(画像はコルトSAAアーティラリー wikipediaより転載)
要約
コルトフロンティアスカウトは1957年に発売されたSAAの22口径モデルである。1950年代の西部劇ブームによりSAAの人気が高まったがため「遊び用」のSAAとして同モデルを発売した。価格を低く抑えたため大ヒットした。シリンダーとバレルはスチール製、フレームはアルミ製、内部構造は簡略化されているが品質は高い。
コルト SAA フロンティアスカウト
性能
全長 253mm
重量 645g
口径 22口径
使用弾薬 22LR,22WMR弾
装弾数 6発
完成 1957年
設計・開発 コルト社
西部劇ブーム
1950年代になり、米国ではテレビが普及するようになると西部劇ブームが到来した。映画やドラマの主人公に憧れるのは洋の東西問わず同じだ。米国では、西部劇のヒーロー達が使用するハンドガン、SAA(Single Action Army)の人気が高まっていた。
しかしオリジナルのコルトSAAは1941年に製造が中止されてしまっていた。これは米国が第二次世界大戦に参加したことによりコルト社でも軍用銃の生産が優先されたためと考えられるが、戦争終結後もコルト社はこれからのハンドガンは自動拳銃とダブルアクション(DA)リボルバーが中心になっていくと考えたためSAAの生産を再開することはなかった。
このため1950年代に西部劇ブームが起こりSAAの需要が高まっていてもユーザーには十分なSAAを供給することはできなかった。そしてこの需要に目を付けたのが新興銃器メーカーのスターム・ルガー社である。1953年、ルガー社はSAAの構造や外観をコピーした22口径シングルシックスを発売、大ヒット商品となった。
本家が出した22口径
この需要は西部劇ブームが理由であることからも分かるように、主にプリンキングと呼ばれる「遊び」の需要であった。ルガー社もこのために45ロングコルト仕様ではなく22口径で発売したのだ。1956年、このSAAの需要に対して本家のコルト社もついに重い腰を上げSAAの再生産を開始したが、価格はシングルシックスの57ドルに対して125ドルと高価であった。
当時の物価は現在の1/10程度と考えられるので現在の価格にすると125,000円もする遊び用のハンドガンを購入できる人はそれほど多くはない。やはりカートリッジの価格も経済的な22口径のSAリボルバーの人気が高かった。そこでコルト社はSAA再販の翌年、1957年に22口径化したSAAフロンティアスカウトを発売した。
これは本家コルト社が発売する「本物」の22口径SAAということもあり発売前から非常に注目された上に価格も低く抑えて49.50ドルとシングルシックスをさらに下回る価格設定にした。このため1957年にフロンティアスカウトが発売されると爆発的に売れた。1957年11月27日に向上から最初のロッドが出荷されて以降、1958年末までの一年間で36,500丁を販売する大ヒット商品となった。
構造
フロンティアスカウトは22口径ということもありSAAよりも若干小型であったがシングルシックスでは平板であったローディングゲートもしっかりと作られていた。フレームとストラップはアルミ製でバレルとシリンダーはスチール製で作られており、アルミ製のパーツは地肌のままのシルバー、スチール製のパーツはブルーに仕上げられていた。
サイトはフロント、リア共に固定式で外観はSAAそのままであるが、フロントストラップとバックストラップがSAAのように別パーツではなく一体化されていたり、メインスプリングが簡略化されていたりとコストダウンが図られている。しかしバレルはコルト社のハイエンドリボルバーであるパイソンと同じ機械で製造しており品質は高い。撃針もパイソン同様フレームに内蔵されている。
このフロンティアスカウトは非常に人気が高かったため1986年まで生産された。この30年間に数度の改良が加えられており、また様々なバリエーションが発売されている。これらは銃器愛好家によって主にシリアルナンバー末尾のアルファベットを基準に区分がされているので99%の人には全く興味がないだろうが紹介したい。
Qシリーズ
これは最も初期に生産されたモデルで1957年から1958年3月まで製造されたモデルである。銃身長は4 .75インチである。基本はフレームとストラップがシルバーでバレルとシリンダーがブルーのデュアルトーンであるがオールシルバーモデルも同時に発売されている(1961年に製造終了)。
Fシリーズ
1958年から1970年まで発売されたシリーズであるがQシリーズと全く変わらない。シリアル末尾の「Q」が「0」と誤認されることから変更したようだ。1958年9月にはバリエーションとしてオールブルーモデル(57.50ドル)、11月には9.5インチのバントラインモデルが発売されている(59.50ドル)。1959年にはフロンティアスカウトとバントラインモデルに22WMR(22マグナム弾)仕様のシリンダー付きモデルが発売された。
これは22LR用と22WMR用のシリンダーが2個付属するものである。但し、22LRと22WMRはライフリングのピッチが異なっており、22LRのピッチでは22WMRを発射することはできない。このためバレルは22WMR用のものが装着されている。QシリーズとFシリーズは1970年までに24,600丁が製造されている。
Kシリーズ
1960年から1970年まで製造されたモデルでFシリーズと並行して販売された。これはフレームとストラップの材質をアルミからザマック合金に変更したモデルでこれにより重量が170g増加している。アルミからザマック合金への変更はコストダウンが理由ではないかと推測されている。
このKシリーズにはニッケルメッキモデルが存在する。1961年にはFシリーズのシルバーモデルが廃止されているが、ニッケルメッキモデルのラインナップによって重複したのが理由かもしれない。Kシリーズは1970年までに44,000丁が製造された。
Pシリーズ
Pシリーズ1962年から1970年まで製造された。発売年から「フロンティアスカウト62」と呼ばれる。Kシリーズ同様ザマック合金製であるが、仕上げがミッドナイトブルーと呼ばれるオールブルーとなった。68,000丁製造された。
Gシリーズ
1970年から1977年まで製造されたモデルで、スチール製フレームと黒檀のイーグルグリップが装備されている。バレルのバリエーションは4.4インチ、6インチ、7.5インチである。1971年にはアジャスタブルサイトを装備したニューフロンティアスカウトが登場している。Gシリーズは100,000丁製造されたが、1977年のGシリーズ生産終了を以てフロンティアスカウトはコルト社のカタログから消えた。
GSシリーズ
数年間の製造中止の後、1982年になるとフロンティアスカウトは安全装置を強化したGSシリーズと呼ばれる新たなモデルを発売する。同じく安全装置を強化したニューフロンティアモデル、1985年にはオールブルーモデルも発売するが販売は振るわず1986年には製造中止となった。GSシリーズは19,000丁製造された。
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