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M29

01_コルトパイソン
(コルトパイソン 画像はwikipediaより転載)

 

シティーハンターとは

 

 シティーハンターとは、1985年から1991年まで週刊少年ジャンプに連載されていた北条司原作の漫画である。キャッツアイで人気を博した北条司が放った二度目のヒット作であった。1987年にはアニメ化され、第1期1987〜1988年、第2期1988〜1989年、第3期1989〜1990年、一年置いて1991年にはシティーハンター91として合計4期にわたって放送された。それ以外にも複数回実写も含めて映画化されている人気コンテンツである。

 主人公は冴羽りょう(環境依存文字なので平仮名ね)という裏の世界では名の知れたスイーパーで、戦闘に関してはトップクラスの技能を持つ。特に銃に関しては百発百中で天才的な能力がある。しかし同時に相当なエロという設定で現在ではいろいろなサイドからクレームが来ること必至のエロぶりであった。主人公が愛用するのはコルトパイソン4インチモデルでこの銃は1955年にコルト社から発売された。当時最強の弾丸である357マグナムを使用する拳銃であった。

 

 

コルトパイソン357

 

 機構的には古いメカニズムであったが特徴的なベンチリブと呼ばれるバレル上部に設置された放熱用の装置等、外観の美しさから現在においても多くのファンがいる。メカニズムは「く」の字型のリーフスプリングを使用することから、引き始めは軽く、徐々に重くなってくる。ハンマーが落ちる瞬間が最も重くなると言われている。これに対してS&Wのメカは逆に引き始めが重くその後は軽くなる。このためシューティングマッチではS&Wのアクションが好まれ、パイソンをベースにするシューターは少なかった。

 これは、パイソンのアクションだと最後の一瞬が最もトリガーが重くなる。この最後の一瞬のトリガーが重いと照準がブレてしまう。これに対してS&Wのリボルバーは最初が一番重く、最後に「ストン」と落ちるような構造になっているためシューティングマッチ等には向いているのだ。しかし銃身の精度は非常に高かったので、今のようにカスタムバレルあまり無かった70年代あたりには、パイソンの銃身をS&WのM19に装着したスマイソン、スモルトというモデルがガンスミスの手によって作られた。この銃身をねじ込むというのは実はS&Wとコルト、バレルのネジきりが逆なので大変なのだが、これは余談。

 しかしこれらの話はシューティングマッチという非常に精度を要求される場面においてであり、実戦で使用する場合は、パイソンのトリガーフィーリングは「グラススムーズ」と言われるほどなめらかで特に問題は無い様である。パイソンにはバリエーションが数種類あり、2.5インチ銃身、3インチ銃身、4インチ銃身、6インチ銃身、8インチ銃身、10インチ銃身モデル、さらにステンレスモデル等が存在する。8インチ銃身モデルは「パイソンハンター」と呼ばれ、他のモデルと異なり銃身にも「PHYSON HUNTER」と刻印されている。10インチモデルはあまり有名ではないが、「テンポインター」という名称が付けられている。

 

 

 

魅力的なパイソンの扱い

 

 シティーハンターで冴羽が使用するのは、当然、8インチ「パイソンハンター」!。。。ではなく、4インチモデルで、アニメではコルト社純正木製グリップを装着、実写版ではパックマイヤーのラバーグリップを使用している。ジャッキーチェン主演の映画ではベレッタM92Fを使用しているがこれは日本のガンファンにはひんしゅくを買ったようだ。因みにライバルの海坊主はM29を使用、香はローマンと主要キャラの銃はMGC製品で占められている。恐らく、原作者が銃を決める時にモデルガンを見て参考にしたのだろう。

 このアニメに登場するコルトパイソンは何とも言えない魅力に溢れている。コルトパイソンというのは高級なハンドガンではるが、特に特殊な拳銃という訳ではない。しかし作中では、敵が冴羽が持っている銃がコルトパイソンであることに気が付くと「コルトパイソン!?お前ただのネズミじゃねぇな」等とパイソンがすごい拳銃であると強調される。そして戦闘ヘリアパッチをも撃墜するシーン等、子供心にパイソンへの憧憬は募っていったのだ。もちろん実際に357マグナムで戦闘ヘリを撃墜することは不可能なのであるが、これもまたフィクションの魅力である。

 

ちょっと実銃のお話

 

