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映画

01_タクシードライバー

 

 『タクシードライバー』とは1976年の映画で、監督はマーチン・スコセッシ、主演ロバート・デ・ニーロである。人間の二面性、狂気について描いた映画で好き嫌いはかなり別れる。特に女性には苦手な方が多いようだ。表面的に観ると正義のヒーローが少女を救出しにいった映画と見えるが、実は狂気に満ちたホラー映画と言っても良い内容である。かなりヘビー級であるため『死霊の盆踊り』や『ロボ道士』のように楽しく何度も観る映画ではないことは間違いない。

 

ストーリー

 

02_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

映画の公開年と映画内の時間軸

 

 映画内では大統領選が行われている。アメリカの大統領選挙は4年に一度、1年間かけて行われる。70年代の大統領選は1972年と1976年に行われているが、トラヴィスが海兵隊を除隊したのが1973年であるので本作の大統領選は1976年であることが分かる。本作が公開されたのが1976年2月、アメリカ大統領選の予備選挙が開始されるのと同じタイミングで公開された映画なのである。

 そして主人公トラヴィス・ヴィックルについて。ベトナム戦争は1973年1月にパリ協定が締結され終結した。トラヴィスが海兵隊を除隊したのが1973年5月なのでベトナム戦争終結後である。海兵隊を除隊して学歴が全くないトラヴィス。1976年に26歳でタクシー会社の面接を受けていることから逆算するとトラヴィスはトラヴィスは1949または50年生まれ、高校卒業後すぐに海兵隊に志願したとすると1969年に19歳で入隊、1973年までの4年間海兵隊に在籍したのち23歳で名誉除隊。3年間のブランクがあって1976年5月にタクシー会社に応募したことになる。

 

ベトナム戦争帰還兵トラヴィス

03_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 

 主人公トラヴィス・ヴィックルは不眠症であった。眠れない日々を過ごす彼は、夜勤のタクシーの仕事に応募する。タクシー会社に入ったトラヴィスは自身の経歴について語る。学歴について触れられると口ごもるトラヴィス。察したタクシー会社の採用担当者は軍歴を訊く。海兵隊出身。1973年5月名誉除隊。華々しい軍歴である。

 名誉除隊とは、米軍においておおむね勤務態度良好であり、軍法会議や民事訴訟の対象にならなかった隊員が除隊する際に対象にとなる。米国では軍人の社会的評価は非常に高く、名誉除隊証明書を持つことは再就職等に有利となる。

 トラヴィスの名誉除隊は1973年5月となっており、ここからベトナム戦争に従軍していたことが分かる。このベトナム戦争とは米国で一番人気のない戦争であり、それまでの戦争の帰還兵が英雄として扱われていたのに対して、ベトナム戦争帰還兵には英雄どころか「ベビーキラー」等の心無い言葉まで投げかけられることもあった。このためなのかは分からないが、トラヴィスにはタクシードライバーという最底辺の仕事しか得ることは出来ず、それも採用担当者が同じ海兵隊出身であったから優遇された結果であった。

 

ベツィに恋をする

 ベトナム戦争で心を病んだトラヴィスの目には荒んだ街が写る。そして誰からも認められない自分自身。重くのしかかる孤独感。仕事が終わったトラヴィスはそれらを忘れるために酒を飲みポルノ映画に通う日々。そこに転機が訪れる。大統領候補のボランティアとして活動している美しい女性ベツィ。ただ見とれているだけのトラヴィスであったが、ある日、勇気を出してベツィに声をかけた。

 デートに応じてくれたベツィであったが、トラヴィスはこともあろうにベツィをポルノ映画に誘ってしまう。当然、ベツィには嫌われ再び孤独感に苛(さいな)まれるトラヴィスであった。トラヴィスの孤独感、社会のためにこの世界を浄化しなければならないという使命感、そしてそれを出来るのは自分しかいないとの思い込み。そしてベツィが応援する大統領候補パランタインのテレビインタビューを見たトラヴィスは行動を決意する。そう、自分こそがこの世界の悪を駆逐する正義のヒーローなのだ。

