
(画像はwikipediaより転載)
要約
零式水上偵察機(零式三座水偵)は松尾喜四郎技師を設計主務者として愛知航空機が開発した水上偵察機である。初飛行は1939年4月で最高速度は367km/h、航続距離3,326kmであった。当時としては快速で安定性が良い傑作機で、日中戦争から太平洋戦争全般にわたって偵察任務だけでなく、船団護衛、哨戒、魚雷艇攻撃等に活躍した。250kg爆弾1発または60kg爆弾4発を搭載可能である。
零式水上偵察機
性能
全幅 14.50m
全長 11.49m
全高 4.70m
自重 2,524kg
最大速度 367km/h
上昇力 3,000mまで5分27秒
上昇限度 7,950m
エンジン出力 1,080馬力(金星43型)1基
航続距離 3,326km(14.9時間)
乗員 3名
武装 7.7mm機銃1挺(弾数582発。97発弾倉6個)
爆装 250kg爆弾1発または
60kg爆弾4発または
初飛行 1939年4月
総生産数 1,423機
設計・開発 松尾喜四郎 / 愛知航空機
開発

(画像はwikipediaより転載)
1937年初頭、海軍は中島飛行機に対しては十二試二座水偵、愛知時計電機(のちの愛知航空機)と川西航空機に対しては十二試二座水偵と十二試三座水偵の2機種の開発を命じた。この指示を受けた愛知は当時、十一試艦爆(のちの九九式艦上爆撃機)、十一試特種偵察機(のちの九八式水上偵察機)を開発中であり、さらに2機種の水上機の開発に力を割く余裕はなかった。
このため二座水偵の開発を先行、その成果を三座水偵に反映させるという方法で対応した。設計主務者は松尾喜四郎技師で開発を開始した。設計は順調に進んだものの開発中の航空機が多数あったため艤装関係の設計や試作機の製作が遅々として進まなかったため期日に間に合わず失格となってしまった。
しかし愛知の上層部は研究資料とするために開発の継続を指示、1939年1月1日に試作1号機が完成、4月には初飛行に成功した。飛行試験では小さな問題は発見されたものの大きな問題はなく、最高速度も要求値に達しており安定した素直な機体であった。
競合していた川西航空機の試作機は期日には間に合ったものの全体的に性能要求には達しておらず、さらにはテスト中に事故が続いたため審査は中止となっていた。このため海軍は愛知の試作機に注目、1939年7月、空技廠から担当者を派遣してテストを行った。その結果、愛知の試作機は直ちに海軍に領収された。
海軍での試験でも好成績を発揮、12月には制式採用が内定、1940年12月17日、零式水上偵察機として制式採用された。生産は制式採用前から始まっており、1940年9月30日には量産一号機が完成している。因みに生産は愛知では上記の理由で生産能力が限界を超えていたため、広海軍工廠、九州飛行機で主に生産が行われた。
機体は全金属製セミモノコック構造で主翼は金属製で一部が木製・羽布張り、格納時は主翼の中程から折り畳めるようになっていた。乗員は操縦員、偵察員、電信員の3名で偵察員は爆撃手も兼ねている。風防は完全密閉式である。
エンジンは三菱製金星43型(1,080馬力)でプロペラは直径3.1m3翅定速プロペラであった。武装は九二式7.7mm旋回機関銃で97発入りドラムマガジンを6個搭載していた。爆撃兵装は60kg爆弾4発、または250kg爆弾1発で60kg爆弾の内2発は翼下、2発は胴体内に搭載することが可能であった。
二号
初期の生産型と大きな変更点はないが、フロートの支持方式が張線から支柱に変更された他、初期生産型ではスピナ無しの機体が多かったが、スピナが標準装備となった。後期生産型からは排気管が推力式単排気管に変更された。
その他バリエーション
11甲型は、1944年11月に制式採用された三式空六号無線電信機4型(レーダー)を装備した機体で、同じく1944年11月に制式採用された11乙型は、磁気探知機装備型である。他には、1944年3月に制式採用された複操縦式の零式練習用水上偵察機、魚雷艇攻撃用に偵察席に20mm機銃1挺を搭載した魚雷艇攻撃機型、戦争末期に魚雷を搭載できるように改造された雷撃機型があった。
生産数
愛知時計電機で1938年から1942年までに133機、1942年から1945年までに九州飛行機で1,200機、広海軍工廠で90機が生産された。合計1,423機である。終戦時には約200機が残存していた。
まとめ
零式水上偵察機は、戦艦や巡洋艦にも搭載された他、水上機母艦や基地航空隊にも配属された。有名なR方面部隊にも零式三座水偵は配備されていた。四方を海に囲まれた日本にとって水上機の必要性は高く、日本海軍は他の海軍とは比較にならない程水上機の開発に熱心であった。このため多くの名機が生まれた。特に初期のソロモン方面での戦闘では、滑走路が不要な水上機は重宝されたが、艦上機、陸上機には性能面では太刀打ちできず多くの損害を出した。
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