本屋の定期パトロールをしていた時に発見、購入してしまった。私が期待していた内容は、東京都多摩地域の防空体制と生産工場等の詳細な情報であったが、内容は基本的に多摩の工業の変遷であった。軍事関係の本だと思っていた私はちょっと肩透かしを食らってしまったが、そもそも私が勝手に期待しただけなので著者は別に悪くない。

 内容は多摩の産業の変遷について多くのページが割かれている。立川に陸軍の飛行場が出来て、それに関連して各飛行機会社が工場を建てる、さらにその部品会社が集まり「空都」となったという内容。まあ、その流れに意外性はない。それを明確に書いたことが本書の価値かな。メッセージ性は非常に弱い。郷土史のようだった。

 因みに私がどうしても本書に食いつきが悪いのは私は生まれも育ちも多摩なのだ。多摩地区に軍の工場が密集していたことは子供の頃から聞いていたからかもしれない。よく「あそこの○×株式会社は中島飛行機の部品メーカーだったんだよー」とか言われた。その中島飛行機のエンジン工場が多摩にあったということが分かったのは収穫だった。戦前、戦中の航空産業を調べる時には役に立つかもしれない。