 

目的を見つけたトラヴィス

 銃を購入するトラヴィス。そして除隊以来の鈍り切っていた身体を鍛え直す激しいトレーニングを開始する。そんな時、トラヴィスはアイリスという売春をしている12歳の少女に出会う。本気で更生を薦めるトラヴィスに対して心を動かされるアイリスであったが、スポーツとあだ名されるヒモ男に心を奪われているため決心がつかない。

 そんな中、トラヴィスはいよいよ社会の「浄化」を決意する。ターゲットは大統領候補パランタイン。モヒカン頭にしたトラヴィスは大統領候補の暗殺を企てるがシークレットサービスにより阻止されてしまう。しかしトラヴィスはその後、もう一つの「浄化」を決行する。それはアイリスの救出であった。売春宿に突入したトラヴィスはアイリスのヒモ男スポーツを射殺、反撃をされながらも売春宿の「悪人」全員の射殺に成功する。

 命を賭けて少女を救出したトラヴィスはヒーローとしてメディアに取り上げられ、その記事を読んだベツィもトラヴィスを見直した。望み通りヒーローとなったトラヴィスは再びタクシードライバーとして夜の街を走るのだった。

 

結局、この映画は何が言いたいのさ。。。解説すると

 

04_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 この『タクシードライバー』意外に正義のために戦ったヒーローの話ととられることが多いがもちろんそんな話ではない。トラヴィスは不眠症。ベトナム戦争で心の傷を負った男で朦朧とした世界の中を生きていた。冒頭の蒸気の中を彷徨うタクシー、そしてトラヴィスが車から見ている街が雨で全て歪んで見えるのはこれを表している。タクシー会社に入る際、トラヴィスが蒸気の中から現れているのもその朦朧とした世界から現実の世界に現れていることを表現している。

 

トラヴィスの価値観

 「正義のヒーロー」であるトラヴィス。そのトラヴィスの「正義」とはどんなものなのだろうか。まず、映画の最初でトラヴィスの内面の声で「売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬売人 すべて悪だ」と語られる。売春婦やヤクザ、麻薬の売人と一緒にホモ、オカマも悪であると考えているのが分かる。さらに同じく内面の声で「黒人を乗せない奴もいるが、俺は平気だ。と語っている。平気というのは、つまり「黒人が嫌いだけど乗せられる」という意味だ。決して黒人に対して好意を持っている訳ではない。これが良く分かるのはトラヴィスの黒人を見る時の目つきである。

 トラヴィスが黒人を見る時、その目は悪意に満ちている。冒頭のタクシー会社での面接の際に鏡に映っている黒人を見た時、食堂で近くに座っている黒人を見た時、さらにドライバー仲間の黒人に対しての目つきではっきりと黒人に対して悪意を持っているのが分かる。この悪意は、映画の中盤でトラヴィスが黒人の強盗(コソ泥)に遭遇した際、何の躊躇もなく黒人の頭を撃ち抜くという行動が証明している。因みにトラヴィスが殺害したのは売春宿の3人以外にはこの黒人だけである。

 

トラヴィスと女

 これらからも分かるようにトラヴィスの価値観はたいぶ歪んでいる。もちろんその「正義」というのも世間の正義とはだいぶ違う。この「正義のヒーロー」トラヴィス。映画の序盤で大統領候補パランタインの事務所で働くベツィに恋心を抱く。デートに誘うことに成功するが、自分がいつもみているお気に入りのポルノ映画を見せ、ベツィに嫌われると選挙事務所まで押しかけてベツィに罵詈雑言を浴びせかける。

 要するにトラヴィスという男は自分の価値観を人に押し付ける。そしてそれが断られるとブチ切れるというかなりヤヴァい奴なのだ。そのトラヴィス、ベツィに振られてからは歪んだ正義感がさく裂する。偶然タクシーに乗り込んだ妻を殺すと豪語する客(スコセッシ監督本人)から44マグナムで女性を殺すという知恵を付けられ、トラビスの頭の中は徐々にベツィに対する復讐で溢れていく。