 実際、北条司氏はあまり銃器には詳しくないようで、パイソンにサイレンサーを装着したり、オープニングのパイソンのハンマーに撃針が描かれていたりしていた(コルト社の拳銃のハンマーに撃針はない)。これはアニメ制作者が知らなかったのだろうが、全体として銃はたくさん登場するもののあまり詳しくはないのだろうということは想像がつく。しかし、それだからこそなのだろうか、銃に詳しいファンが考えないような魅力ある表現がされていて楽しいアニメである。

 因みにその他の登場銃としては、冴羽のライバルの海坊主が使用するM29がある。これはS&W製の大型リボルバーで44マグナム弾を使用するあまりにも有名な拳銃である。1955年に発表、当時世界最強のカートリッジである44マグナム弾と共に発売された最強のハンドガンであった。S&W社は「最強カートリッジ」を作るのが好きらしく、1935年に発表されたS&W357マグナム(のちのM27)も、このために開発された当時最強のハンドガンカートリッジ357マグナム弾を使用していた。さらに2003年のM500も当時最強(多分現在でも最強)の500S&Wマグナムが同時に開発されている。

 

 

ワンオブサウザンド〜S&WM57〜

 

 他にもコルトローマン等が登場するが、特に印象的だったのはワンオブサウザンドと呼ばれるリボルバーであった。これは確かS&WM57であったと思うが(M58とする情報もあり)、製造工程の誤差から1000挺に1丁の割合で偶然生まれる高精度の銃という設定であった。これは実際にあるようで、そうなると逆に1000挺に1丁のハズレ銃というのも存在するということになる。まあ、それは良いとしてこのM57、41口径マグナムというあまり知られていないカートリッジを使用する銃である。

 この41マグナム弾というのも新しくS&Wが開発したカートリッジでM57はこの41マグナムを使用する最初のリボルバーであった。発表されたのは1964年で上記の357マグナムと44マグナムの中間の使い勝手の良さを目指して開発されたカートリッジである。バリエーションには4インチ、6インチ、6-1/2インチ、8-3/8インチモデルでスチール製、ブルー仕上げとニッケル仕上げがあった。1964年から製造が開始されたが1991年で製造中止。2008年より再び製造が再開されて現在に至っている。因みにM58とはこのM57の廉価版でリアサイトは無可動でグリップもグレードの低いものが使用されている。法執行機関への採用を目的に製作されたモデルでM19に対するM10のような存在である。

 

ということでまとめ

 

 シティーハンターはもちろん荒唐無稽な設定であり、冴羽の銃の腕も実銃の性能を超えてしまっている。しかし私が知る限り最も魅力的にコルトパイソンを描いた作品の一つであり、あの時のワクワク感は今でもシティーハンターを観ると思い出してしまう。因みに、このパイソンはエアガンメーカーのタナカワークスが2020年10月にシティーハンター公式コラボレーションモデルとして発売している。一番の特徴はサイレンサーを装着できることであるが、私としては、あのアニメカラーの塗装までして欲しかった。そう、シティーハンターの銃はスチールフィニッシュではダメなのだ。あの黒みがかったグレーのアニメカラーがシティーハンターのパイソンの「リアル」なのだ。しかし発売してくれたことには感謝しておる。。。

 

 

 


ミリタリーランキング

01_タクシードライバー

 

 『タクシードライバー』とは1976年の映画で、監督はマーチン・スコセッシ、主演ロバート・デ・ニーロである。人間の二面性、狂気について描いた映画で好き嫌いはかなり別れる。特に女性には苦手な方が多いようだ。表面的に観ると正義のヒーローが少女を救出しにいった映画と見えるが、実は狂気に満ちたホラー映画と言っても良い内容である。かなりヘビー級であるため『死霊の盆踊り』や『ロボ道士』のように楽しく何度も観る映画ではないことは間違いない。

 

ストーリー

 

02_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

映画の公開年と映画内の時間軸

 

 映画内では大統領選が行われている。アメリカの大統領選挙は4年に一度、1年間かけて行われる。70年代の大統領選は1972年と1976年に行われているが、トラヴィスが海兵隊を除隊したのが1973年であるので本作の大統領選は1976年であることが分かる。本作が公開されたのが1976年2月、アメリカ大統領選の予備選挙が開始されるのと同じタイミングで公開された映画なのである。

