01_m1911
(画像はM1911 wikipediaより転載)

 

要約

 コルトガバメントシリーズ70と80の違いはシリーズ70で採用されたコレットブッシュの廃止、撃針セイフティの追加、ハンマー、シアーの形状変更、サイトのホワイトドットの追加である。この改良のために安全性は向上したがトリガーが重くなってしまった。1983年よりシリーズ80へと移行開始、1988年にシリーズ70は全廃された。

 

コルトガバメント シリーズ70 VS 80

 

 

性能(M1911A1)

全長 216mm
銃身長 127mm
重量 1130g
口径 45ACP
装弾数 7+1発

 

シリーズ70と80

 M1911とは、言わずと知れた1911年に米軍に採用された45ACP弾を使用する自動拳銃である。構造は堅牢でシンプル、信頼性が高く現在においても改良型が世界中の軍隊、法執行機関で使用されており、民間向けにも発売されたモデルもまた安定した人気がある。

 コルト社は1970年に市場にガバメントシリーズ70という改良型を投入、さらに1983年にはほとんど外観に違いの無いシリーズ80を投入している。今回はガンファンでも違いが分かりにくい2タイプのモデルの特徴について書いてみたい。

 

スライド後退時に命中精度が下がる

 シリーズ70は、基本的に当時の米軍現行モデルであるM1911A1とほぼ同じ設計であると言って良い。しかし実はM1911系統には構造的な問題があった。これは命中精度である。M1911の作動メカニズムはティルト・バレル・ショートリコイルという方式でこれはスライドが後退するとスライドがバレルに引っかかり、バレルが少し後退してスライドの作動を少しだけ遅らせるという方式である。これにより45ACP弾の高圧力で後退するスライドの作動速度を少しだけ遅らせることができる。

 なぜ「少しだけ遅らせる」必要があるのかというと高威力のカートリッジを使用した場合、スライドの作動も当然、凄まじい速度になる。そうするとカートリッジが排莢される前にスライドが閉鎖、作動不良となってしまうのだ。このために大口径ピストルというのは何らかの方法でスライドの後退を遅らせる必要がある。

 前述のようにM1911はティルト・バレル方式という方式でスライドの後退を遅らせるのだが、これには少し問題がある。この方式だとスライドが後退した際にバレルが少し動くのでこれによって命中精度が低下してしまうのだ。

 

コレットブッシュ

 この問題を改良したのがシリーズ70で、シリーズ70ではスライドの前面バレルを固定するバレルブッシングの形状を変更した。これはコレットブッシュと呼ばれるバレルブッシュシングでそれまでのバレルブッシングがソリッドタイプという筒状をしていたのに対して4枚の板バネに変更されている。画像がないと分かりにくいが銃に装着された状態で筒に縦に切り込みが入っている形状を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。

 この板バネはバレルを固定するためのものでスライドが後退してバレルが可動する際にその動きを最小限に抑えるためのものだ。このバレルブッシングはそれなりに効果があったようだだが、45ACP弾の高威力で作動するバレルを押さえつけるためのブッシングなので以前よりも分解が大変になってしまったようだ。

 

訴訟沙汰

 これがシリーズ70の一番の改良で、その他は基本的にM1911A1モデルと同じと考えて良い。しかし1970年に発売されたシリーズ70は人気があったものの安全装置の不備から訴訟の対象になってしまった。これは露出式ハンマーを持っているM1911以外にも言える問題であるが、銃を落としてしまったりしてハンマーに強い圧力がかかってしまうとハンマーはそのまま撃針を打撃、暴発が起こってしまうのだ。

 M1911にはハーフコックというハンマーの位置があり、この状態だとシアーがハンマーに引っかかり、相当強い力がかからなければハンマーが落ちることはない。相当強い力とは鋼鉄を折り曲げるほどの力のことである。しかしハーフコック状態でなければハンマーは落とした程度でも暴発する可能性は否定できなかった。

 

シリーズ80

 この点を改良したのがシリーズ80である。シリーズ80には撃針に交差する形状のバーが内蔵された。このバーは引き金に連動しており、普段は撃針の動きをロックしているものの引き金を引くとバーが上がり撃針の動きを制約しなくなる。これにより暴発の可能性はほぼ全廃することができた。これがシリーズ70とシリーズ80の最大の違いである。

 しかしシリーズ70と80の違いはそれだけではない。まず前述のコレットブッシュはシリーズ80では以前のソリッドブッシュに戻されている。コレットブッシュは効果はあったものの板バネが破損しやすく評判が悪かったためのようだ。但し1983年にシリーズ80が発売された時点で全てのシリーズ80で廃止された訳ではなく、1988年に全廃されるまで段階的に廃止されていった。因みに短銃身モデルのコマンダー、オフィサーズACPは1970年代においてもコレットブッシュは採用されていない。

 さらに安全装置ではファイアリングピンセイフティ以外にも改良が加えられた。ハンマーとシアーが引っかかる部分がシリーズ70ではフック状であったのに対してシリーズ80ではハーフコックシェルフとバレル平らな段になった。このシリーズ70のフック状の部分、摩耗等により破損する可能性が指摘されたからである。摩耗してしまうとハーフコックでもハンマーが落ちてしまい、落下などの強い力がかかると暴発してしまう可能性がある。

 この問題に対してシリーズ80はこのフックを廃止した。これによりハーフコックは可能であるが、フック状でないためロックする力は弱くなった。しかし仮にハンマーが撃針を打撃してしまったとしてもファイアリングピンセイフティがあるため問題はない。

 

様々な改良が加えられたシリーズ80

 他にもシリーズ80ではメインスプリングハウジングの形状がアーチ状ではなくなりM1911(A1ではない)と同じストレートタイプに変更、トリガーもA1以来のショートタイプからM1911のロングタイプに戻している。排莢するためのエジェクションポートもシリーズ70に比べ大型化されており、フロントは別パーツとなり、サイトも大型化するのと同時に視認性を高めるためにホワイトのドットが入っている。

 このようにシリーズ80はシリーズ70がM1911A1の形状を継承していたのに対して、シリーズ80は初代のM1911に先祖返りした印象がある。全体的に安全性は向上、性能は維持しているというのが大方の見方であるが、問題がない訳ではない。まずファイアリングピンセイフティを搭載するために撃針の形状が変更、ファイアリングピンセイフティと交差する部分が細くなったためにシリーズ70に比べて強度が弱くなってしまった。

 同時に発売以来問題となったのはトリガーフィーリングの悪さである。前述のようにシリーズ80のファイアリングピンセイフティはトリガーを引くことで作動する。つまりはトリガーを引く力で可動させる訳なのでトリガーが少し重くなってしまうということである。

 

1911はバリエーション豊富

 これはシリーズ80の発売時にユーザー間で話題となり、これを嫌ったユーザーがシリーズ70を買い求めた結果、シリーズ70の値段が高騰してしまったということもあったようだ。しかしこれは誤解のようだ。その後検証した結果、シリーズ70とシリーズ80のトリガーフィーリングはほとんど変わらないということが判明している。

 現在では多くのメーカーがM1911クローンを発売しており、シリーズ70をベースにしたものもシリーズ80をベースにしたものも存在する。コルト社も90年代にはシリーズ90というバリエーションを発売している他、2001年に限定生産ではあるがシリーズ70を復活させているので現在ではいろいろなモデルから愛銃を選択することができる。

 

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