 

なぜ大統領候補を暗殺しようとしたのか

 しかしまだ理性が働いているトラヴィスはタクシー仲間の先輩に相談する。しかし先輩は有効な解決法を提示することは出来ない。とうとう理性での制御不能となったトラヴィスはついにパランタイン議員の暗殺を企てるが結果は失敗。だが、ここで一つの疑問が出る。掃きだめみたいな街に嫌悪感を抱いていたトラヴィス。正義のヒーローとしての行動の一発目がなぜパランタイン議員の殺害なのだろうか。

 パランタイン議員は劇中で決してネガティブな描き方はされていない。むしろ偉ぶらずタクシーを利用するという庶民派大統領候補である。そのタクシーの運ちゃんトラヴィスに対してもアメリカの問題点について質問、口ごもるトラヴィスに対して「何かあるはずだ」と本心を引き出そうとしてその言葉に真摯に耳を傾ける誠実な人物である。トラヴィスが暗殺の対象にする理由はどこにもない。

 ではなぜ暗殺しようとしたのか。これはパランタイン議員が最初に登場したシーンにヒントがある。最初に登場したのは本人ではなくベツィと同僚トムとの会話のシーンである。ベツィがパランタイン議員について話す際、「情熱的でセクシー・・・」とうっとりした顔で話している。これは当然だ。ベツィはボランティアをしてまでパランタイン議員に大統領になって欲しい。つまりはパランタイン議員に惚れ込んでいるのだ。

 これに対してベツィに嫌われてしまったトラヴィス。可愛さ余って憎さ百倍。トラヴィスは自分を受け入れてくれないベツィに復讐を決意する。しかし攻撃の矛先が直接ベツィに向かうことはなかった。これはトラヴィスが両親に宛てた手紙でベツィと交際していると書いていることからも分かるようにトラヴィスはベツィに対する想いを捨てきれていない。ベツィの大切な男を殺す。これがトラヴィスのベツィに対する復讐なのだ。

 

アイリスの救出が目的ではない

 要するにトラヴィスは社会を良くするためや街を浄化するのが目的なのではなく、単に自分を愛してくれなかった女に復讐しているだけなのだ。これはアイリス救出でも同様のことがいえる。トラヴィスが思いを寄せたもう一人の女性アイリス。自分の正義を絶対視するトラヴィスはアイリスに更生を促すものの、アイリスはスポーツに惚れているため自分の言うことをきかない。孤独感に苛まれるトラヴィスはまたしても女性に「裏切られた」のだ。

 孤独と自分の愛を受け入れてくれなかった女達に対してトラヴィスは正義の名の下に売春宿に殴り込みをかける。まずはアイリスが愛している男であるスポーツを射殺。売春宿にいる関係者を片っ端から撃ち殺しているが、特にスポーツに対しては死体に対して何発も銃弾を撃ち込んでいる。そして近くで震えているアイリスには見向きもせずに自殺を図る。

 何故アイリスには見向きもしないのか。もしアイリスの救出が目的であれば、敵を殺したらすぐにアイリスを保護するのが自然である。アイリスも救出を望んでいるのであれば、救出しにきたトラヴィスに対して好意的な態度をとるはずだ。しかしアイリスはトラヴィスに向かって「撃たないで!」と叫んで怯えており、トラヴィスもアイリスを気にする様子はない。そしてトラヴィスはアイリスのことを全く気にせずに拾った拳銃で自分の頭を撃つ。

 つまりはトラヴィスの殴り込みというのはアイリスの愛した男であるスポーツの殺害が目的だったからだ。目的を達成したトラヴィスは「目的外」のアイリスには見向きもしない。そしてすべてのミッションを終えたトラヴィスは気が付く。自分の行動が正義ではないことに。それどころか自分のやった行動は単に振られた女の惚れた男を殺しただけである。悪は自分自身であった。このため「正義のヒーロー」トラヴィスは悪を消し去るために自分自身に向けて引き金を引いた。

