トイレで読む向けブログ

全国のトイレ人よ立ち上がれ! 〜 since 2005 〜

中村秀樹

 

 私は以前から潜水艦にすごい興味があったので、潜水艦関係の書籍を探していたのだ。しかし潜水艦の本というのは大戦中のものが多く中々私が望んでいるような現代の潜水艦の能力や運用についてのものはなかった。確かに潜水艦というのは機密の塊だ。所在も機密であるし機能も機密が多い。おまけに気密もしっかりしないといけない(あまり面白くないですね(;^_^A)。

 古い潜水艦戦記も面白いのだけどやはり現代の潜水艦の能力が知りたいと思っていた私にとって本書はまさにドンピシャ!だった。中村秀樹氏は元海上自衛隊の潜水艦長だった人だ。経歴から見ると、潜水艦に関しては中村氏より詳しい人は日本にはいないんじゃないかと思う。内容はさすがに何もかも書いてある訳ではないが、普通の人が全く知らない世界なので機密に触れない範囲であっても相当に面白い。

 潜水艦が本気になって隠れると水上艦艇や航空機によって探し出すのはほぼ不可能だということや潜水艦は機雷敷設から陸上基地攻撃、対空戦闘に至るまでやろうとすれば何でもできるという。まさに無敵の兵器だ。私は旧軍の潜水艦のそれも中途半端な知識しかないので、現代の潜水艦が艦艇の中で最速の乗り物だということも本書で知った。

 原子力潜水艦に至っては40ノット出るものもあるという。さらに実は潜水艦の中は臭いとか食事が非常においしい等、潜水艦よもやま物語という感じの体験者でしか分からないエピソードもあって面白い。著者は本書の1/3くらいのところから何かが吹っ切れたのか、突然文章に冗談やらシャレが頻発し俄然面白くなる。軍事関係の本なのだけどあまりにも面白くて止まらなくなってしまった。

 海軍士官は冗談やシャレがうまいのだなぁと思ってしまった。あまりにも面白いので読みながらついニヤニヤしてしまう。一人でニヤニヤしながら潜水艦の本を読んでいる私は相当不気味だったと思う。中村氏は幕僚まで勤めた海自の幹部。海自の潜水艦運用の問題点や水上艦艇や航空隊まで含めた海自の問題点まで言及している。

 

自衛隊の欠点を率直に述べる姿勢

 

 実は問題点というのを通り越して海上自衛隊の内情暴露に近い。私自身、元自衛官として陸上自衛隊が見掛け倒しの軍隊であることは分かっていたが、海上自衛隊も同様だったというのは衝撃であった。護衛艦にはミサイルが全数満載されている艦がない事や補給すべき予備のミサイルもないことを暗にほのめかしている。そして海自護衛艦隊を壊滅させる方法まで書いてしまっているのだ。

 さらに自衛隊自慢のミサイルも実戦では敵とそれ以外(戦闘区域には中立国の船もいる)の識別が現実的には不可能であること。撃ったとしても命中率は一般に想像している以上に低いことなども本書によって知ることが出来た。ここまで書くというのは驚きだった。こういうことを「自衛隊をディスってる」と見るのは完全な間違いだ。著者は恐らくかなりの覚悟を持って本気で自衛隊を良くしたいと思っているのだと思う。

 退官したといっても防衛省自衛隊との人間関係はあるし圧力もかかるかもしれない。それでもここまで書いたのはすごい。本書はユーモアに包まれた中に著者の凄みを感じた。

 

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 ほとんど注目されることのない特殊潜航艇についての本。著者は元海上自衛隊の潜水艦艦長でこれ以上ない位の潜水艦の専門家である。本書はまず潜水艦の能力の評価の基準を説明し、その基準に特殊潜航艇がどれほど当てはまっているのかを検証する。私は特殊潜航艇というのは二人乗りの小回りの利く水中モーターボート位のイメージを持っていたが実際は舵の効きが悪い上に視界も悪く通信手段も乏しいという搭乗員には残酷な乗り物だった。

 特殊潜航艇、甲標的は改良が加えられる毎に性能が良くなっていくが、最後まで搭乗員生存率の低い危険な兵器であった。甲標的は真珠湾攻撃、シドニー攻撃、マダガスカル島攻撃、ガダルカナル島、フィリピン、沖縄戦で使用される。甲標的は、推進器の前に舵があるという構造上の理由から舵の効きが悪い。このため港湾攻撃のように精密な操艦が求められる攻撃は不得手であった。真珠湾攻撃は著者の判断では全部失敗、海兵68期の酒巻少尉が捕虜になった以外は全員死亡した。

 実はこの時、著者の見解とは異なるが、特殊潜航艇は全艇が真珠湾内に侵入し、そのうち一隻が放った魚雷が戦艦に致命傷を与えたという説があるのを紹介しておく。この真珠湾攻撃時、甲標的の一隻が米駆逐艦ウォードにより爆雷攻撃を受けている。これが実は南雲機動部隊が真珠湾攻撃を行う前だったという。先制攻撃をかけたのは米軍だったというのは驚きだった。

