
(画像はwikipediaより転載)
要約
三八式歩兵銃とは、1906年に制式採用された日本軍の主力小銃である。6.5mmの小口径高速弾を使用するため命中精度が高いものの部品が規格化されておらず最後は職人によって調整されるため同じモデルでも部品の互換性がないという欠点もあった。1905年から1944年まで製造され、総生産数は約340万挺である。
三八式歩兵銃(実銃)
性能
全長 1,280mm
重量 3,730g
口径 6.5mm
使用弾薬 三八式実包(6.5×50mm弾)
装弾数 5発
完成 1906年
設計・開発 南部麒次郎 / 東京砲兵工廠
背景から開発まで
旧式化した十三・十八式村田銃の後継として開発されたのが、1897年に採用された三十式小銃であった。この小銃は二十二年式村田連発銃に次いで無煙火薬を採用、口径6.5mmの世界水準の小銃となった。1903年には全部隊への配備が完了、1904年に開戦した日露戦争はこの三十年式小銃で戦ったのである。しかし実際に戦場で使用してみると不具合が連発したため南部麒次郎が中心となり小規模の改良が行われた。
開発

(画像はwikipediaより転載)
三十式小銃は機関部の構造が複雑であり、メンテナンスの際に撃針が折れることがある等の構造上の欠点を有していた。このため戦場で使用していると機関部に砂塵や塵が入り込み作動不良の原因となった。これらの問題に対して南部麒次郎は機関部の構造の簡略化を実施、さらに遊底に遊底被の追加、弾倉のスプリングをコイルスプリングから板バネに変更、トリガーガードの大型化、照準器の変更、不良カートリッジが薬室内で破裂した際に強力なガスが後方に噴射、射手を直撃するのを防ぐための防御装置が追加、弾頭を尖頭化した三八式実包という専用弾薬も開発された。
これら改良を行った結果、1905年には仮採用、1906年に三八式歩兵銃として制式採用された。部隊配備は1908年から開始され、1910年に完了している。長らく制式小銃であった三八式歩兵銃であったが、1938年には次期制式小銃の開発が開始、翌年には九九式小銃として仮制式採用されると生産は新小銃にシフト、1942年には内地での三八式歩兵銃の生産は終了した。満洲ではその後も生産が続けられていたが、1944年には生産を終了、1905年から1944年までに約340万挺が生産された。ボルトアクションライフルとしての完成度は高いものの部品の規格化が出来ておらず同じ三八式歩兵銃でも部品の互換性は無かった。
バリエーション

(画像はwikipediaより転載)
三八式騎銃・四四式騎銃
三八式騎銃は、三八式歩兵銃の全長を30cm短縮したモデルで現在でいうカービン銃に相当する。当時は現役であった騎兵や砲兵、さらには後方支援部隊にも配備された。四四式騎銃は三八式騎銃の銃身下部にスパイク型の銃剣を装備したモデルで普段は射手に向かった状態で格納され、使用時に回転させ銃剣として使用する。このため通常の三八式歩兵銃のようにクリーニングロッドを銃身下部に格納することができないためクリーニングロッドは二分割されストック内に格納されている。数度の改良が加えられ、三八式騎銃と同様の兵種に配備された他、陸軍落下傘部隊にも配備され終戦まで使用、戦後も自衛隊で使用された。試作品として本銃を7.7mm口径化した試製7.7mm騎銃も存在する。
その他バリエーション
生産された三八式歩兵銃の中から精度の高い個体を選び出し2.5倍率のスコープを装着した九七式狙撃銃(1939年制式採用)がある他、銃身を切り詰めた三八式短小銃、折りたたみ式ストックを採用した試製一式小銃(三八式テラ銃)、散弾を発射出来るようにした三八式散弾銃等が少数製造されている。輸出用としては、口径をドイツ軍の採用している7.92×57mmに変更したモデル、8×52mmR弾仕様の66式小銃が欧州、タイ王国にそれぞれ輸出されている。
三八式歩兵銃(トイガン)
概要
モデルガンでは1965年に中田が鉄製で発売しており、1971年には六研、1974年にはミロクが発売している。1984年にはタナカが四四式騎銃を発売、1985年には三八式歩兵銃、1987年には三八式騎銃を限定150挺のみ発売している。他にも製造年不明であるが、佐野製作所がモデルガンとして三八式騎銃発売しているようである。エアーガンでは1986年にタナカが三八式騎銃を発売、2002年にはKTWがエアーコッキング式で三八式歩兵銃、三八式騎銃も発売している。2017年には海外メーカーS&T社からエアーコッキング式、2019年にはタナカワークスからガスガンで三八式騎銃ver.2が発売されている。
