本書は2013年末にテレビ放映されたものを本にしたもので、零戦を中心に零戦デビューの日中戦争から太平洋戦争終戦までを概ね時系列で追ったものだ。
取材を始めたのは2007年というからその当時はまだ零戦の関係者も多かっただろう。撃墜王では角田和男氏、田中国義氏、大原亮治氏、原田要氏などがインタビューに答えている。これは「零戦の会」の協力があって初めて可能になったものだろう。著者はNHKディレクターの大島隆之氏と零戦の会会長の神立尚紀氏である。神立氏の著書はよく読ませて頂いているがここに大島隆之氏が共著者として加わるとまた違った視点になるのが面白い。
「(零戦は)まあ風船玉みたいな飛行機だなと思ったですね。こんなので戦争させたのかと思って。」(本田稔氏)
「もう本当の消耗品じゃよ、パイロットは。参謀連中はのんきなことを言って、今じゃのう高々と恩給もらって、下の者は戦争させられて。ソロモンは墓場じゃったとよ。」(一木利之)
本田氏、一木氏共に生き残りのベテラン搭乗員である。本書の特徴は証言を重視しており、とかく戦争を美化しないことだろう。戦争末期になり特攻隊が編成される部分になるとその特徴がさらに明確になる。その後、玉音放送、終戦となる訳だが、私が特に面白いと感じたのは、玉音放送を聴いた隊員達を見た者の証言である。
「そのときのみんなの表情がね、頬がゆるんでピクピクしてるんですよ。それを出さないように我慢している姿がね。戦争に負けて理屈では悔しいんだけど、死なずにすんだという喜びがどんどん湧いてくる。みんな悔しいふりはしていますよ。デマ宣伝にだまされるな!そうだそうだ!戦闘続行!なんて言いながら、頬がゆるんでいる。体がよじれるような喜びが内から湧いてくる。戦争に負けたこととこれとは、とりあえず別ですよ」
もちろんこれは証言者の杉田貞雄氏の見た光景であって、全ての隊員がこのような状態ではなかったかもしれない。しかしこの言葉に戦争のリアルを見てしまうのだ。この言葉を収録できたことだけで本書には価値があると思う。
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