 

鏡に映ったもう一人の自分

05_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 この映画は人間の表の顔と裏の狂気の顔という二面性について描いている。自分の中にいるもう一人の自分。この映画で注目したい点は「鏡に映っているもう一人のトラヴィス」である。この映画ではドッペルゲンガーのように「鏡に映ったもう一人のトラヴィス」が徐々にトラヴィスに近づいてくる。

 最初に鏡が登場するのはタクシー会社の室内である。そこに写っているのは口論をする従業員とそれを笑いながら見ている女性従業員のみであった。ここにトラヴィスは写っていない。次に出て来る鏡はトラヴィスの部屋の中をカメラがパーンする時である。トラヴィスは日記を書いている。この時、鏡には日記を書くトラヴィスの後ろ姿が写っている。しかしこの時の「鏡の中のトラヴィス」はまだ後ろ姿で下を向いていた。写ったのも一瞬である。

 正面を向いた「鏡の中のトラビス」が登場し出すのは、アイリスがヒモ男スポーツに連れ去れる場面からである。そして妻を44マグナムで殺すと豪語する男を乗せた際には、妻の殺し方を延々と語るその男が乗るタクシーのバックミラーには「鏡の中のトラヴィス」がじっとこちらを見つめて話を聴いている。狂人と判断して冷静に対応しようとするトラヴィス。その男の話にじっと聴き入る「鏡の中のトラヴィス」。二人のトラヴィスが葛藤を始める。

 だが、ベツィに振られ先輩のアドバイスも役に立たなかったトラヴィスは徐々に孤独、怒り、何かをしなくてはという焦りが強くなっていく。銃を購入して「正義の戦い」を決意するトラヴィス。「鏡の中のトラヴィス」はとうとうトラヴィスに話しかけて来るようになった「誰に話しているんだ?」「俺しかおらん」。「鏡の中のトラヴィス」がどんどんトラヴィスを侵食してきているのだ。

 そして完全に「鏡の中のトラヴィス」に浸食されたトラヴィスは行動を起こす。結果、意外にもヒーローとなってしまった。そして狂気の「鏡の中のトラヴィス」は消え、トラヴィスは再びタクシードライバーとして街を徘徊する。

 

その後のトラヴィス

 売春宿襲撃後、自殺に失敗したトラヴィスに意外なことが起こった。昏睡状態から覚めた彼は少女をマフィアから命がけで救出したヒーローになっていたのだ。アイリスは親元に帰り学校に通うようになり両親からは感謝の手紙が届いた。新聞はトラヴィスをヒーローと称えた。これこそトラヴィスが望んでいたことだった。犯行後は、自分を悪と思い自殺を図ったトラヴィスであったが、社会の称賛により自身の行動が正義であったと確信する。自身の新聞記事をスクラップにしてアイリスの両親の手紙とともに誇らしく部屋の壁に貼り付けたトラヴィスは、社会から認知されたことにより孤独も感じなくなった。

 満たされたトラヴィスはタクシーの仲間と共に生き生きと仕事をするようになった。そんな時、トラヴィスはある客を乗せる。それはかつて自分が愛した人、ベツィであった。バックミラーに写るベツィ、トラヴィスが愛し、そして傷付けてしまった女性ベツィ。新聞記事を読んで復縁を望んでいるだろうベツィに対してトラヴィスはタクシーのメーターを戻して笑顔で去っていく。

 トラヴィスは成長した。人に感謝され英雄になることで承認欲求を満たしたトラヴィス。傷つけてしまったベツィと付き合う資格はないし、同時にもうベツィにすがることもない。メーターを戻し美しい夜の街を走るトラヴィス。その刹那、バックミラーにトラヴィスが写る。消えたはずの「鏡の中のトラヴィス」。彼はその後もずっとトラヴィスに付いてきているのだ。

 

登場する銃器等

 