 そして主人公トラヴィス・ヴィックルについて。ベトナム戦争は1973年1月にパリ協定が締結され終結した。トラヴィスが海兵隊を除隊したのが1973年5月なのでベトナム戦争終結後である。海兵隊を除隊して学歴が全くないトラヴィス。1976年に26歳でタクシー会社の面接を受けていることから逆算するとトラヴィスはトラヴィスは1949または50年生まれ、高校卒業後すぐに海兵隊に志願したとすると1969年に19歳で入隊、1973年までの4年間海兵隊に在籍したのち23歳で名誉除隊。3年間のブランクがあって1976年5月にタクシー会社に応募したことになる。

 

ベトナム戦争帰還兵トラヴィス

03_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 

 主人公トラヴィス・ヴィックルは不眠症であった。眠れない日々を過ごす彼は、夜勤のタクシーの仕事に応募する。タクシー会社に入ったトラヴィスは自身の経歴について語る。学歴について触れられると口ごもるトラヴィス。察したタクシー会社の採用担当者は軍歴を訊く。海兵隊出身。1973年5月名誉除隊。華々しい軍歴である。

 名誉除隊とは、米軍においておおむね勤務態度良好であり、軍法会議や民事訴訟の対象にならなかった隊員が除隊する際に対象にとなる。米国では軍人の社会的評価は非常に高く、名誉除隊証明書を持つことは再就職等に有利となる。

 トラヴィスの名誉除隊は1973年5月となっており、ここからベトナム戦争に従軍していたことが分かる。このベトナム戦争とは米国で一番人気のない戦争であり、それまでの戦争の帰還兵が英雄として扱われていたのに対して、ベトナム戦争帰還兵には英雄どころか「ベビーキラー」等の心無い言葉まで投げかけられることもあった。このためなのかは分からないが、トラヴィスにはタクシードライバーという最底辺の仕事しか得ることは出来ず、それも採用担当者が同じ海兵隊出身であったから優遇された結果であった。

 

ベツィに恋をする

 ベトナム戦争で心を病んだトラヴィスの目には荒んだ街が写る。そして誰からも認められない自分自身。重くのしかかる孤独感。仕事が終わったトラヴィスはそれらを忘れるために酒を飲みポルノ映画に通う日々。そこに転機が訪れる。大統領候補のボランティアとして活動している美しい女性ベツィ。ただ見とれているだけのトラヴィスであったが、ある日、勇気を出してベツィに声をかけた。

 デートに応じてくれたベツィであったが、トラヴィスはこともあろうにベツィをポルノ映画に誘ってしまう。当然、ベツィには嫌われ再び孤独感に苛(さいな)まれるトラヴィスであった。トラヴィスの孤独感、社会のためにこの世界を浄化しなければならないという使命感、そしてそれを出来るのは自分しかいないとの思い込み。そしてベツィが応援する大統領候補パランタインのテレビインタビューを見たトラヴィスは行動を決意する。そう、自分こそがこの世界の悪を駆逐する正義のヒーローなのだ。

 

目的を見つけたトラヴィス

 銃を購入するトラヴィス。そして除隊以来の鈍り切っていた身体を鍛え直す激しいトレーニングを開始する。そんな時、トラヴィスはアイリスという売春をしている12歳の少女に出会う。本気で更生を薦めるトラヴィスに対して心を動かされるアイリスであったが、スポーツとあだ名されるヒモ男に心を奪われているため決心がつかない。

 そんな中、トラヴィスはいよいよ社会の「浄化」を決意する。ターゲットは大統領候補パランタイン。モヒカン頭にしたトラヴィスは大統領候補の暗殺を企てるがシークレットサービスにより阻止されてしまう。しかしトラヴィスはその後、もう一つの「浄化」を決行する。それはアイリスの救出であった。売春宿に突入したトラヴィスはアイリスのヒモ男スポーツを射殺、反撃をされながらも売春宿の「悪人」全員の射殺に成功する。

 命を賭けて少女を救出したトラヴィスはヒーローとしてメディアに取り上げられ、その記事を読んだベツィもトラヴィスを見直した。望み通りヒーローとなったトラヴィスは再びタクシードライバーとして夜の街を走るのだった。

 

結局、この映画は何が言いたいのさ。。。解説すると

 