KTW 三八式歩兵銃 エアーコッキングガン
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性能
全長 1,276mm
重量 3,450g
装弾数 22発
初速 - m/s前後
定価 108,000円
元『GUN』誌ライター和智香氏が設立したエアーガンメーカーKTWの製品。主要パーツを鉄で製作、ストックもクルミ材を使用している。リアリティの点ではケースレスであることを除けば最高レベルである。2002年10月の発売以来、15回に及ぶ仕様変更をしており(2025年1月現在)、回を重ねるごとにリアリティが増しているため最新ロッドを購入するのがおすすめ。命中精度はKTWによって一丁一丁テストされているため東京マルイ製に匹敵するほど高い。あまりにも高品質であるため価格が高いのが難点。
タナカワークス 九七式狙撃銃 モデルガン
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性能
全長 1,120mm
重量 3,500g
装弾数 5発
初速 - m/s前後
定価 127,000円
現在営業しているメーカーで最も古くから三八式歩兵銃を発売しているメーカーの最新モデルである。主要パーツは金属製でストックは木製、金属パーツにはグレースチールフィニッシュを施してあるためリアリティは旧モデルと比較して段違いに高い。九七式狙撃銃をモデルアップしているのはタナカワークスのみなのでモデルガンとして欲しいならば一択である。一応発火は可能となっているが発火させる勇気があるかどうか。。。
タナカワークス 三八式騎銃 ガスガン
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性能
全長 990mm
重量 3,090g
装弾数 10発
初速 93m/s前後
定価 91,000円
30年以上前から三八式を発売している老舗のタナカワークスから発売されたガスガン。ボルトアクションにガスガンというと違和感を感じるかもしれないが、ガス化することによってボルトの引きが軽くなり実銃に近い感覚を味わうことが可能となる。主要パーツは金属製で最新モデルではグレースチールフィニッシュのメッキ加工がされている。ストックは木製であるため非常にリアルである。内部機構はペガサスシステムver.2で命中精度の高さには定評がある。
S&T 三八式歩兵銃 エアーコッキングガン
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性能
全長 1,290mm
重量 3,650g
装弾数 25発
初速 81m/s前後
定価 45,000円
海外メーカーS&T社製三八式歩兵銃。主要パーツは金属製でストックは木製、実銃と同様にストックも集合材となっている等、リアリティは相当なものである。命中精度も非常に高く、ボルトの引きもエアーガンとしては軽く、ストロークも短いため実用性も高い。完成度は非常に高い上に価格が日本製ガス・エアーガンメーカーの半額以下と恐ろしく安いのが特徴。海外製のため修理に対する不安はあるもののコストパフォーマンスは最も良いモデルである。
まとめ
三八式歩兵銃は制式採用から40年近くにわたり主力小銃であり続けた。1939年に九九式小銃が制式採用された後も多くの部隊で終戦まで使用され続けている。基本構造は先に制式採用された三十年式小銃と同じであったことを考えると日本軍の小銃というのは1897年に採用された銃を1945年の太平洋戦争終戦まで使用し続けたことになる。リー・エンフィールド小銃が1888年に制式採用されていることを考えると納得も出来るが、第二次世界大戦時のドイツ軍主力小銃Kar98kが1935年、米軍のM1ガーランドが1936年制式採用ということを考えるとやはり時代遅れの感が強い。
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コメント
コメント一覧 (1)
これは流体力学(工学?)が進んでいたからだろう。
同時期の我が国の平賀譲設計がクリッパーに固執してたのとは対照的だ。
ハリケーン・バウや密閉型格納庫がヨークタウン型に引き継がれなかったのは、何が悪かったのだろうか?
ピエール隊長
が
しました