トイレで読む向けブログ

全国のトイレ人よ立ち上がれ! 〜 since 2005 〜

その他本

米原万里 著
集英社 (2007/8/17)

 

 友人に米原万里の本は面白いと薦められたので読んでみた。内容は軽いエッセイだが、米原氏はこの本の出版時にはすでに他界されていたようだ。内容はかなり軽快で面白い。すーっと読めてしまう。「男はサンプルである」という説は面白い。女が生物の正当であり、男は女にどの遺伝子を残そうか選ばせるためのサンプルなのだという。

 もちろん生物学的には全然違うかもしれないが、大事なのは「そういう視点がある」ということだ。確かに同じ性別での身長差は女より男の方が差が大きい。変質的な趣味(モデルガンとか??)を持つのも男の方が圧倒的だ。それと日本人が世界を見るとき、最強国に狙いを定めて徹底的にその国のことを学ぶという。かつての中国であったり、鎖国時代のオランダであったり、戦後のアメリカであったりと。

 しかし最強国の文化まで最高だとは限らない。得てして日本人は独自の文化を捨て、その最強国の文化と同一化してしまいたがることすらあるという。これは「自国の文化=民族」として必死で守る必要のなかった地理的条件から来ているのではないかということだ。

 さらには通訳者として通訳の難しさについても語っている。米原氏は通訳者でもあるので、通訳の話も面白かった。言葉というのはいろんな意味があり側面があるので、例えば、鋼鉄の男といえば「強い意志を持った男」であるが、「股間が鋼鉄」となればとても書けないような意味になってしまう。鋼鉄という言葉一つをとってもいろんな意味や用法があるというのは面白かった。というよりも米原氏の例えや書きっぷりが面白いというのもあるが。。。

 因みに本書で私が一番印象に残ったのは、米原氏が「突然神様が現れて願い事を叶えてくれる状態」になった時のために願い事を考えておいた方がいいという提案だ。確かに洋の東西を問わず、このような話はある。ということは私にも突然起こる可能性はあるということだ。何にしようかと考えたのだが、なかなか思いつかない。

 そういえば『魔法少女まどか☆マギカ』の中で美樹さやかが、「願いが決まらないというのは満たされている証拠」というようなことを言っていたような気がする。私の願いは結局、努力すればできることばかりだった。単純に努力が足りないということだろうか。これはせいぜい精進するとして、もっと実現不可能な願い事でも考えよう。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

 著者の勝間和代氏は元公認会計士で外資系金融コンサルタント会社にいたバリバリの人だ。ブログを読むとちょっとした変わり者だということに気が付くのだが、まあ、それはいいとして、本書はその勝間氏が資産の運用方法について書いたものだ。ちょっと古い本になるが、内容はかなりいい。勝間氏はかなり真面目な人なのが本書を読んでいると分かる。勝間氏の主張はそのタイトル通り、資産を銀行に預けていても金が増えないので、リスクを取って金融商品を買った方がいいというもの。

 いくつかの金融商品を羅列してその損得を比較していく。一般の人が最初に想像する株式投資は実際は素人が参入しても機関投資家というプロに鴨にされることがほとんどだという。情報量が全然違うという。よく巷で株式投資必勝法のような本があるが、あれはたまたま成功しただけだという。もしも本当に絶対成功する方法であるならばノーベル賞もので、そもそもそんな方法があったら人には教えないという。妙に納得。

 その他、FXや不動産投資、コモディティ等、いろんな金融商品を紹介しているが、結局、インデックス型の投資信託が良いという結論だ。本書を読んでではないが(むしろインデックス投資をしたいから本書を読んだ)、私もやってみようと考えている。商品の探し方まで書いてあるのでこの一冊があれば資産運用に関してはもう本は必要ないというくらいの有用な本だ。

 

【追記】

 

 この本を読んで、早速、投資信託を購入したのだが、私がいい加減に選んだのが悪かったのか惨敗してしまった。結局、120万円ほどつっこんで15000円位損失を出し撤退。だからといって勝間さんの本がダメとは言えない。実際、勝間勝代さんが主宰する「勝間塾」には、その利益で会費を払っている人もいるという。。。まあ、参考程度に。

 

【さらに追記】

 

 上記追記からさらに数年後の現在(2020年)、撤退時に20万円程残しておいた投資信託の利益が2万円を超えている。勝間和代氏の指摘通りに放置しておいたら10%以上資産が増加した。さすがに史上最年少の公認会計士合格者であり金融の専門家である。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

