01_Colt2000
(画像はwikipediaより転載)

 

要約

 AA2000は1991年にコルト社より発売された自動拳銃である。所謂ワンダーナインで口径は9mm装弾数は15発であった。設計はユージン・ストーナー、リード・ナイトが行った。ロータリーバレル方式でトリガーにローラーベアリングシステムを採用したことからスムーズなトリガーフィーリングとなった。当初はコンパクトにまとめられていたが大型化した上にトリガープルも重くしたために信頼性の低さと相まって市場での評判は悪かった。1993年にリコール、1994年に生産中止した。

 

AA2000

 

 

性能

全長 191mm
重量 907g(アルミフレームモデル)820g(ポリマーフレームモデル)
口径 9mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 15発
完成 1991年
設計・開発 ユージン・ストーナー / ナイツアーマメント / コルト社

 

 1980年代後半になると、全米の警察は制式採用ハンドガンをリボルバーからオートマチックに変更する流れになってきた。それに目を付けたコルト社はかつてのオフィシャルポリスの成功の夢を再びとばかりに警察への需要を狙って警察用のオートの開発に乗り出した。

 とは言ってもそれまでダブルアクション(DA)オートの開発経験があまりないコルト社、1989年には初のDAオートであるダブルイーグルを発売はしていたものの、ダブルイーグルのDAはシングルアクションの機構を強引にダブルアクションにしたようなお粗末なもの、お世辞にも完成されたメカニズムとは言えなかった。

 そこで設計を今では伝説であるM16自動小銃の設計者であるユージン・ストーナーと弟子のリード・ナイトに依頼した。コルト社としてはグロック17に対抗する銃を開発したいという希望もあったようだ。そして1990年にオールアメリカン(AA)2000の開発を発表する。1990年なのになぜ2000?という疑問もないではないが、当時は世紀末、みんな来るべき2000年(当時はミレニアムとか言っていた)に希望を込めたのだろう。

 

機構・外観

 

 ストーナーとナイトの二人は設計を開始する。警察用ということでそれまで使用していたリボルバーからの移行にも抵抗がないようにという判断だろうかトリガーアクションはDAオンリーとした。バレルはロータリーバレル式ショートリコイル方式でトリガーにはローラーベアリングシステムを採用した。これによりDAでもスムーズなトリガープルが可能となった。

 スライドはスチール製、フレームはアルミ製であるが、当時、グロック17の登場で流行となりつつあったポリマーフレームも採用、ポリマーフレームでもグリップパネルは交換可能にする等個性も出したものであった。これらの設計がコルト社に渡されるのであるが、問題はそこからである。

 コルト社ではグロック17の大きさを意識してコンパクトにまとめられていたAA2000の銃身長を延長、延長した部分には別パーツを付け、一見、マズルコンペンセイターが装着されているような外観となった。さらにグリップも延長、見た目も何だか微妙になってしまった。

 しかし最も最悪であったのが、トリガープル(引き金を引く重さ)の変更で、コルト社は、ストーナーとナイトが設計した6ポンド(2.7kg)から何と12ポンド(5.4kg)に変更してしまった。理由は不明であるが、当時の米国の警察官は、それまで使用していたリボルバーの重いダブルアクションからオートの軽いトリガープルに慣れず、暴発事故なども起こっていたようで、銃メーカーはDAオンリーの自動拳銃を開発したりしていた。コルト社もそこらへんを意識してのトリガープルの重さの増加であったのかもしれない。

 こうして1991年に発売されたAA2000は、信頼性も低く、トリガープルが重く、長いためかなり不評であった。1993年にはリコールが起こり、1994年には生産が中止された。総生産数は20,000丁である。

 

 

成功は失敗の始まり。。。なんてネガティブな(汗)

 コルト社が満を持して開発したAA2000、成功か失敗かと言われれば、ガチ10,000%の失敗作であった。リード・ナイトはその後、ナイツアーマメント社を創設、M4カービン系のハンドガードの最大手となるが、伝説の天才設計者ユージン・ストーナーは1997年に他界、これが遺作の一つとなってしまった。

 ライバルであるS&W社は1950年代からDAオートの開発を行っており、1990年代にはそれらが第三世代にまで進化していた。ワルサーP38から影響を受けたシステムもこの時点では完全にタイムプルーフされたものとなっていた。

 これに対してコルト社はDAオートの開発は相当に遅れていた。1989年にコルト社初のDAオートであるダブルイーグルを発売、同社のヒット作であるM1911の外観に似せて売上アップを狙ったものの、トリガーリーチが長くDAでの射撃しやすさは今ひとつであった。1991年にはトリガーシステムに改良を加えて販売したものの販売は振るわず2000年には製造中止した。

 そこで開発したのがAA2000であったが、これも失敗、1997年にはCZ75で有名なチェコのチェスカ・ゾブロヨフカ社と提携、Z40というDAオートを発売するが残念ながらこれもセールスは伸びなかった。どうもコルト社はDAオートが苦手のようで、現在ではコルト社のカタログにDAオートはラインナップされていない。

 現代的なリボルバーの構造を初めて開発したコルト社は金属カートリッジの開発に遅れてしまう。そしてM1911という傑作SAオートの開発に成功したものの、DAオートの開発には後れを取ってしまった。零式艦上戦闘機の高性能に気を良くした日本海軍が後継機の開発を怠ったのに何か似ているような気がする。もしかしたら傑作の完成は衰退の始まりなのかもしれない。

 コルト社の栄枯盛衰をみているとそのような感想も持ってしまう。AA2000に関しては幸か不幸か、生産数が少なかったために現在ではコレクターの間で人気のある銃になっているようだ。M1911のようなロングセラーにはならなかったものの、一部のファンにでも人気があるのは良かったと思う。

 

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