 シドニー攻撃、マダガスカル攻撃では戦果を上げたが搭乗員は生還しなかった。舵の効き以外にも特殊潜航艇はトリムの調整が難しい上に魚雷を発射するとさらにバランスを崩す。荒れた海では視界も確保できなかった。唯一、特殊潜航艇の能力が十分に発揮されたのはフィリピンでの戦闘であった。フィリピンでは特殊潜航艇の司令官が特殊潜航艇の特性をよく理解しており、戦闘も内海で行われた。結果、搭乗員の生還率は高まり、何度も出撃することができた。

 本書ではその他、回天や運貨筒にも言及するが、どれも生還率が低く(回天に至っては皆無)ほとんど特攻と変わらないものだ。潜水艦搭載の零式小型水偵にも言えることだが、これらの兵器はあまりにも搭乗員の命を軽視し過ぎだろうと感じた。特殊潜航艇は本土決戦のために各地に温存されたが、特殊潜航艇に期待をかけるほどに日本海軍の戦力は払拭していたといえる。だが、この温存された特殊潜航艇が仮に本土決戦が行われたとして活躍したかというと微妙だ。あたら若い搭乗員の命を消耗するだけでなかっただろうか。

 

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 著者は元海上自衛隊潜水艦艦長であり、本書は特に日本海軍の潜水艦の歴史についてほぼ網羅されているといっていい。私は正直、現代の潜水艦の運用方法や長所短所を知りたくて本書を購入したのだが、amazonポチっのよくあるパターンで、内容が全く違っていた。

 しかし、読み進めていくうちに本書はまた充実した内容であることが分かった。本書は前半と後半に分かれており、前半は日本海軍の潜水艦運用史といっていい。後半はそこから引き継いだ海上自衛隊の潜水艦を含めた全般的な問題点について書いている。私はてっきりハードカバーの本の文庫化かと思ったが、本書は文庫として書き下ろしたそうだ。私が勘違いしたのはそれだけ内容が充実していたからだ。

 前半の日本海軍潜水艦史は徹底した史料調査により「第○○号はどこでどういう行動をとった」というような細部まで書かれている上に、甲標的、回天、運貨筒まで詳述されている。さらに伊400型潜水艦と晴嵐攻撃機の能力と必要性についても言及するなど潜水艦関係は網羅されている感がある。この前半部分だけでも資料としては十分に価値があると思う。しかし著者はこれを資料としてのみ提示したのではない。この大量のデータを元に日本海軍の潜水艦戦の問題点について追及していく。

 日本海軍の潜水艦戦は戦前から敵艦隊の漸撃が目的であり、太平洋戦争(著者は大東亜戦争と称しているが、私は違和感があるので太平洋戦争と書く)開戦後、その戦術が実際の潜水艦の個性に合わなくなっているにも関わらず対艦隊戦という思想から脱出することが出来なかったという。そうなった理由というのは潜水艦隊司令部に潜水艦の専門家がほとんどいなかったことを指摘している。そのため戦略・戦術ともに素人が口を出し、本来の潜水艦の個性を大幅に削ぐ結果となったという。

 その極端な例が竜巻作戦や伊400型潜水艦による米本土空襲計画だという。竜巻作戦とは潜水艦に特四式内火艇を乗せ環礁をキャタピラで乗り越えて環礁内に潜入しようというものだ。特四式内火艇の性能不足で取りやめになったという。伊400型潜水艦は有名だ。伊400型は艦内に水上攻撃機晴嵐を3機搭載することができる。本来の計画はこの潜水空母を使用しての米本土爆撃だったという。しかし数十機の晴嵐が米本土に攻撃をかけたとしても米国の国力から考えてもほとんど意味がなかっただろうとしている。

 その他潜水艦を知らない上層部が行った作戦の多くは、潜水艦の運用自体が潜水艦の個性を殺すもので実際、多くの潜水艦が大きな戦果を挙げることなく沈んでいった。前半部分では日本海軍の潜水艦運用の問題点を指摘した上で現在の海上自衛隊ではそれはどう改善されているかを検証する。結果、より悪くなっていると結論付ける。この海上自衛隊の問題点の指摘はやはり元海上自衛隊幕僚であり、潜水艦長の著者の真骨頂だ。

 驚くほど多くの問題があることが判明する。多くのミリタリーファンが読んだらあまりの世間の情報との落差に著者の頭を疑うんじゃないかとすら思う。世間にアピールされている最新鋭護衛艦を筆頭にした精鋭のイメージとはうらはらに、現実の海上自衛隊は多くの問題を抱えていると指摘する。詳細は本書を読んでもらえば分かると思う。私は基本的に本は流し読みをする。読む本が多すぎて熟読していると時間がいくらあっても足りないのだ。本書も前半部分は割と流し読みだったが、後半の最後になるにつれどんどん読むペースが遅くなってきてしまった。

 本書が出たのが2006年、そこから現在までの間に多少でも改善されていて欲しいものだ。本書を読んで著者中村秀樹氏の著書を何冊か読んでみようと思った。

 

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