【戦艦】『ドレットノート級』戦艦史上最大の革命をもたらした弩級戦艦 : トイレで読む向けブログ

(画像はwikipediaより転載)

要約

　戦艦ドレットノート級は1906年に竣工した英戦艦である。当時の戦艦の主砲が前後に4門、速力が18ノット程度あったのに対して同口径の主砲が10門、速力21ノットと圧倒的な火力と速力を発揮した。この主砲はあらゆる方向へ最低でも6門を一斉に射撃することができる。このために1隻で通常の戦艦1.5隻分の火力を発揮する上に速力が優っているため圧倒的に優位であった。この戦艦の登場によりそれまでの戦艦は一気に陳腐化してしまった。現在、大きい、スゴイという意味で使用されている「超ド級」という言葉の語源でもある。

戦艦ドレットノート級

性能

　通常排水量　18,110トン
　最大排水量　-トン
　全長　160.6m
　全幅　25m
　吃水　9.4m
　機関出力　23,000馬力
　最大速力　21ノット
　航続距離　6,620海里/10ノット
　乗員　773名
　武装　45口径30.5cm砲連装5基
　　　　40口径7.6cm砲単装27基
　　　　45cm水中発射管5門
　装甲　舷側　279cm
　　　　甲板　7.6cm
　　　　主砲　27.9cm
　竣工　1906年12月2日
　同型艦　1隻

特徴

(画像はwikipediaより転載)

　1905年10月2日起工、1906年2月10日進水、1906年12月2日に就役した英国製戦艦で戦艦史に革命をもたらした戦艦である。本級以前の戦艦というのは大体前後に2基備えられた主砲と舷側に副砲を多数配置するというのが基本的な方で、海戦になると主砲よりも速射性に優れた副砲をバンバン撃ちあうというのが一般的な戦法であった。これに対してドレットノート級戦艦は主砲45口径12インチ砲2連装1基を戦艦の中心線上に主砲塔を前部に1基、中央と後部に1基ずつ、さらに舷側左右に2基の合計5基（10門）が設置されている。これによりあらゆる方向への攻撃に対して最低でも3基6門の主砲を発射することができる。以前の戦艦と比較すると正面では前弩級戦艦が2門であるのに対してドレットノートは6門、側面では前弩級戦艦が4門であるのに対してドレットノートは8門と圧倒している。

　数だけでもとなるのは容易に理解できると思うが、主砲を同一口径で多数配置するというメリットというのは照準の点でも有利である。砲というのは初弾で命中弾を得るというようなものではなく、射撃ごとに着弾位置を調整、徐々に命中させていくのが通常の砲撃である。このため口径等が異なる砲が複数ある場合は着弾の修正にそれぞれ砲の観測員が測定して調整しなければならない。これに対して単一砲の場合は一つの砲の着弾調整さえすれば全主砲が一度に同じ地点に命中弾を送り込むことができる。着弾観測もシンプルになるのだ。

万能戦艦

　さらに機関も高速を出すために最新のタービン機関を採用、これにより前弩級戦艦が18ノット程度であったのに対して21ノットという高速を出すことが出来た。この高速により戦場ではドレットノートが「敵を選べる」状態になったといっていい。このためそれまでの戦艦が艦首下部に付けていた衝角は廃止された。

　このようにドレットノート級戦艦は主砲弾を素早く大量に目標に対して送り込むことが可能となった上に速力も上回っていることから高速で移動、圧倒的な火力で攻撃してまた移動というヒット&アウェイ戦法が可能になった。これが戦艦史に革命を起こしたと言われるゆえんである。

　弱点としては舷側の装甲板が下に設置しすぎたために水面下に没してしまい装甲の価値を半減させてしまったこと、檣楼の前に煙突を設置したことにより檣楼に煙突からの煙が射撃式装置の能力を低下させてしまったことが挙げられる。それでもその性能は圧倒的でそれまでの戦艦を一気に陳腐化させてしまったのだ。同型艦はない。

戦歴

(画像はwikipediaより転載)

　1906年に就役したドレットノートは1907年から1911年までイギリス本国艦隊の旗艦を務めた。1914年に第一次世界大戦が始まるとドレットノートは北海第4戦艦戦隊の旗艦として活動した。1915年にはドイツ海軍の潜水艦U-29を体当たりで撃沈したが、これは戦艦による潜水艦撃沈の唯一の戦果であり、その記録を作ったのが衝角を廃しした本艦であったのは皮肉である。

　本艦登場以後の弩級戦艦の発達は目覚ましく第一次世界大戦時にはすでに低速艦となっていたこともあり、本艦はドイツ航空機に対して対空戦闘をした以外は戦闘には参加していない。戦後は予備艦となり、1920年3月に退役、1923年解体された。

まとめ

　ドレットノートは戦艦史の革命ともいえる艦であった。前弩級戦艦との戦いでは正面では3倍、側面でも2倍の火力で圧倒した。さらに速力が3ノットも高速であったためドレットノートが戦場を選ぶことができた。実戦に投入された時点ではすでに旧式化しており目立った活躍をすることはなかったがドレットノート級戦艦が世界に与えた衝撃は大きかった。

　余談になるが、このドレットノート級戦艦、日本では名称を省略されド級と呼ばれた。のちにこのド級戦艦のさらに上を行く火力を持つ戦艦が現れるとド級戦艦を超えた戦艦ということで超ド級と表現する。現在でも普通に使われている「超ド級」の語源はこのドレットノート級戦艦である。

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