01_零戦22型
(画像はwikipediaより転載)

 

略歴

 1916年茨城県に生まれる。1933年機関兵として海兵団に入団後、整備兵に転科。1937年7月操練37期修了後、戦闘機搭乗員となった。1940年7月横空から12空に異動。初陣で零戦初空戦に参加した。1942年7月台南空に転属後、11月までニューギニア、ソロモン航空戦に参加した。11月に内地帰還、翌年5月、251空隊員としてラバウルに再進出したが、6月16日空戦中に戦死した。

 

台南空でラバウルへ

 1916年生まれは戦前に十分な訓練を受け、日中戦争で実戦を経験後、25歳で太平洋戦争に参加したという経験に関してはもっとも恵まれた生まれといってよいだろう。同年兵には零戦虎徹岩本徹三中尉、坂井三郎中尉、原田要中尉、武藤金義少尉等、戦後有名になった搭乗員が多い。操練同期はわずか5名で当時流行していた「戦闘機無用論」の影響なのかは分からないが、少数精鋭主義であったことは確かである。この5名の内、終戦まで生き残ったのは零戦初空戦に大木飛曹長と共に参加した三上一禧氏のみで生存率20%という凄惨な状態であった。

 操練課程を修了した大木飛曹長は海軍航空の殿堂といわれる横須賀航空隊を経て12空に配属される。この12空は戦闘機専門部隊として中国大陸に展開していたが、ここに大木飛曹長を含む零戦隊が参加することになった。大陸進出の2ヶ月後の1940年9月13日、大木飛曹長を含む零戦隊は陸攻隊の護衛として出撃する。この出撃は「13日の金曜日」に「13機」の零戦が出撃するという縁起の悪さもあり心配する隊員もいたが、結果として撃墜27機の大戦果を挙げることとなった。ここで大木飛曹長は4機を撃墜したことになっているが、この空戦での個人撃墜数はのちに創作されたものであるといわれている。

 太平洋戦争では米軍のガダルカナル島上陸の直前にラバウルに展開する台南空に配属、有名な搭乗員である坂井三郎一飛曹、笹井醇一中尉、西澤廣義一飛曹、太田敏夫二飛曹等と共に激烈なソロモン航空戦の洗礼を受けることとなった。この台南空は大きな戦果を挙げたものの損害も多く、8月には先任下士官である坂井三郎一飛曹が負傷して内地に送還、さらに笹井中尉が戦死した。9月には歴戦の羽藤一志三飛曹が戦死、10月には太田敏夫一飛曹も戦死するなど消耗が激しく、11月には戦力回復のため愛知県豊橋に後退した。

 1943年5月には戦力の再編成が完了したため再びラバウルに進出するが、この時点で実戦経験者は大木飛曹長、西澤廣義飛曹長、奥村武雄上飛曹等10名程度に過ぎなかった。この時に新たに部隊配属された青年士官大野竹好中尉は特に大木飛曹長と親しかったようで、大木飛曹長をして「勇敢なること鬼神のごとく、温和なること菩薩のごとく、機敏なること隼のごとく」と絶賛している。

 この大木飛曹長も1942年6月16日、ルンガ沖船団攻撃において未帰還となった。総撃墜数は17機といわれているが、撃墜数というのはほとんど誤認であるといってよく実際の撃墜数は不明であるが、上記大野中尉の評価のように大木飛曹長は腕の立つ熟練搭乗員であったのは間違いない。因みにこの空戦では同じく台南空の奥村武雄上飛曹も未帰還となっている。

 

大木芳男飛曹長 関係書籍

 

本田稔ほか『私はラバウルの撃墜王だった』

 零戦に関わった兵士たちの記録。著者は本田稔、梅村武士、安倍正治、加藤茂、中沢政一、大野竹好の6名である。本田稔氏は著名なエースで総撃墜数17機と言われている人だ。本書ではラバウル時代について書いている。本田氏は本書の部分も含めて『本田稔空戦記―エース・パイロットの空戦哲学 (光人社NF文庫)』にさらに詳しく書いているのでそちらがおすすめ。

 それ以外にも青年士官大野竹好中尉の絶筆となった日記も貴重である。唯一不敗だった戦闘機隊202空に所属していた梅村武士氏の手記では、慰問団として来た森光子のこと、安倍正治氏の手記では十分な訓練期間も与えられずに戦場へ送り込まれた戦争後半担当パイロットの戦いの工夫等が面白い。

 安倍氏は西澤廣義、岩本徹三の二大エースが所属した戦闘303飛行隊に初期から終戦まで在籍した唯一のメンバー。両エース在籍時にそれぞれから薫陶を受けており、彼らについての記録も貴重。大木飛曹長は上記大野中尉の日記中に登場する。

 

 

まとめ

 

 大野中尉の絶筆の日記をみると大木飛曹長の人柄の良さが伝わってくる。実戦経験が皆無であった大野中尉にいろいろと操縦について教えていたのだろう。その大木飛曹長は操練を修了後、横須賀航空隊勤務、最初の零戦搭乗員として戦地に進出するなど経歴からみても操縦技術が高く評価されていたのが分かる。

 

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