04_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 この『タクシードライバー』意外に正義のために戦ったヒーローの話ととられることが多いがもちろんそんな話ではない。トラヴィスは不眠症。ベトナム戦争で心の傷を負った男で朦朧とした世界の中を生きていた。冒頭の蒸気の中を彷徨うタクシー、そしてトラヴィスが車から見ている街が雨で全て歪んで見えるのはこれを表している。タクシー会社に入る際、トラヴィスが蒸気の中から現れているのもその朦朧とした世界から現実の世界に現れていることを表現している。

 

トラヴィスの価値観

 「正義のヒーロー」であるトラヴィス。そのトラヴィスの「正義」とはどんなものなのだろうか。まず、映画の最初でトラヴィスの内面の声で「売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬売人 すべて悪だ」と語られる。売春婦やヤクザ、麻薬の売人と一緒にホモ、オカマも悪であると考えているのが分かる。さらに同じく内面の声で「黒人を乗せない奴もいるが、俺は平気だ。と語っている。平気というのは、つまり「黒人が嫌いだけど乗せられる」という意味だ。決して黒人に対して好意を持っている訳ではない。これが良く分かるのはトラヴィスの黒人を見る時の目つきである。

 トラヴィスが黒人を見る時、その目は悪意に満ちている。冒頭のタクシー会社での面接の際に鏡に映っている黒人を見た時、食堂で近くに座っている黒人を見た時、さらにドライバー仲間の黒人に対しての目つきではっきりと黒人に対して悪意を持っているのが分かる。この悪意は、映画の中盤でトラヴィスが黒人の強盗(コソ泥)に遭遇した際、何の躊躇もなく黒人の頭を撃ち抜くという行動が証明している。因みにトラヴィスが殺害したのは売春宿の3人以外にはこの黒人だけである。

 

トラヴィスと女

 これらからも分かるようにトラヴィスの価値観はたいぶ歪んでいる。もちろんその「正義」というのも世間の正義とはだいぶ違う。この「正義のヒーロー」トラヴィス。映画の序盤で大統領候補パランタインの事務所で働くベツィに恋心を抱く。デートに誘うことに成功するが、自分がいつもみているお気に入りのポルノ映画を見せ、ベツィに嫌われると選挙事務所まで押しかけてベツィに罵詈雑言を浴びせかける。

 要するにトラヴィスという男は自分の価値観を人に押し付ける。そしてそれが断られるとブチ切れるというかなりヤヴァい奴なのだ。そのトラヴィス、ベツィに振られてからは歪んだ正義感がさく裂する。偶然タクシーに乗り込んだ妻を殺すと豪語する客(スコセッシ監督本人)から44マグナムで女性を殺すという知恵を付けられ、トラビスの頭の中は徐々にベツィに対する復讐で溢れていく。

 

なぜ大統領候補を暗殺しようとしたのか

 しかしまだ理性が働いているトラヴィスはタクシー仲間の先輩に相談する。しかし先輩は有効な解決法を提示することは出来ない。とうとう理性での制御不能となったトラヴィスはついにパランタイン議員の暗殺を企てるが結果は失敗。だが、ここで一つの疑問が出る。掃きだめみたいな街に嫌悪感を抱いていたトラヴィス。正義のヒーローとしての行動の一発目がなぜパランタイン議員の殺害なのだろうか。

 パランタイン議員は劇中で決してネガティブな描き方はされていない。むしろ偉ぶらずタクシーを利用するという庶民派大統領候補である。そのタクシーの運ちゃんトラヴィスに対してもアメリカの問題点について質問、口ごもるトラヴィスに対して「何かあるはずだ」と本心を引き出そうとしてその言葉に真摯に耳を傾ける誠実な人物である。トラヴィスが暗殺の対象にする理由はどこにもない。

 ではなぜ暗殺しようとしたのか。これはパランタイン議員が最初に登場したシーンにヒントがある。最初に登場したのは本人ではなくベツィと同僚トムとの会話のシーンである。ベツィがパランタイン議員について話す際、「情熱的でセクシー・・・」とうっとりした顔で話している。これは当然だ。ベツィはボランティアをしてまでパランタイン議員に大統領になって欲しい。つまりはパランタイン議員に惚れ込んでいるのだ。

 これに対してベツィに嫌われてしまったトラヴィス。可愛さ余って憎さ百倍。トラヴィスは自分を受け入れてくれないベツィに復讐を決意する。しかし攻撃の矛先が直接ベツィに向かうことはなかった。これはトラヴィスが両親に宛てた手紙でベツィと交際していると書いていることからも分かるようにトラヴィスはベツィに対する想いを捨てきれていない。ベツィの大切な男を殺す。これがトラヴィスのベツィに対する復讐なのだ。

