
(画像はwikipediaより転載)
MP5とは、1960年代にドイツのH&K社が開発したサブマシンガンでローラーロッキング方式、クローズドボルト方式を採用しているため命中精度が高く、同時に価格も高いサブマシンガンである。高価格高性能であるが故、予算に余裕のある国の特殊部隊に多く採用されている。イギリス軍特殊部隊SASが採用しており、日本でも警察特殊部隊等が採用している。
MP5(実銃)
性能
全長 550mm(ストック展開時700mm)
重量 3,080g
口径 9mm
使用弾薬 9mmパラベラム弾
装弾数 30発
設計・開発 ティロ・メーラー / H&K社
開発

(画像はwikipediaより転載)
1960年代に入ると西ドイツにおいて大量のサブマシンガンの需要が発生、これに対してH&K社は1964年よりサブマシンガンの開発を開始する。ベースとなったのはスペインセトメ社のセトメ自動小銃でこのセトメ自動小銃が改良された結果、G3自動小銃として西ドイツ連邦軍に制式採用された。この開発の過程でH&K社はG3のスケールダウンモデルを計画、9mmパラベラム弾を使用するサブマシンガンを開発した。このサブマシンガンはHK54と命名され、西ドイツ軍の制式サブマシンガントライアルに出品したものの、政治的な理由からイスラエル製UZIサブマシンガンが制式採用された。これに対してH&K社は警察向け、輸出向けに販売すべく計画を変更、サイトやバレルに改良を加えた発展型モデルとしてMP5が完成した。
作動方式はローラー遅延ブローバック方式である。この方式は通常のブローバックがボルトの質量でボルトの後退を遅らせるのに対して、ボルトに設置されたローラーが銃本体の溝に引っかかることにより、その抵抗によってブローバックを遅らせる方式である。この方式は薬室内の圧力が低下してからボルトが後退するため、命中精度が高くなり、さらにクローズドボルト方式を採用していることもありサブマシンガンとしては非常に高い命中精度を実現した反面、この方式は単純なブローバック、オープンボルト方式に比べ高性能な分、部品点数が多くなるため高価格となってしまうという問題点もあった。
しかしMP5は完成すると、1966年には西ドイツ連邦国境警備隊に採用、1970年代後半にはイギリス陸軍特殊部隊SASも採用された他、比較的予算に余裕のある国の特殊部隊に多く採用されている。
バリエーション

(画像はwikipediaより転載)
1960年代から続くベストセラーのためバリエーションは多い。オリジナルのMP5は固定ストック仕様のものでこれを伸縮式ストックに改良したのがA1、第一期改良型の固定式ストックモデルがA2、同改良型の伸縮式ストックモデルがA3、第二期改良型の固定ストックがA4、伸縮式ストックがA5となっている。
これらとは別にコンパクトモデルとしてMP5Kシリーズがあり、固定リアサイト装備のA1、3点バースト機能を備えたA4、その両方を備えたA5、折りたたみ式ストックを装備したPDWモデルがある他、特殊部隊向けにサプレッサーを装備したSDシリーズがある。このSDシリーズは、ストック無しのSD1(3点バースト機能装備はSD4)、固定ストックのSD2(同SD5)、伸縮式ストックのSD3(同SD6)がある。そのほか民間向けにバレルが延長されセミオート仕様としたのHK94、珍しいモデルとしては10mm弾仕様のMP5/10、40S&W弾仕様のMP5/40、357SIG弾仕様のMP5/357がある。
MP5(トイガン)
概要
トイガンでは1986年に東京マルイがコッキング式エアガンとしてMP5A3を発売、1987年にはファルコントーイがフルオートガスガンでMP5K、1988年には東京マルイがガスフルオート排莢式のA3、1989年にはMGCが電動ガスガンとしてMP5K、1990年にはファルコントーイがSD3、1991年にはMP5Kを発売、同年、JACがガスフルオートで3点バースト機能を装備したA5、SD5を発売している。電動ガンとしては1992年に東京マルイが電動第3弾としてA4、A5を発売したのを皮切りに2004年までほぼ毎年のようにバリエーション展開を行っていた他、2009年と2012年にはハイサイクルモデルも登場している。さらに2021年8月18日には東京マルイから次世代電動ガンで発売されている。他にも人気モデルのため、海外メーカーも数多く発売している。
東京マルイ MP5A5 次世代電動ガン
性能
全長 500mm(ストック展開時660mm)
重量 3,100g
装弾数 72発
初速 90m/s前後
定価 59,800円
2021年に東京マルイが満を持して発売したMP5である。東京マルイの最新技術がふんだんに盛り込まれている2021年時点での電動ガンの最高傑作と言って良い。このモデルはこれまでの同社製MP5の外装が樹脂製であったのに対して亜鉛合金を採用、サイトや各パーツも金属を多用しているため剛性が高く、重量も実銃と同様の重さを再現している。
フロント・リアサイトも正確に作り込まれており、エジェクションポートも金属製で射撃に際しては作動するようになっている他、「HKスラップ」と呼ばれるボルトハンドルを引いた状態からハンドルを手で下に叩きつけることでカートリッジの装填を行う機能が再現されている等、リアリティを追求したモデルとなっている。
実射性能も高く、このモデルで新たに採用されたMシステムにより3点バースト射撃も可能となっている。このMシステムはトリガーコントロールにIC回路を組み込んだもので3点バースト以外にもレスポンスの向上やセミオートの「切れの良さ」をも向上させている。東京マルイ製であるので命中精度も非常に高いことからこれまでにモデルアップされたMP5の中でも最高のモデルであるだけでなく2021年時点での最高の電動ガンと言うことが出来る。
東京マルイ MP5A5 ハイサイクル電動ガン
性能
全長 535mm(ストック伸長時660)
重量 2,430g
装弾数 400発
初速 82m/s前後
定価 31,800円
外装は樹脂製であるが強度の必要なパーツは金属製で出来ており再現性は高く、剛性もしっかりしている。ハイサイクルモデルのため高速モーターに合わせて内部パーツも通常の電動ガンに比べて耐久性の高いものに変更されている。弾倉はドラムマガジン仕様で装弾数は400発、重量は2.4kgとかなり軽量で実銃譲りの取り回し易さと相まって実用本位の電動ガンといえる。命中精度や直進性に関しては非常に良いというまさに究極のウェポンである。
まとめ
MP5は通常のブローバック、オープンボルト式に比べ構造が複雑になっているため高価格ではあるが、同時に高性能でもあるので多くの国の法執行機関で制式採用されている銃である。1960年代の銃であるが、大きな改良をされることなく現在まで世界中で使用されている傑作中の傑作サブマシンガンである。