
(画像はwikipediaより転載)
桑原製軽便拳銃
動画は二十六年式拳銃。桑原製軽便拳銃も大体こんな感じ。
性能
全長 150mm
重量 375g
口径 32口径
使用弾薬 32口径
装弾数 6発
総生産数 -
販売 1894年
設計・開発 桑原鉄砲店
明治日本軍の制式拳銃
日本軍のハンドガン、拳銃は、明治初期にS&WNo3を輸入、一番形として制式採用したことに始まる。No3自体は非常に高性能なリボルバーで口径は44口径でトップブレイク方式であった。このトップブレイク方式とは、銃身とフレームに蝶番のような結節部があり、銃身を下方に「折る」と銃身部と一体化したシリンダーが上面にでる方式で、それまで一般的であったシリンダーを抜き取って再装填する銃に比べて格段に再装填のスピードが早くなった。この方式を採用したためシリンダー内の弾薬を全弾撃ち終わったのちの再装填も容易であった。このためロシア軍、トルコ軍、米軍などが制式採用、有名な保安官ワイアットアープも愛用したとされるほどでこれに目を付けた日本軍も陸海軍共に採用した。しかしこのNo3、問題が全くなかったのかといえばそうでもない。特に当時の日本人にとって何より問題だったのは重量であった。
No3の重量は何と1.3kg、現在よりもはるかに小柄であった当時の日本人にとってこの重量はかなりの負担であった。このため日本人にあったリボルバーをということで開発されたのが二十六年式拳銃である。この二十六年式拳銃は見た目こそ凡庸というか、何ともチープな感じがするのだが性能は当時としては中々のものであった。何よりもNo3が射撃ごとにハンマーをコッキングして引き金を引くというシングルアクションであったのに対して二十六年式拳銃は引き金を引くだけで連動してハンマーがコッキングされるというダブルアクションで連射ができるのというのは大きいメリットであった。口径9mmで威力は驚くほど低いのだが、重量は928gと1kgを切り、トップブレイク方式でサイドプレートが外せるなどメンテナンス性も良好であった。
二十六年式拳銃の改良
この二十六年式拳銃をベースにして東京の桑原銃砲店が開発したのが桑原製軽便拳銃である。軽便の名の通り、重量は二十六年式拳銃に比べて半分以下の375gであり、さらには二十六年式拳銃がダブルアクションのみであったのに対してシングルアクションでの射撃も出来るようになっている。装弾数も二十六年式拳銃と同じく6発であった。護身用としては軽量でダブルアクション、シングルアクションどちらにも対応した非常に取り回しの良い銃であった。
シングルアクションに対応したことからハンマーにスパー(ハンマーをコッキングするために指を掛ける部分)が追加され、仕上げは二十六年式拳銃のブルーに対してニッケルメッキ、機関部にも錆止め処理が施されており、グリップは水牛の角を使用していた。値段も二十六年式拳銃が22円であったのに対して15円とかなり割安に設定されており、近衛師団が多数装備していたようだ。
このように書くと二十六年式拳銃に比べて全てが高性能のように感じるかもしれないが、本銃最大の欠点は威力が低いことにある。二十六年式拳銃の口径が38口径(9mm)であるのに対して本銃の口径は32口径(8mm)と小口径化している。38口径も32口径も現在でも使用されている口径ではあるが、当時の38口径、32口径は現在のカートリッジに比べて長さが短く、内部にも防湿のため厚紙が挟んであるなどしていたため火薬の装薬量が少なかった。その上、二十六年式拳銃は意図的に銃身のライフリングと呼ばれる弾丸に回転を与えて飛距離を伸ばす溝を大型化、そこから発射時のガスが抜けるようになっている。
問題は低威力か
この構造にした意図は不明であるが、恐らく前方にガスを逃がすことで発射時の反動を抑制することができるために撃ちやすくするのと同時に銃本体へのダメージも減少させることが狙いであったのだろう。しかし発射時に弾丸を押し出すガスがライフリングの隙間から逃げてしまうために弾丸の威力は低下してしまうのだ。これは二十六年式拳銃の話であるが、この二十六年式拳銃をベースにした桑原製軽便拳銃も恐らく同様の構造を持っていたのだろうと考えると、低威力の二十六年式拳銃をさらに小口径化した桑原製軽便拳銃の威力は推して知るべしというところだろう。
ただし、護身用として考えれば威力は低くても小型軽量で取り回しが良いよい拳銃であったのかもしれない。総生産数は不明であるが、制式採用された銃ではないのでそれほど多くが出回っていたとも考えられない。弾は100発で2円で二十六年式拳銃の9mm弾が3円であったのに比べて30%ほど割安である。単純に当てはめることはできないが当時の1円は現在の2万円程度になるらしいので、桑原製軽便拳銃の弾丸は100発で40,000万円、1発400円とかなり高価である。
トイガン
ガスガンでは確実にモデルアップされていない。恐らくモデルガンでもモデルアップはされていないだろう。しかし二十六年式拳銃であればマニアックな製品をモデルアップすることで有名な(私の中で)HWSから精巧なモデルガンが発売されている。よくもまあモデルアップしたものだと思う。完成度は非常に高いが生産数が少なくたまにしか再生産しないので欲しい人はあった時に買っておくのがベスト。これはモデルガン全般にいえることでもあるのだが。
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