(以下画像はwikipediaより転載)
要約
44マグナム弾の起源はS&W社No3の弾薬である44ロシアン弾に遡る。このロシアン弾の火薬量を増やしたのが44スペシャル弾であった。この44スペシャル弾は市場で評判が良かった。この44スペシャル弾の火薬量を増やしたのが1955年に完成した44マグナム弾である。44マグナム弾を使用するM29は映画『ダーティーハリー』の影響で大ヒットした。
44レミントン・マグナム弾
性能
全長 40.9mm
重量 18.8g
口径 44口径
初速 396m/秒
エネルギー 1,011ジュール
完成 1955年
設計・開発 S&W社・レミントン社
世界で最も強力な銃
世界で最も強力な銃と言えば何か。そう、それはS&WM29である。その後500マグナム弾や50AE弾が発売されているが50歳オーバーのおじさんにとっては世界最強のカートリッジはいつの時代でも44マグナム弾なのだ。このカートリッジはS&W社が開発中であったM29専用カートリッジとしてレミントン社が開発したものだ。1955年に完成。当時世界最強のカートリッジであった。
因みにS&W社は世界最強カートリッジ好きな会社である。いつからそうなったのかは知らないが357マグナム弾が最初であることは間違いなさそうだ。1935年に発売された357マグナム弾は現在ではあまり特別な印象はないかもしれないが発売当時は世界最強のカートリッジであった。そして2003年の500マグナム弾と世界最強のカートリッジにコダワリを見せている。
44スペシャル弾
画像は44ロシアン弾
左から40S&W弾、38スペシャル弾、44スペシャル弾、45ACP弾
それは良いとして44マグナム弾の話に戻ろう。44マグナム弾を遡るとS&W社が発売した3番目のリボルバーであるNo3にまで遡る。それまでのS&W社のリボルバーは非常に小口径であった。S&W社最初のリボルバーであるNo1は22RF弾。22口径弾でもLR弾よりもさらに火薬量の少ないカートリッジである。これは恐らく護身用としては大ヒットしたのだがやはり威力が無さすぎるということでNo2を開発する。これは32口径。まあまあ威力は上がったもののまだ弱い。そこで開発したのが44口径のNo3であった。しかし44口径といっても口径がデカくなっただけで火薬量は少なかった。このNo3は重量は重かったが使い勝手が良かったため世界各国の軍隊が採用している。
ロシア軍もこのNo3を採用したがロシアが採用したNo3は火薬量を強化した44ロシアン弾仕様となっている。44ロシアン弾は初速235m/秒、エネルギー448JとNo2の32S&Wショート弾の初速207m/秒、エネルギー119Jに比べエネルギーが4倍と非常に強力になった。そして1907年この44ロシアン弾をベースにカートリッジを延長して火薬量を増やしたのが44スペシャル弾である。初速230m/秒、エネルギー440ジュールを発揮する。スペックは44ロシアン弾とあまり変わらないが、1908年に発売されたニューセンチュリーモデルに採用された。
この44スペシャル弾。今では全く話題の片隅にすら上らないがカートリッジの特性としてはかなり良いらしい。因みに我らがヒーローサンフランシスコ警察の型破り刑事(デカと読む)であるハリー・キャラハン警部はM29を愛用しているが使用弾薬はライトスペシャルという軽量弾である。これは『ダーティハリー2』で正義ヅラした警察官のクソ小僧達相手に射撃場で腕比べをした時にハリーが「反動が少なくて撃ちやすい」と語っている(うる覚え)。世界最強の銃は使っていても世界最強の弾薬は使っていないようだ。
44マグナム弾
44マグナム弾
彼らの使っているパイソン4インチも超カッコいいのだがそれはいい。1950年になるとこの44スペシャル弾を発射するNフレームリボルバーM1950が発売された。「Nフレーム」というのはS&Wのフレームの規格の一つでIフレーム、Jフレーム、Kフレーム、Nフレームがあり、NフレームはM27で初めて採用された規格で当時最大の規格であった。
S&Wの傑作メカニズムであるハンドエジェクターをNフレーム化したのがM1950でバレルのテーパーはなくなりハンドエジェクターよりも少しだけ垢ぬけたデザインとなった。このM1950を使用したのかどうかは知らないが当時巷では44スペシャル弾のホットロードを作るのが流行ったようだ。特にエルマー・キースというおじさんが44スペシャル弾の弾頭を重くして火薬量を増やしたカートリッジを開発することをS&Wとレミントン社に働きかけた。その結果完成したのが44マグナム弾であった。
44レミントン・マグナム弾は初速396m/秒、エネルギー1,011ジュールと初速は44スペシャル弾の倍近く、エネルギーは2.5倍である。一般的なリボルバーの弾薬である38S&Wスペシャル弾の初速が270m/秒、エネルギーが373ジュールであるのと比べるとその威力というものが分かるだろう。すごいのだ。
44マグナムリボルバー
ルガー・ブラックホーク
この44マグナム弾を使用する専用銃として完成したのがM29である。そしてこのM29と44マグナム弾を一躍有名にしたのは1971年の映画『ダーティーハリー』であった。身長190cmの大男ハリー・キャラハンがぶっ放す44マグナム弾に当時のキッズ達、その後のキッズ達(私)は熱狂した。そして米国ではM29が大ヒットした。映画に影響を受けてグッズが売れるのは洋の東西を問わない。米国ではそのグッズが実銃であっただけだ。
因みに1956年初頭にM29が発売されているが(1955年とも)、その年にスターム・ルガー社から44口径マグナム弾仕様のブラックホークが発売されている。これはあまりにも発売が早すぎるためレミントン社が開発中に開発情報が漏れたのではないかと言われている。ブラックホークはプラウハンドルのSAAを彷彿とさせるSAリボルバーであるが機構がシンプルで安価であるため結構売れた。ただやはり構造が弱すぎたようでのちにパーツを強化されたスーパーブラックホークが開発されている。
同様にM29もやはり強度その他今ひとつな部分があったのかそれとも純粋な改良発展型なのか一時期はパイソンのようなアンダーラグを装備したクラッシックに取って代わられた。さらに近年ではオリジナルがクラッシックス(「ス」に注目)としてアンダーラグがないモデルが発売されている。紛らわしい。因みに価格は1,379ドル(2024年10月現在)。
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参考文献
- 床井雅美『ピストル弾薬事典』並木書房 2015年
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