S&WM29

06_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 S&W社が1955年に発表した当時世界最強のカートリッジ44マグナムを使用する大型拳銃。本来は狩猟用に使用することを想定して開発したと思われるが、「最強のカートリッジ」のインパクトの強さにより映画『ダーティーハリー』で主人公の愛銃となった。これで一躍有名になった本銃である。『タクシードライバー』が公開された1976年末には『ダーティーハリー3』が公開されている。

 劇中では売春宿の料金徴収係の何も悪いことをしていないおじさんの手を吹き飛ばしたあと、反撃してきたスポーツにも一発お見舞いしている。2発発射したのみ。ハリーキャラハン刑事よりもトラヴィスの使用目的の方が明らかにダーティーである。武器商人アンディからは350ドルで購入。トラヴィスの一週間分の給料だ。さらに胡散臭いメキシコ製手作りホルスターを40ドルで買わされている。

 

 

S&Wチーフスペシャル

07_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 劇中ではスクエアバットのパールグリップが装着されたニッケルメッキモデルを使用しているが、射撃場のシーンではコルトディテクティブに代わっている。S&Wチーフスペシャルは、1950年に発売された重量わずか554g、装弾数5発の38口径のリボルバーであった。当時、38口径でこの大きさのリボルバーは例が無く衝撃的な銃であった。

 武器商人が「一日中ハンマー代わりに釘を打っても精度は変わらん」と言っているが、精密機械なのでそういう使用法は避けた方が賢明。劇中ではスポーツに向けて発射したのち追いかけて来る料金徴収係のおじさんをハンマー代わりに叩いた。全弾撃ちきっていたため精度がどうなったのかは不明。素敵な武器商人アンディからは250ドルで購入。

 

 

ワルサーPP

08_タクシードライバー
(画像はwikipediaより転載)

 

 ドイツワルサー社製の中型拳銃で380ACPと威力は低いものの、小型で当時としては先進的な機構であったため以降、多くの銃の参考となった。ストレートブローバックのため反動は強い。劇中では武器商人が将校専用に支給されたというようなことを言っている。強盗に向けて発射したのち商店のおっちゃんに回収された。トラヴィスは銃の携行許可証を持っていなかったが、商店のおっちゃんがその後うまくやってくれた。劇中ではほぼアストラコンスターブルになっている。スマートなビジネスマン風武器商人アンディからは150ドルで購入。

 

 

コルト25

 一応、コルト25となっているが、実際はS&WM61エスコート。エスコートはS&Wが1970年に開発した護身用のハンドガンで口径は25口径、装弾数5発である。劇中ではトラヴィスの右腕のレールに装着されて使用された。トラヴィスによって腕を振ると銃が飛び出すというほとんど実用性のないギミックを与えられた。

 しかし全く実用性がないと思いきや襲撃時に急にドアが開き売春宿のボス(?)に発砲された際に腕を振り飛び出した本銃により危機を回避。その人は25口径ACP弾を顔にたくさん貰って他界。いい銃は人を見て売るというポリシーを持っている闇の武器商人アンディからは125ドルで購入。

 

まとめ

 

 映画『タクシードライバー』は車の窓から見える夜景で終わる。その夜景はバックミラーに反射して半分は逆方向に流れているように見える。夜の街とそこを歩く人々。美しい夜景を歩く人々の中にも「鏡の中のトラヴィス」はいる。この映像はそれを暗示しているのかもしれない。非常にメッセージ性の強い映画で、蒸気や曇ったガラス、鏡等の他にも冒頭でタクシーの配車をするおじさんが長々と映されていたりと各所にメタファーがあるのでその意味を考えてみるのも面白い。

 余談ではあるが、この映画内での日付。日記の最初の日付が5月10日でベツィと喫茶店に行ったのが5月26日、戦いを決意するのが6月8日で決行したのが7月。実は2ヶ月程度の間の出来事なのである。それはともかく真剣に観るとかなり破壊力のある映画であるため気軽に人に勧めることはできないが、機会があれば一度観てみるのも良いだろう。但し、トラヴィスがベツィをポルノ映画に連れて行って嫌われたように女性にこの映画を薦めると十中八九嫌われる。リアルトラヴィスにならないように気を付けたいところだ。

