01_零戦32型
(零戦32型 画像はwikipediaより転載)

 

零式艦上戦闘機

 

 零式艦上戦闘機とは1937年に開発開始、1940年に制式採用された日本海軍の艦上戦闘機である。日中戦争で実戦に投入されたがあまりに高性能であったために後継機の開発が遅れ、結局、太平洋戦争末期まで使用されることになってしまった。防弾装備や強度に問題もあったが、傑作機であることには間違いない。総生産数は10,000機以上であるため、多くのバリエーションがある。

 

 

32型

 

 

栄21型エンジンを使ってみる

 1941年、零戦に搭載されている栄12型エンジンのパワーアップ版である栄21型エンジンが開発された。この栄21型エンジンは栄12型エンジンが940馬力だったのに対して1130馬力と大幅に馬力がアップ、さらに二速過給器を装備したエンジンであった。1941年6月、この栄21型エンジンの完成を受け、このエンジンを搭載する零戦、A6M3の設計が開始されることになった。しかし大変残念なことに、この設計をする頃にはちょうど堀越技師は病気になってしまったため、この零戦32型は一式陸攻の設計でお馴染みの本庄季郎技師によって設計された。

 栄12型に対して栄21型は外径こそ変わらなかったものの、全長が約16cm、重量が60kg増加したために機体の重量バランスを変更することが必要となった。このため防火壁を185mm後退、胴体も21型よりも短く設計し直されたが、エンジンの全長が長くなり、胴体が短くなったので結局、機体の全長は21型と変わらなくなっている。見た目は同じでもエンジンの交換は意外と大変なのだ。

 21型との外見上の最大の違いは翼端で21型の両翼端をそれぞれ50cmずつ切落している。のちに登場する52型のように丸く綺麗に整形することもなく、ぶった切ったような角形になっている。素人からすると「50cmくらいなんじゃーい!」と思うかもしれないが、零戦はねじり下げ翼という主翼の角度が翼端に行くほど少しずつ変化していくという微妙な構造になっているので、空気の流れ等が変わってしまい大変なのだ。

 しかしそこは名設計者本庄技師!うまく修正した結果、旋回性能は下がったものの、横の操縦性が改善、速度が若干向上する上に補助翼の利きも良くなり急降下制限速度も40km/h近く増大、おまけに生産性まで向上するといういいこと尽くめの結果が出た。しかし病気から戻った零戦の生みの親堀越技師。やっと病気が治ったと思ったら、目の前にあるのは翼端をぶった切られて変わり果てた零戦。。。かなりムカついたようだ(本庄P63)。

 

燃料入れる場所が減っちゃった(*´∀`*)エヘ!

02_零戦32型
(零戦32型 画像はwikipediaより転載)

 

 この設計変更をしたため、胴体燃料タンクの収納スペースが減少、そもそも21型では145L入る胴体燃料タンクが32型では何と60Lに減ってしまった。代わりに翼内燃料タンクの容量を190から210Lに増やしたものの、合計搭載量は21型525Lに対して32型は480Lと45Lも少なくなってしまった。

 武装は、九七式7.7mm機銃2丁、九九式一号銃二型2丁で装弾数は各100発で、大型のドラム弾倉を使用するため翼から少し弾倉が出てしまっている。エンジンがパワーアップしたため最高速度は21型の533km/hに対して544km/hと11km/h向上したものの航続距離は、21型の全力30分+2,530kmに対して、32型は全力30分+2134kmに減少してしまった。このため生産中に設計変更を行い後期型からは翼内燃料タンクを210Lから220Lに変更している。この翼内燃料タンクが増量された32型は後期生産型152機で、試作機含め191機は210L燃料タンクモデルである。

 開発計画開始からわずか1ヶ月後の1941年7月14日には初飛行、零式二号艦上戦闘機として制式採用された。生産したのは三菱のみで、1942年6月から始まり、12月まで生産が続けられた。総生産数は試作機3機と量産機340機の合計343機である。

 戦列に加わったのは1942年6月以降で以降、各部隊に配備されたが、米軍は当初、零戦とは別の機体と認識していたようで、零戦のコードネームZEKEに対して32型はHAMPと別のコードネームが与えられている。この速度と上昇力が向上した代わりに旋回性能が犠牲になっている32型の評価は分かれていたがそれまで21型の旋回性能に慣れていた搭乗員にはあまり評判は良くなかったようだが、逆に海兵69期出身の梅村武士氏のように一番好きだったという評価もある(梅村P86)。この32型の実戦配備は1942年7月、台南空に配備されたのが最初だったようだ(松崎P50)。

 

 

22型

 

やっぱ翼戻すし燃料タンクも増設したれー!