 

アイリスの救出が目的ではない

 要するにトラヴィスは社会を良くするためや街を浄化するのが目的なのではなく、単に自分を愛してくれなかった女に復讐しているだけなのだ。これはアイリス救出でも同様のことがいえる。トラヴィスが思いを寄せたもう一人の女性アイリス。自分の正義を絶対視するトラヴィスはアイリスに更生を促すものの、アイリスはスポーツに惚れているため自分の言うことをきかない。孤独感に苛まれるトラヴィスはまたしても女性に「裏切られた」のだ。

 孤独と自分の愛を受け入れてくれなかった女達に対してトラヴィスは正義の名の下に売春宿に殴り込みをかける。まずはアイリスが愛している男であるスポーツを射殺。売春宿にいる関係者を片っ端から撃ち殺しているが、特にスポーツに対しては死体に対して何発も銃弾を撃ち込んでいる。そして近くで震えているアイリスには見向きもせずに自殺を図る。

 何故アイリスには見向きもしないのか。もしアイリスの救出が目的であれば、敵を殺したらすぐにアイリスを保護するのが自然である。アイリスも救出を望んでいるのであれば、救出しにきたトラヴィスに対して好意的な態度をとるはずだ。しかしアイリスはトラヴィスに向かって「撃たないで!」と叫んで怯えており、トラヴィスもアイリスを気にする様子はない。そしてトラヴィスはアイリスのことを全く気にせずに拾った拳銃で自分の頭を撃つ。

 つまりはトラヴィスの殴り込みというのはアイリスの愛した男であるスポーツの殺害が目的だったからだ。目的を達成したトラヴィスは「目的外」のアイリスには見向きもしない。そしてすべてのミッションを終えたトラヴィスは気が付く。自分の行動が正義ではないことに。それどころか自分のやった行動は単に振られた女の惚れた男を殺しただけである。悪は自分自身であった。このため「正義のヒーロー」トラヴィスは悪を消し去るために自分自身に向けて引き金を引いた。

 

鏡に映ったもう一人の自分

05_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 この映画は人間の表の顔と裏の狂気の顔という二面性について描いている。自分の中にいるもう一人の自分。この映画で注目したい点は「鏡に映っているもう一人のトラヴィス」である。この映画ではドッペルゲンガーのように「鏡に映ったもう一人のトラヴィス」が徐々にトラヴィスに近づいてくる。

 最初に鏡が登場するのはタクシー会社の室内である。そこに写っているのは口論をする従業員とそれを笑いながら見ている女性従業員のみであった。ここにトラヴィスは写っていない。次に出て来る鏡はトラヴィスの部屋の中をカメラがパーンする時である。トラヴィスは日記を書いている。この時、鏡には日記を書くトラヴィスの後ろ姿が写っている。しかしこの時の「鏡の中のトラヴィス」はまだ後ろ姿で下を向いていた。写ったのも一瞬である。

 正面を向いた「鏡の中のトラビス」が登場し出すのは、アイリスがヒモ男スポーツに連れ去れる場面からである。そして妻を44マグナムで殺すと豪語する男を乗せた際には、妻の殺し方を延々と語るその男が乗るタクシーのバックミラーには「鏡の中のトラヴィス」がじっとこちらを見つめて話を聴いている。狂人と判断して冷静に対応しようとするトラヴィス。その男の話にじっと聴き入る「鏡の中のトラヴィス」。二人のトラヴィスが葛藤を始める。

 だが、ベツィに振られ先輩のアドバイスも役に立たなかったトラヴィスは徐々に孤独、怒り、何かをしなくてはという焦りが強くなっていく。銃を購入して「正義の戦い」を決意するトラヴィス。「鏡の中のトラヴィス」はとうとうトラヴィスに話しかけて来るようになった「誰に話しているんだ?」「俺しかおらん」。「鏡の中のトラヴィス」がどんどんトラヴィスを侵食してきているのだ。

 そして完全に「鏡の中のトラヴィス」に浸食されたトラヴィスは行動を起こす。結果、意外にもヒーローとなってしまった。そして狂気の「鏡の中のトラヴィス」は消え、トラヴィスは再びタクシードライバーとして街を徘徊する。

