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志賀淑雄

 

 以前、私が零戦搭乗員に興味を持ったいきさつを書いたが、私が零戦搭乗員に興味を持ち、夢中になって著書や研究家の著作を集めていた最も旬な時期は1995年前後であった。その当時は、終戦50年ということもあり、坂井三郎氏を始め、宮崎勇氏、杉野計雄氏、川戸正次郎氏等が相次いで自伝的な記録を出版していた。

 今考えるとファンとしてはかなり恵まれた時代だったといえるが、それでも著名な零戦搭乗員でありながら一切表に出てこない人達も多かった。そこに登場したのが神立尚紀『零戦の20世紀』だった。著者は今まで取材に応じなかった(だろう)零戦搭乗員の貴重な記録を上梓したのだ。

 その著者が近年新たに上梓したのが、この『ゼロファイター列伝』だ。本書は零戦搭乗員7名に焦点を当て、彼らの戦中戦後の生きざまについて書いている。7名の搭乗員とは三上一禧氏、羽切松雄氏、原田要氏、日高盛康氏、小町定氏、志賀淑雄氏、山田良市氏である。

 本書が興味深いのは著者が零戦搭乗員に関心を持ち、搭乗員の世界に入り信頼を得ていくまでの経過が良く記されていることだろう。まさに信頼と人と人のつながりによって今まで取材を拒んできた人達にもインタビューをすることができたというのが分かる。

 特に今まで頑なに取材を拒んでいた日高盛康氏の話を記録として残したのは貴重である。そして零戦初空戦に参加した現在ではたった一人の生存者(2016年7月現在)、三上一禧氏のインタビュー等記録として貴重なものが多い。

 内容はそれぞれの零戦搭乗員の人となりが分かってかなり読み応えのあるものだ。空中戦は才能が必要であり、三上氏は著名な搭乗員、樫村寛一氏、羽切松雄という先輩と空中戦をしても負けなかったが、後輩の奥村武雄氏には勝てなかったという。さらに小町氏が照れ隠しに著者に悪態をつきつつも著者の来訪を喜んでいるくだり等、読んでいてつい微笑んでしまうようなエピソードもある。

 零戦に興味のある人にとって本書はまさに必携の書であると思う。これからは戦争経験者が減少していく。今後はこういう生の声を記した記録類が貴重な史料となっていくだろう。そういう意味でも価値のある本であると思う。

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森 史郎 著
文藝春秋 (2015/12/15)

 

 今日は、零戦搭乗員戦記の名作『海軍戦闘機隊』の著者、森史郎氏の著書『零戦7人のサムライ』について書いてみたい。本書は零戦搭乗員6人について森氏が本人や関係者に聞き取り調査をして執筆したものだ。登場する搭乗員は、新郷英城、志賀淑雄、上原定夫、鈴木実、杉田庄一、岡元高志、大黒繁男の各氏である。

 本書は森氏の独自調査による内容であり、著名な搭乗員、新郷英城氏、志賀淑雄氏、杉田庄一氏等についても今までにない新しい情報等があるが、特に私が興味を惹いたのはあまり知られていない戦闘機搭乗員、上原定夫氏、岡元高志氏について詳しく書いてあることだ。

 上原定夫氏はあの著名なエース、坂井三郎氏と同じ台南空に所属し、初期の航空撃滅戦、ラバウル航空戦に参加した。その後マラリアを患って静養、フィリピンで特攻隊の援護任務についた。戦後はジェット機、ヘリコプターの搭乗員として活躍した飛行機一筋の人生だった。自分の戦果をアピールしない人だったようなので撃墜戦果はあまり知られていない。因みに『日本海軍戦闘機隊』によると撃墜数は10機とある。

 まあ、撃墜数自体は一般的に誤認が多く、撃墜もチームプレイであることからあまり意味のあるものではないが、一応書いておく。というのは、上原氏が生前、遠慮がちに「坂井三郎氏が撃墜王になれたのは自分が敵機を引き付けたからだ」というようなことを語っていたからだ。これは敵機撃墜がチームプレイであるということをよく表している。

 岡元高志氏の部分は本書の中でも歴史の証言というのに相応しい。インド洋で英空母ハーミスを撃沈した際、零戦隊がハーミスから脱出した水兵を面白がって銃撃していたこと、同じく日本人搭乗員がガダルカナルでパラシュートで脱出した米軍パイロットを撃ち殺したこと、逆に脱出した日本軍搭乗員を米軍が対空機銃で日本軍搭乗員を形が無くなるまで撃ちまくっていた等、戦争が決してきれいごとではないことが分かる。

 さらに戦争後期になると若年搭乗員が体調不良を理由に出撃を嫌がったりといったこともあったようだ。特に衝撃的なのはフィリピンで航空隊司令が部下の士官搭乗員に対して「戦闘行動には特務士官を使え、戦争が終わっても大切な身体だから大事にしてくれ」と語っていたのを聞いてしまったという件だろう。特務士官というのは兵隊からの叩き上げ士官のことだ。

 かなり重い話になってしまったが、戦後70年が経ち、太平洋戦争がすでにファンタジーの世界になり、妙に美化されるようになった現在、貴重な証言といえる。

 

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