 

 


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01_フルメタルジャケット

 

 『7.62×51mm・・・Full Metal jacket!』そう叫んだ後、「ゴマ―パイル」は便座に座って、銃口を口に当てて引き金を引いた。この衝撃的なシーンで非常に印象に残っている映画『フルメタルジャケット』。。。久しぶりにどうしても観たくなってしまった。とは言っても1987年の映画。名作ではあるが、さすがに新品のDVDを買うのは勿体ない。レンタルまたはネット配信で観るか。。。いやいや近くの市立図書館であるのではないかと色々調べた結果、ブックオフオンラインで中古が何と300円で売っているのを発見。早速購入して鑑賞したのであった。

 

概要

 

『フルメタルジャケット』とは1987年に『2001年宇宙の旅』等で有名なスタンリー・キューブリック監督によるベトナム戦争を描いた戦争映画である。私には、スタンリー・キューブリック監督はそれまで戦争映画の監督という印象はあまりなく、『2001年宇宙の旅』や『時計仕掛けのオレンジ』等のメッセージ性の強いいわば「崇高な作品」を撮る監督という印象が強かった。原作はグスタフ・ハスフォードの小説『ショート・タイマーズ』である。

 本作品が登場した当時は、ベトナム戦争が終結してからほぼ10年となり、ベトナム戦争の総括的な機運もあったのだろう。『地獄の黙示録』や『プラトーン』『ハンバーガーヒル』等の有名なベトナム戦争映画が数多く上映されていた。これらの作品がベトナム戦争の定番であるジャングルでの戦闘シーンや夜間戦闘を印象的に描いているのに対して、『フルメタルジャケット』は前半が新兵訓練、後半がベトナム戦争での日中の市街戦を描いているのが特徴である。

 

ストーリー

 

新兵教育隊

02_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 冒頭、軽快な歌とともにバリカンで丸坊主にさせられているアメリカの青年たちの映像からこの映画は始まる。海兵隊員に長髪は許されないのだ。髪の毛を全て切られて訓練用の戦闘服に着替えた若者たちはそこで狂犬のような教官であるハートマン軍曹の暴言の洗礼を受けることになる。このハートマン軍曹のシゴキ振りは当時かなり話題となった。それもそのはず、このハートマン軍曹の役を演じている俳優リー・アーメイはベトナム戦争で実戦も経験した本物の元海兵隊の教官。当初はテクニカルアドバイザーとして参加していたものの、「本物の」あまりの迫力に急遽教官役として抜擢されたものであった。この迫力は相当なものであったらしく、罵声を浴びせられた俳優が本当に怒り出してしまったというエピソードもあったようである。因みに本来教官役をやる予定であったティム・コルセリは主人公ジョーカーが移動の際に利用した輸送ヘリのガナー役で男女問わずベトナム農民を片っ端から撃ち殺す役を演じている。

 それはともかく主人公ジョーカー達は新兵として海兵隊に入隊。ハートマン軍曹による激しいシゴキを受ける。その訓練を受け、新兵たちは一人前になっていくが、極言すれば兵隊になるということは「人を殺すことを仕事にすること」であり、一人前になるということは、同時に人間性を失っていくということでもあった。

 この訓練の中で当初から教官に目を付けられた「兵隊に向いていない」新兵「ゴーマー・パイル」二等兵は訓練から完全に脱落、連帯責任のため他の同期の恨みを買っていく。そしてある夜、同期達は共謀してゴーマー・パイルにリンチを加えるのであった。このリンチの描写は非常に生々しく、一人がタオルでゴーマー・パイルの口を抑え、もう一人が足を抑える。それを合図に靴下に石鹸を入れた「武器」を手にした同期が全員がボコボコにぶっ叩くというものであった。石鹸入り靴下は結構痛そうである。それまではゴーマー・パイルに優しくしていた主人公ジョーカーも参加せざるを得ず、一緒になってボコボコぶっ叩いた。