 本書はタイトルのインパクトと共に社会に衝撃を与えた。かつては中流というものが存在していたが今後は、上流階級と下流階級に分かれていき、さらにそれらの階層が親から子へと再生産されるとしている。下層ではなく、敢えて下流としているのは貧困ではあるが、ネットや最低限の生活娯楽はある階層を表した三浦氏の造語。

 内容は実は社会評論の本ではなく、そういった社会になることを把握した上でのマーケティング戦略を書いたもの。基本的には下流に低価格のものを売るより、上流階級に高価格、高付加価値の商品を売ることを提案する。現在(2021年)、三浦氏の予想はほぼ当たっているといっていいだろう。ただ、残念なのは今までの時代を平等な理想社会のような絵描き方をしている点に関しては若干疑問。

 一億総中流社会というのは、多くの国民の意識の上のもので、実際は政治家は世襲されていたり、大企業は表向きはともかく、実際はコネで社会の上層部の人間が再生産されていたり、出身大学によって昇進のスピードが違ったりもする。実際は平等でもないし、階層の再生産もされている。

 著者の経歴をみると、1957、58年生まれで、まさに高度経済成長の恩恵を享受してきた世代。大学も東大、一橋と超一流。高度経済成長期の典型的エリート。今までの時代であれば一番恩恵を受ける立場。なんてちょっと邪推をしてみたくもなってしまう。

 今までの日本にも低所得者もいるわけだし、中流意識はあっても年収は人によって違う。三浦氏のいう階級社会というのは、まさに今までの日本そのもののようにも見える。いろいろ書いたが、逆にいえばそれだけ考えさせてくれる本ということもできる。本書を読んだのは10年以上前であるが、久しぶりに読み直してみたい気もする。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐々木俊尚 著
佐々木俊尚 (2013/6/26)

 

 正直、ぞっとするほどの良書だ。私が最近読んだ本の中で5本の指に入るほどの良書だと思う。IT革命の結果の未来を過去の歴史からみていくという、まさにE・H・カーの主張を地で行くような本だ。視点は非常に面白い。

 

佐々木 俊尚  佐々木 俊尚(ささき としなお、1961年12月5日 - )は、日本のジャーナリスト・評論家。兵庫県西脇市出身。愛知県立岡崎高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部政治学科中退後、1988年毎日新聞社入社。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。1999年10月、アスキーに移籍。『月刊アスキー』編集部などを経て2003年2月退社。現在フリー。
(wikipediaより一部転載)

 

 歴史を通してみていくと常にシステムは興亡を繰り返すということだ。かつては帝国が栄え、そして現在の国民国家・民主主義に変わって行った。しかし国民国家・民主主義というシステムも衰退が始まっているという。大企業は本社こそ先進国においているものの、工場は後進国に置かれる場合が多く、先進国の雇用とはならない。そして税金も大して落とさない。これは池上彰・佐藤優『新・戦争論』中でイスラエル高官が同様のことを語っていた。

 全ては国家を迂回して動いていく。そして結果どうなるか。世界は「フラット」になっていくという。今迄先進国に集中していた富は大企業が後進国に工場を建設し、そこで人を雇うことによって後進国に流れることにより世界中の給与水準は平均化していく。さらに「場」が世界を変えていくという。「場」とはインターネットによって作られたただ一つの空間・世界といえばいいだろうか。そこは世界に解放されており、その「場」を利用して人々は活動していく。そして私たちはレイアー化され、私たちと「場」との共犯関係が始まる。

 本書は読んでいて本当に楽しかったし良い本だった。だいぶ売れた本なのでブックオフに行けば108円で買えるかも。定価でも安いと思えるほど濃厚な内容だった。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

堀江貴文 著
SBクリエイティブ (2015/12/5)

 

 何も必要ない。必要なのはトライ&エラーを繰り返すことだけ。というのが本書で「ホリエモン」が伝えたいことだ。情報好きの私が一番興味を持ったのは、情報の保存の仕方である。これは簡単、「情報は覚えなくていい」という。必要な情報は頭に残っている。不要な情報は消えてしまう。単純にそれだけのことだ。

 そういえば佐藤優『情報力―情報戦を勝ち抜く“知の技法”』にも同じことが書いてあったな。情報というのは過多になると脳内で情報ネットワークが生まれるのではないかというのが堀江氏の考え。確かにそんな気はする。これはやってみたい。本書に書いてある最も重要な一文がある。私は冒頭のこの一文を読んで愕然として結構、むなしい気持ちになってしまった。何故ならその通りだったからだ。その一文とは。。。