 

その後のトラヴィス

 売春宿襲撃後、自殺に失敗したトラヴィスに意外なことが起こった。昏睡状態から覚めた彼は少女をマフィアから命がけで救出したヒーローになっていたのだ。アイリスは親元に帰り学校に通うようになり両親からは感謝の手紙が届いた。新聞はトラヴィスをヒーローと称えた。これこそトラヴィスが望んでいたことだった。犯行後は、自分を悪と思い自殺を図ったトラヴィスであったが、社会の称賛により自身の行動が正義であったと確信する。自身の新聞記事をスクラップにしてアイリスの両親の手紙とともに誇らしく部屋の壁に貼り付けたトラヴィスは、社会から認知されたことにより孤独も感じなくなった。

 満たされたトラヴィスはタクシーの仲間と共に生き生きと仕事をするようになった。そんな時、トラヴィスはある客を乗せる。それはかつて自分が愛した人、ベツィであった。バックミラーに写るベツィ、トラヴィスが愛し、そして傷付けてしまった女性ベツィ。新聞記事を読んで復縁を望んでいるだろうベツィに対してトラヴィスはタクシーのメーターを戻して笑顔で去っていく。

 トラヴィスは成長した。人に感謝され英雄になることで承認欲求を満たしたトラヴィス。傷つけてしまったベツィと付き合う資格はないし、同時にもうベツィにすがることもない。メーターを戻し美しい夜の街を走るトラヴィス。その刹那、バックミラーにトラヴィスが写る。消えたはずの「鏡の中のトラヴィス」。彼はその後もずっとトラヴィスに付いてきているのだ。

 

登場する銃器等

 

S&WM29

06_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 S&W社が1955年に発表した当時世界最強のカートリッジ44マグナムを使用する大型拳銃。本来は狩猟用に使用することを想定して開発したと思われるが、「最強のカートリッジ」のインパクトの強さにより映画『ダーティーハリー』で主人公の愛銃となった。これで一躍有名になった本銃である。『タクシードライバー』が公開された1976年末には『ダーティーハリー3』が公開されている。

 劇中では売春宿の料金徴収係の何も悪いことをしていないおじさんの手を吹き飛ばしたあと、反撃してきたスポーツにも一発お見舞いしている。2発発射したのみ。ハリーキャラハン刑事よりもトラヴィスの使用目的の方が明らかにダーティーである。武器商人アンディからは350ドルで購入。トラヴィスの一週間分の給料だ。さらに胡散臭いメキシコ製手作りホルスターを40ドルで買わされている。

 

 

S&Wチーフスペシャル

07_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 劇中ではスクエアバットのパールグリップが装着されたニッケルメッキモデルを使用しているが、射撃場のシーンではコルトディテクティブに代わっている。S&Wチーフスペシャルは、1950年に発売された重量わずか554g、装弾数5発の38口径のリボルバーであった。当時、38口径でこの大きさのリボルバーは例が無く衝撃的な銃であった。

 武器商人が「一日中ハンマー代わりに釘を打っても精度は変わらん」と言っているが、精密機械なのでそういう使用法は避けた方が賢明。劇中ではスポーツに向けて発射したのち追いかけて来る料金徴収係のおじさんをハンマー代わりに叩いた。全弾撃ちきっていたため精度がどうなったのかは不明。素敵な武器商人アンディからは250ドルで購入。

 

 

ワルサーPP

08_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 ドイツワルサー社製の中型拳銃で380ACPと威力は低いものの、小型で当時としては先進的な機構であったため以降、多くの銃の参考となった。ストレートブローバックのため反動は強い。劇中では武器商人が将校専用に支給されたというようなことを言っている。強盗に向けて発射したのち商店のおっちゃんに回収された。トラヴィスは銃の携行許可証を持っていなかったが、商店のおっちゃんがその後うまくやってくれた。劇中ではほぼアストラコンスターブルになっている。スマートなビジネスマン風武器商人アンディからは150ドルで購入。

 

 

コルト25

 一応、コルト25となっているが、実際はS&WM61エスコート。エスコートはS&Wが1970年に開発した護身用のハンドガンで口径は25口径、装弾数5発である。劇中ではトラヴィスの右腕のレールに装着されて使用された。トラヴィスによって腕を振ると銃が飛び出すというほとんど実用性のないギミックを与えられた。

