(画像はwikipediaより転載)
零戦パイロットについて知りたい人という稀有な人のために「これを読めば海軍の撃墜王が良く分かる」という本を紹介。
秦郁彦・伊沢保穂『日本海軍戦闘機隊』エース列伝
まずは定番中の定番。一番のポイントは海軍のエース一覧表が掲載されていること。さらには主な撃墜王の経歴が書いてある。この本は1975年に出版された同タイトルの本の復刻版なので情報がちょっと古いものや誤りもあるので注意が必要。表紙の撃墜マークの横に立っているのは谷水竹雄飛曹長。
ヘンリーサカイダ『日本海軍航空隊のエース1937‐1945』
これも定番。ヘンリーサカイダは米国の戦史研究者。初版が1999年なので『日本海軍戦闘機隊』よりは新しい。同様にエース一覧表があるが、『日本海軍戦闘機隊』のものより精緻で、今まで知られていなかったエースの名前も見える。当時の搭乗員に直接インタビューもしてたり、独自取材もしている。大原亮治飛曹長のことを「ラバウルの殺し屋」と書いて抗議されたのも本書だったはず。航空機のカラー絵も多い。
野原茂『日本陸海軍機英雄列伝』
1994年に出版された『海軍航空英雄列伝』『陸軍航空英雄列伝』が元になっている。基本的に表彰された搭乗員が掲載されている。多くを『日本海軍戦闘機隊』に拠っているが、水上機のエース河村一郎、甲木清美など独自に調査している。コラムにR方面部隊など、あまり知られていない航空隊のエピソードがあるのも貴重。模型愛好家のために航空機の塗装のカラー絵が多くある。
この3冊を読めば日本海軍のエース、撃墜王は全て把握できる。こういう「エース列伝」はいろいろ批判されたりもしているが、愛好家であれば必読。「これらだけでは物足りない!」「もっと背景まで知りたい!」という人は下記の本もおススメ。
秦郁彦・伊沢保穂『日本海軍戦闘機隊』―戦歴と航空隊史話
前述の『日本海軍戦闘機隊』の姉妹編。航空隊や戦歴について書かれたもの。パイロットが所属した航空隊や航空戦史についても詳しく書いてある。但し、これも最初に出版されたのが1975年なので情報がちょっと古いので読むときは他の書籍と情報を突き合わせながら読むことをお勧めする。
秦郁彦・伊沢保穂『日本海軍戦闘機隊―付・エース列伝』
1975年初版の海軍のパイロット好きには必携の本。撃墜王、エースの一覧表、主要搭乗員の経歴、さらには航空隊史、航空戦史まで網羅している。2000年代に再販されているが、その際にエース列伝と航空隊史・航空戦史が分冊となってしまった。古くてもいいから1冊で読みたいという方にはこちらがおススメ。
零戦搭乗員会編『海軍戦闘機隊史』
この本は海軍戦闘機搭乗員の生存者が戦後作った「零戦搭乗員会」が出版したもの。他の本と違い当事者の手によるもので史料的価値も高い。海軍航空の成り立ちから制度、訓練さらには航空戦史など海軍航空の全てをかなりの精度で網羅している。巻末には海軍戦闘機搭乗員の名簿がある。かなりの貴重本。
以上、海軍の撃墜王を知るための基本的な文献を紹介してみた。最近は、航空戦史の研究が進んだことで陸軍戦闘機隊が意外に善戦していたことが判明したりと陸軍航空隊が注目されているが、海軍航空隊にも魅力的な航空機やエピソードが多くある。こちらも注目だ。
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