 この一件以来、ゴーマー・パイルは精神に変調をきたしたのと同時、射撃の能力を開花させる。それは鬼軍曹ハートマンに認められるところになるが、事件は訓練終了後の最後の夜に起こる。この夜、当直はジョーカー。彼はトイレに人の気配があるのに気が付く。懐中電灯でトイレ内を照らすとそこには狂気に満ちたゴーマー・パイルの顔があった。

 彼は実弾を込めたM14自動小銃を持ち、訓練で習った銃に対する忠誠の言葉を大声で叫び、卓越した銃の扱いを見せるが、その大声に気が付き現れた教官を射殺、自身も銃口を口に加え引き金を引く。

 

ベトナムへ・・・

03_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 1968年、米軍機関紙の報道員となったジョーカーは取材のため前線部隊に同行、テト攻勢さ中の激戦地フエ市で最前線に身を置くことになった。最前線では訓練所同期のカウボーイに再会するものの、小隊長は砲撃により戦死、分隊長はブービートラップで戦死してしまう。その後、狙撃兵に狙い撃ちされたカウボーイ始め隊員達は次々に戦死していく。

 多くの隊員を失いながらもジョーカー達は狙撃兵を追い詰めることに成功、狙撃兵の背後を取ったジョーカーが見たのはAK47自動小銃で狙撃を行っていた少女であった。躊躇するジョーカーに銃を向ける狙撃兵の少女、少女の銃が火を噴く寸前に仲間の銃弾により少女は斃れる。体中に銃弾を受け瀕死の状態となった少女はベトナム語で祈りの言葉を唱えたのち、片言の英語で自分を殺してくれと懇願する。迷った挙句にジョーカーはその少女を射殺することにしたのだった。

 

戦争について考えなければならない

 ついついストーリーの紹介が長くなってしまったが、特に訓練センターで新兵たちが人間性を失っていくのが印象に残る。射殺された教官、ゴーマー・パイルの自殺という衝撃的な事件が起こったにも関わらず、何事もなかったように進むストーリー。戦場ではヘリコプターから無差別にベトナム人を殺害する米兵。感傷的なシーンもなく簡単に死んでいく米兵達。監督が描きたかったのはこういった無機質な戦争の姿であったのだろう。

 後半の少女狙撃兵の戦い方も非常に洗練されたものでターゲットにした兵士に敢えて致命傷を与えず、仲間達の前でなぶり殺しにしていき、助けに来た仲間を次々と殺していくという方法であった。その残酷な方法で戦い続けたのはまだ10代前半とも思える少女であり、死の間際に祈りの言葉を唱えるという死を怖がる「普通の女の子」であった。

 瀕死の状態の少女は止めを刺してくれと懇願する。これは潔いということではない。ジョーカーの仲間であるアニマルマザーが主張したように、このまま瀕死の状態で生かしておきネズミ等に食われて苦しんで死しんでいくことになる。少女が止めを刺すことを懇願したのは苦痛からの解放だったのだろう。「優しい」ジョーカーはその気持ちを汲み取って1発で射殺する。

 そして地獄から脱出したジョーカー達は制圧したフエ市の戦場をミッキーマウスマーチを合唱しながら歩いていく。平和の象徴であるミッキーマウス。ネズミに食われることの恐怖のため殺してくれと頼んだ少女はベトナムにさえ生まれていなければディズニーランドで夢中になって遊ぶ年頃であったのだろう。

 

登場する銃器等

 

M14自動小銃

04_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 話が重くなってしまったが、ここで登場する銃器について解説していこう。まず主人公達が訓練センターで使用するのはM14自動小銃。この小銃は1954年に設計された自動小銃で口径は7.62mmで大戦中に米軍の主力小銃であったM1小銃の後継にあたる。M1が使用する弾薬が30-06弾であるのに対してM14は7.62×51mmNATO弾を使用する。30-06弾に比べて7.62×51mmNATO弾はカートリッジ長が短縮されているが、これは火薬の性能が高くなったためであり、同等の威力の弾薬と考えて良い。