 しかし全く実用性がないと思いきや襲撃時に急にドアが開き売春宿のボス(?)に発砲された際に腕を振り飛び出した本銃により危機を回避。その人は25口径ACP弾を顔にたくさん貰って他界。いい銃は人を見て売るというポリシーを持っている闇の武器商人アンディからは125ドルで購入。

 

まとめ

 

 映画『タクシードライバー』は車の窓から見える夜景で終わる。その夜景はバックミラーに反射して半分は逆方向に流れているように見える。夜の街とそこを歩く人々。美しい夜景を歩く人々の中にも「鏡の中のトラヴィス」はいる。この映像はそれを暗示しているのかもしれない。非常にメッセージ性の強い映画で、蒸気や曇ったガラス、鏡等の他にも冒頭でタクシーの配車をするおじさんが長々と映されていたりと各所にメタファーがあるのでその意味を考えてみるのも面白い。

 余談ではあるが、この映画内での日付。日記の最初の日付が5月10日でベツィと喫茶店に行ったのが5月26日、戦いを決意するのが6月8日で決行したのが7月。実は2ヶ月程度の間の出来事なのである。それはともかく真剣に観るとかなり破壊力のある映画であるため気軽に人に勧めることはできないが、機会があれば一度観てみるのも良いだろう。但し、トラヴィスがベツィをポルノ映画に連れて行って嫌われたように女性にこの映画を薦めると十中八九嫌われる。リアルトラヴィスにならないように気を付けたいところだ。

 

 


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03_S&WM29
(画像はwikipediaより転載)

 

『戦国魔人ゴーショーグン』とは

 

 『戦国魔人ゴーショーグン』とは1981年に放送されたアニメーションで全26話の巨大ロボットアニメである。主人公は10歳の少年ケン太で父親はケン太の乗る巨大ロボ、要塞の設計者という古典的な設定である(『機動戦士ガンダム』も同様の設定)。ストーリーは王道で悪の秘密結社ドクーガが地球を侵略、これに対して主人公ケン太とその仲間達は地球を守るために父親の建造した高性能兵器で戦うというものである。

 登場人物は個性的でそれぞれ暗い過去を持っているという子供向けアニメだがちょっと毛色の違うものであった。設定のモチーフは何と大坂の陣である。ケン太の苗字は真田であり、主人公たちの拠点はグッドサンダー号、これは真田幸村が蟄居した九度山をもじったもの、悪の秘密結社ドクーガは徳川である。

 

スピンオフ作品『時の異邦人』

 

 実はこのアニメ、私はリアルタイムでは見ていないし、実は全話見ていない。面白いのはその番外編『戦国魔人ゴーショーグンー時の異邦人―』なのである。これは本編の戦いが終わって40年後という設定である。主人公はレミー島田、ゴーショーグンチームの紅一点である。そのレミー島田は車で移動中に事件に巻き込まれ負傷、担ぎ込まれた病院で全身を病魔に侵されていることが分かる。

 生と死の狭間の意識の中でレミー島田は幼少期の自分のトラウマ、精神世界での仲間達との旅、そして不思議な街での運命との戦いをする。現実世界では中年となったかつての仲間達が集まりレミー島田を助けるためにあらゆる手段を尽くす。

 ストーリーは何度も観ればわかるが初見ではなかなか分かりにくい。ストーリーは三つの世界の中で進んでいく。現実のレミーの世界、レミーの幻覚の中の世界、レミーのトラウマの世界でレミーの三つの世界が交錯するというもの。明るく気丈なレミー、実は母親は売春婦で孤独の中で生きてきたことも徐々にわかってくるなど物語は意外と深い。

 本編ではレーザーガンのようなもので銃撃戦をやっていたり、巨大ロボで敵と戦う等のやんちゃをしていたゴーショーグンチームだが、『時の異邦人』では違う。すべて現用銃を使用する。そしてレミーの三つの世界の一つ、レミーの幻覚の世界でレミーが愛用しているのがM29なのだ。

 

作中に登場するS&WM29

 

 M29の中でも銃身が6.5インチあると推定されることから、多分M29‐2。プレートにはシルバーのメダリオンが付いている。グリップはS&W純正木製グリップ、使用する弾丸は重量不明のシルバーチップ。ホルスターはヒップタイプでガンベルトには革製弾薬ケースがあり、レミーはそこに44マグナムのバラ弾を入れている。

