坂口恭平 著
講談社 (2012/5/18)

 

 私は本を読むときには大体、一つのテーマについて複数冊の本を続けざまに購入する場合が多い。例えば「武士道」について調べるのであれば、武士道について書かれた本をネットで調べまくって気になった本はどんどん購入する。だから部屋には必ずまだ読んでいない本が何冊かはある。鞄には読みかけの本と読んでいない本が数冊、常時入っている。本はその本を味わうというよりもデータを収集するための媒体という感覚が強いので、あまり「ハズレ」という本には出会わない。

 そんな読み方の私だが、たまに(最近は読書量がどんどん増えてきているので結構頻繁に)、すごい面白い本に出会うことがある。最近だと佐々木俊尚『レイヤー化する世界』や伊藤佑靖『国のために死ねるか』等があった。やたら長い前置きを書いてしまったが、もっとも最近読んだ、「すごい面白い本」が今日、紹介する『独立国家のつくりかた』だ。

 何故、こんなに前置きが長いかというとすごい面白い本というのは感想をどう書けばいいのか分からなくなるのだ。私の【書評】は面白い部分を抽出しているつもりだ。ただ、全部が面白いというのは書きようがないのだ。そんなことで読書後も結構、放置していたのだが、そろそろ書評を書こうかと思い立った。そうしないと鞄からいつまでも出せないからだ。

 坂口氏は以前、ネット動画でひかりの輪を主宰している上祐史浩氏との対談で存在を初めて知った。面白い人だなぁと感じた程度だったが、魅力的な人柄だなとは感じた。そして最近、モバイルハウスという言葉をネットで知り、検索していたところ坂口氏の著書に出会った。せっかくなので一番有名な本を買おうと思い購入したのが、本書だ。

 日本に生きるホームレスの取材から始まり、家というものの存在の意味や土地との付き合い方など、非常に面白かった。ホームレスでも決して不幸な人達ばかりではなく、多くの現金収入がありながらもホームレスを選んでいる人もいる(取材した人の中には月収50万円という人もいる)。何より家が魅力的だ。そのホームレスさんはブルーシートの家に住んでいる。しかし普通のブルーシートの家ではなく、きちんと直角平行で設計されている。

 内部も工夫されており、合理的なシステムキッチンならぬ、システムハウスと呼んでもいいようなものだった。さらに河川敷の管理が行政で曖昧であることや強制退去をさせると都市にホームレスが戻ってしまう等の理由から河川敷のホームレスは野放しにされていることなど内容は盛りだくさんだ。モバイルハウスについても詳しく書いてある。家ではあるが、車輪がついているために法律上、家とは認識されないので駐車場に置いたりすることで固定資産税等も発生しない。面白いことに気が付いたものだ。

 その他、内容が濃すぎて面白い部分を全部書いたらブログが膨大な分量になってしまう。これは是非買って読んでほしい。特に不動産業界の慣行や家賃を払うことに疑問を感じている人は必読だ。そう、必ず読まなければならない。その他も著者の現在に至るまでの人生等も本当に面白い。人間、会社に就職するだけが生きる道ではないことを教えてくれる。たぶん、本書はそれ以外にもいろんな悩みを解決してくれると思う。是非読んでほしい。

 本書の内容の要約を書こうと思ったけど、全部が面白いので書けなかった。私もまた読み直してみたいと思う。

 



土になる (文春e-book)
坂口 恭平
文藝春秋
2021-09-14