 M1との最大の違いはフルオート機能を備えていることであるが、曲銃床である上に7.62mm弾という強力なカートリッジを使用したためにフルオートでの射撃は困難であった。このため制式採用はされたもののベトナム戦争初期に使用された後は、5.56×45mmNATO弾を使用するM16自動小銃が制式採用されM14自動小銃は一部を除いて第一線からは退いた。

 

 

M16自動小銃

05_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 M14自動小銃が設計された3年後の1957年に銃器設計者ユージン・ストーナーにより設計された自動小銃である。口径はM14の7.62mmに対して5.56mmと小口径化され、それまでの銃器が鋼鉄に木製ストックであったのに対してフレームにアルミニュウムを採用、ハンドガード、ストックにプラスチックを採用する等、斬新な自動小銃であった。1962年にこのM16の高性能に着目した空軍が制式採用、その後陸軍、海軍も制式採用した。

 当初は使用している火薬がM16と合わなかったために作動不良が頻発したり、作動方式がガス圧直接利用方式であったために燃えカスが付着する等の問題が起こったが、基本設計が非常に優れた銃器であるため様々な改良を加えられたM4カービンが現在でも米軍の主力小銃として使用されている。本作では戦場ではほぼ全ての米兵がM16を使用している。因みに発砲シーン以外では日本のモデルガンメーカーであるMGC製モデルガンが多数使用されている。これは銃右側面のボルトホワードアシストの形状の違いによって判別することが可能である(本作では発砲用のM16にはボルトホワードアシストがない)。

 

 

AK47自動小銃

06_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 1947年に設計されたソビエト製自動小銃で7.62×39mm弾を使用する。特徴はとにかく頑丈で壊れないという非常に信頼性の高い小銃である。M16、FN-FAL、G3と並んで世界4大自動小銃とも言われる名銃である。ドイツの突撃銃であるStG44の影響を強く受けた銃で、当初はプレス加工で製作されたがのちに削り出しに変更されている。

 反動が非常に強いという欠点があるものの、AK47もM16同様、基本設計が非常に優れた銃であるため現在でもロシアを始め多くの国で改良型が使用されている。

 

 

M60汎用機関銃

07_フルメタルジャケット
(画像はwikipediaより転載)

 

 ドイツの汎用機関銃MG42をベースに開発した汎用機関銃で1957年に米軍に制式採用された。ベルト給弾方式の機関銃で、加熱するため銃身は200発程度で交換する必要がある。ベトナム戦争時にはあまりにも弾薬消費量が多く、重量もあるため「豚」というニックネームが付けられた。

 しかし他の汎用機関銃と比較すると重量は比較的軽い方である。当初は銃身に二脚が設置されていたため銃身交換時には二脚が使用できず交換に手間がかかった。このため改良型では二脚はガスチューブに設置されるようになった。総生産数は22万5000丁で現在でも使用されているが米軍では新型機関銃に変更予定である。

 通常は射手と弾薬手のチームで運用されるが、実戦では一人で使用するケースもあり、劇中ではアニマルマザーが一人で使用している。

 

 

まとめ

 

 かなり昔の作品であり、監督のスタンリー・キューブリックは1999年、ハートマン軍曹役のリー・アーメイは2018年に他界している。ベトナム戦争は現在では歴史となっているが、1987年当時は戦後10年ちょっとしか経ておらず最新の戦争であった。米国の映画の割には米軍に対して辛辣であるのは、ベトナム戦争時の反戦運動の影響を受けていると考えて良いだろう。

 ベトナム戦争は世界最強の米軍が全力を以って戦ったにもかかわらず東南アジアの小国であるベトナムのさらに北半分の政府に勝利することが出来なかった「米国で最も人気のない戦争」であり、厭戦気分になった米軍内では麻薬が蔓延して社会問題にもなった。

 本作はそのベトナム戦争をテーマにして訓練を通して人間が殺人機械に作り替えられていくという事実、これらの戦争の上に現在の平和があるという監督のメッセージは現在においても全く色あせることはない。

 

 


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