03_零戦22型
(零戦22型 画像はwikipediaより転載)

 

 しかし空戦性能はともかく、32型の最大の問題は航続距離が短くなってしまったということだった。特に米軍がガダルカナル島上陸した8月以降、海軍航空隊が長距離を飛行してガダルカナル島に攻撃をかけるようになってからは、32型の航続距離は問題視されるようになった。このため翼幅を再び50cm延長して40L翼内燃料タンクを左右に増設した22型が開発された。これによって燃料搭載量は580Lとこれまでの零戦中最大となり、航続距離も全力30分+2,560kmと21型も超えるものとなった。

 速度は32型の544km/hに比べ541km/hと若干低下したものの、21型よりも8km/hほど速く、航続距離もこれまでの零戦中最長、旋回性能も良いことから32型の不評は解消したようである。操縦練習生28期のベテラン搭乗員であった羽切松雄元中尉に至ってはこの22型が一番好きであったとまで言っている(神立P78)。この22型は1942年秋に一号機が完成、1943年1月29日に制式採用された。生産は制式採用に先立った1942年12月に開始されており、1943年7月まで行われた。この22型は、1943年5月、再編成のために日本本土に帰還した台南空(251空)がラバウルに再進出する際に装備していたそうだ(大島P463)。総生産数は560機であった。

 

武装強化型

 この零戦32・22型が開発、生産されているちょうどその時期、零戦試作機から搭載されていた20mm機銃の改良型九九式二号機銃が制式採用された。この二号銃は一号銃の銃身を延長して初速と命中精度を高めたもので二号銃三型は、1942年7月22日に制式採用されている。この二号銃三型を搭載した22型は22型甲と呼称されている。さらに少数ではあるが、32型にも同機銃を装備した機体もあり、こちらは32型甲と呼称されていたという。

 

〇〇型という呼称

04_零戦22型
(零戦22型 画像はwikipediaより転載)

 

 今回の記事を読んでいて不思議に思った方はいないだろうか。零戦21型の次のモデルの名称が32型、その次が22型と、つまり「順番逆じゃね?」ということだ。どうしてこの順番通りに行かない変な名称になってしまうのか簡単に説明してみよう。

 零戦に限らず、海軍の航空機には全て零戦11型、21型、32型、22型というように二桁の番号で機体のバージョンを表している。ご存知の方も多いかもしれないが、この規則についてちょっと書いてみたい。この二桁の番号は機体とエンジンのバージョンを表し、下一桁がエンジン、二桁が機体のバージョンを表している。例えば、新型機ができると機体もエンジンも初期モデルなのでどちらも「1」なので11型となる。

 そして数年後、例えば零戦11型の翼端を50cm折り畳めるようにしたとする。すると機体はバージョンが変わったので二桁目は「2」となる。しかし、エンジンは変更されていないので下一桁は1のまま、つまり21型となるのだ。そしてこの21型の機体もエンジンも変更したのが32型で、機体は「2」から「3」へ変更、それまで「1」だったエンジンも「2」に変更され32型となったのだ。

 そしてその32型も作ってはみたものの翼の形状はやはり元のままが良いということで翼の形状を戻したため32型が22型となってしまった。このような流れで11型→21型→32型→22型という順番になってしまったのだ。

 

22型って翼内タンク増設されてね?

05_九九式機銃
(上が九九式一号機銃 下が二号機銃 画像はwikipediaより転載)

 

 しかしこの変更、厳密には外見上は同じでも21型にはなかった翼内燃料タンクを増設しているので完全に以前の型に戻った訳ではない。32型の機体をさらに変更して燃料タンクを増設、翼の形状も変更しているので、本来なら42型と言ってもいいかもしれない。どうして22型となったのかの理由は不明であるが、「42は「死に番」だし、外見上は21型と同じだし、まあ、いいんじゃね?」というくらいのものだったのだろうか。

 それと武装によってもまた名称が変わる。武装が初期から変更されると、今度は名称の最後に「甲乙丙丁・・・」という十干が付くようになる。今回の記事だと、22型の機銃が九九式一号銃二型から九九式二号銃三型に変更された機体は22型甲となるのだ。これを知っていて社会で役に立つことは一切無いが覚えておくと良いだろう。

 

参考文献

  1. 秋本実『日本軍用機航空戦全史05』
  2. 本庄季郎「中攻・零戦と零観」『海鷲の航跡』
  3. 梅村武士「わが愛しき駿馬”三二型”防空戦交友録」『「空の少年兵」最後の雷撃隊』
  4. 松崎敏彦「私が開発した「栄」エンジンの秘密」伝承零戦2
  5. 神立尚紀『ゼロファイター列伝』
  6. 大島基邦「”ラバウル整備隊”徹宵日誌」伝承零戦2

 

 


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