかしこれは違う。ソビエトが崩壊したからと言って共産主義が駄目というのは論理として成立しない。理由は簡単である。現在においても世界中に共産主義国家というのは存続しているからだ。一番大きな共産主義国家に中華人民共和国がある。さらに朝鮮民主主義人民共和国、そしてキューバ等、未だに共産主義国家は多い。全人類の何割かは共産主義を国是とする国家に所属していると言っていい。このように書くと当然の批判として「中国は実質資本主義国家である」「北朝鮮は独裁国家である」という意見があるのは承知している。

 

ソビエトだって共産主義の理想通りではない

 確かにその通りである。では逆に問いたい。ソビエトは100%理念を実現した社会主義国家であったのかということだ。ソビエトだってマルクスの理念の通りの純粋な社会主義国家ではなかったではないか。1922年に成立、1924年にはレーニンが亡くなりスターリンが跡を継ぐ。スターリンは有名な独裁者である。独裁者がいる時点で社会主義ではない。ソビエトだって社会主義を実現した国家ではないのだ。

 こういう考え方もできる。仮にソビエトが社会主義の理想に近い国家であったとする。そしてそれが崩壊した。しかしそれは理念が間違っていたのではなく、たまたま地理的、時代的、または個別の要因によって崩壊しただけだ。将来的には社会主義国家、または共産主義社会が実現されるのだ。という論理もありうる。つまり共産主義とソビエトというのはイコールではないのだ。

 

人は他者との違いを求める

 まあ、つまらない前置きは良いとして本題に入ろう。共産主義というのは資本(工場、農地等)を労働者が共有、そしてそこから生まれた生産物(製品や食糧)はみんなで分配するという考え方。社会主義というのは一時的にそれを国家が行うというものだ。むろんこれは一時的で将来的には国家はなくなり共産主義社会となる。

 制度的に相当問題があることは100年前から指摘されている。結局、ほとんどの場合、汚職が蔓延する独裁国家になってしまうのだ。それはそれとして、私は、共産主義にはもう一つ別の問題があると考えている。それは人間にはアイデンティティ(自己同一性)があるということだ。自己同一性とはその言葉通り、私は私であるという認識である。私が私であるということは、逆に言えば私は他者とは違うということだ。

 身体は他者とは違う。経験も他者とは違う。これで人間は自己同一性が満たされるのかといえばそうではない。「私は有名大学出身である」「私は一流企業に所属している」「私は人と違う才能を持っている」など、もっと具体的なことで他者との違いを確認したい生き物なのだ。

 

違うは価値になる

 衣食住に関しても同じだ。人間は人と同じ食事をして人と同じ仕事をして人と同じ家に住む。こんなことには耐えられない。人と違うことをして見た目でも他者に差をつけたいのだ。そうするとどうなるのか。料理の得意な人が他の人と違う料理を作る。デザインの得意な人がオシャレな服を作る。そうすると他者との差をつけたい人がその製品に殺到する。

 美味しい料理が存在するということは、同時に不味い料理が存在するということだ。オシャレな服があるということは、同時にダサい服が存在するということになる。そこでオシャレな服には価値が出てしまう。オシャレな服を持っていることはダサい服を持っていることよりも資産価値が出てしまう。その時点で平等ではなくなってしまうのだ。そこに資産を持つ者と持たざる者の差が出来てしまう。

 さらにこの美味しい料理人、オシャレな服を作る人というのは何をやっているのかを考えてみる。この人達は原料を購入、そして加工して製品を作り上げている。これはそのまま工場だ。そして作っている人は一人工場の資本家に他ならない。この時点でもう共産主義ではなくなってしまう。

 もちろん個人で楽しむだけで売らなければ共産主義ではある。しかし前述のように人間というのは他の人と差をつけたいのだ。これは人間の自己同一性の問題で、人間の本質的なものなのだ。その本能は抑えることはできない。

 結局、共産主義を貫徹しようと思えばこれらの行為を強制的に禁止することになる。その時点で共産主義の限界を露呈したことになるのだ。もう人類の理想ではなくなっている。

 

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