 私が今まで見たアニメの中でこれほどM29の良さを描いたものはない。レミー一行が安宿に泊まる。化粧台に無造作に置かれたM29とシルバーチップ。M29は威力も強いが反動もすごい。実はレミーの腕はM29の反動にやられてしまっている。激痛を堪えてM29を撃つレミー、途中ではとうとう血が噴き出してしまう。そして徐々に弾丸は減っていく。M29の存在感、44マグナムの威力を良く表現している。

 

まとめ

 

 もう今では忘れ去られている劇場用アニメであるが、人の内面や「生きる」ということを真正面に捉えた作品である。演出手法としても現在と過去、そして幻覚の世界と三つの世界が交差するのが面白い。主人公達も本編の戦いから40年を経ているため70歳を超えているはずなのに40代にしかみえない謎等、細かい設定も調べると面白い。私としては何よりS&WM29の重厚さが表現されているのが一番の魅力なのだが。

 

 

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はじめに

 

 S&WM29とはS&W社が1956年に発表した大型リボルバーで専用に開発された44マグナム弾を使用する当時としては世界最強のリボルバーであった。現在ではさらに大型のカートリッジが登場したため世界最強ではなくなってしまったがハンターのサイドアーム等には重宝されている。

 

 

傑作M29モデルガン

 

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 アメリカで人気が出れば日本でも人気が出るのがモデルガン業界。M29は多くのメーカーでモデルアップされてきた。しかし作動を優先させるために外観や構造がディフォルメされていたりと中々ベストと呼べるモデルはなかった。このモデルガンM29の中で特に完成度が高かったのは今は無き東京CMCの金属製M29であった。

 1976年に発売されたCMC製M29は完成度が非常に高く発売以来高い評価を得ていたのに対して、コクサイが前年に発売したM29はMGCのコピー品といわれるもので完成度の高さも今ひとつであったが、1985年にリニューアル発売したM29はCMCに匹敵する完成度の高さを持った傑作モデルとなった。そして翌年にはコルトパイソンもリニューアル、完成度の高さから「リボルバーのコクサイ」と呼ばれるようになった。

 

リボルバーのコクサイ

 

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 私が本モデルを購入したのは1990年であったと思う。当時のM29は後期のようにバフ掛けした後に金メッキを施した仕上げのものではなく、ニッケルメッキで表面仕上げも荒かった。カートも後期にはフルサイズカートになったが、この時期はまだ外発火式のスモールカートであった。それでも弾頭部には銅メッキが施されており、底部には刻印が打たれている等精いっぱい凝ったものであった。

 内部構造も実銃を参考に正確に再現しており、翌年発売されたパイソンが内部構造を正確に再現したために作動不良を起こしてしまったのに対してM29は作動も確実であった。CMCのM29が生産中止になったのに対してコクサイ製M29は長く入手が可能であり、2000年頃にタナカワークスが新規金型でM29モデルガンを発売したことにより若干古さが気になるようにはなったが、長くモデルガンM29の定番モデルの一つであった。

 

1985年版初期モデル

 

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 私が購入したM29はオリジナルのプラ製グリップからモデルワークスグレネード製とんかちグリップに変更している。現在はver.2.0であるが、私が購入したのは最初期のver1.0である。これはタナカワークス製M29用のグリップであったが、コクサイ製M29は再現性が高いため多少の加工で装着することが出来た。このとんかちグリップとは米ドラマ『俺がハマーだ!』にの主人公スレッジ・ハマー刑事が愛用しているM629に装着されているグリップを再現したもので、私は本ドラマが大好きであったため購入した。

 このM29、現在ではコクサイが廃業してしまったため入手することは困難で、特に80年代、90年代製のものは中古市場でも中々見つけることができない。この初期のM29は後期型に比べて表面仕上げが雑であり、カートもスモールサイズであるがニッケルメッキの上に黄色を着色したモデルは金メッキに比べてリアリティがあり、こちらを好む人も多い。

 

さいごに

 

 現在ではタナカワークスが非常に完成度の高いM29を発売しているが6インチモデルは発売されておらず、この一点において未だにコクサイ製がリードしている。このコクサイ製M29を含め、コクサイの完成度の高いモデル、どこかの会社が金型を買い取って再生産してくれないかと願っているのだが残念ながらそういう話は聞かない。

 


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