 

本当にやりたかったり切羽詰まっていたりしたら、もう動いているはずなので、こんな本を読んでいる場合ではないだろう。〜中略〜まあ、ぱっと読んで、気づいて、この本は捨ててしまう、くらいがやっぱり一番いいと思う。
(『本音で生きる』より引用)

 

 その通り。冒頭に書くというのも辛辣な。。。その通りなので何も言えない。私も今は決断が出来なくて身動きがとれない状態なので本書を買ってしまっているのだ。内容は実はこのブログに書いてあることに尽きると思う。少なくとも私の中ではそうだった。簡単に読めるし、ストレートな言葉で書いてあるので興味のある人は読んでみるといい。

 それぞれ気付かされるものはあると思う。私は情報についての努力が全然足りないことに気づかされた。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

 

 本書は速読法に関する本。速読というとみんなフォトリーディングのようなものを想像しがちだが、本書は要するに「不要な部分は読み飛ばせ」、自分自身の知識や興味をたくさん持てば字が自然と頭に入ってくるというようなことだ。面白かったのは、本には内容に濃淡があり、本の中にも重要な部分とそうでない部分があるというところだろうか。

 速読をしたことのない人は速読をしてみた方がいい。私も意外と速読はできるのだ。といっても私の速読はこの著者とほとんど同じ方法だ。まず、難解な本の速読は無理。これは中島氏もどうようのことを書いている。中島氏は難解な本を漫画化したものや解説本を読めと書いているが、私はこれには反対。

 漫画化は漫画作者が内容を正確に理解していない可能性がある。難解な本の解説本はこれまた難解である場合が多いので元の本を読んだ方がいい。これは熟読しよう。これは私の考えだが、本には理論や仕組み等を得るための理論書というようなもの。例えばマルクスやマックスウェーバーや哲学書等があるが、それらは熟読しなければならない。

 しかし情報を得るための本、経験、エピソード等、データとして活用したいものは速読が可能だと思う。理論書が幹ならこれらの本は枝葉だ。合わせて初めて木になる。私の読書論になってしまったが、本書は、目次だけ見ればあとはあなたが思っている通りのことが書いてある。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

斎藤貴男 著
岩波書店 (2004/7/21)

 

 アマゾンのレビューで賛否両論の本だ。最近、プロパガンダ系の本をよく読んでいる。アマゾンでおススメされたので購入してしまった次第だ。正直、あまり面白くない。私としては賛否両論の完全に「否」の方だ。極端に書けば内容はほとんど「引用」だ。論文、本の一部を抜粋し、それに対して著者が感想を書くというスタイルになっている。

 引用はもちろん著者の主張を代弁したものであるが、できれば自身の言葉で書いてほしかった。結局主張したいことは伝わるが、著者の言葉でなければ心に響かない。非常に残念。斎藤氏の著書はこの一冊しか読んだことがないので他の著書がどうなのかは知らない。主張していることは納得できるが、斎藤氏自身の言葉で書かれた本を読みたいものだ。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

 

 磯山友幸『「理」と「情」の狭間』について書いてみたい。本書は、ワイドショーを騒がした大塚家具の分裂劇の内側を元記者の著者が比較的客観的に書いたものだ。

 単なるルポルタージュではなく、今の社会情勢から同族企業の継承という問題を描いたものだ。本書のタイトルは情で訴える父勝久と理で訴える娘久美子の特長を現したものだ。大塚家具の分裂の内情の大きな原因というのは父勝久が築いた今までの大塚家具のビジネスモデルが崩壊し始めているということだった。

 大塚家具のビジネスモデルというのは、会員制である程度の高級家具をまとめ買いする住宅を新築した人や新婚者を相手にしたものだった。しかし少子化や住宅の新築数が減少している中、大塚家具の売り上げも徐々に減少してきた。これに対して既存のビジネスモデルを継続しようとする父と新しいビジネスモデルに切り替えようとする娘の戦いであったようだ。結局は、娘久美子が父勝久を会社から追い出し騒動は終わる。

 内容は上記のようなことを事実に基づいて書いている。本書を読んでの私の感想だが、著者は客観性を保っていながらもやはり娘久美子側の意見に傾いているような気がする。「やはり」というのは世間全般が娘の意見を支持しているように思えるからだ。古い体制と戦う美人社長と古い体制を象徴する父勝久という結構分かり易い構図になっている。

 これはそれぞれのPR会社の技量だろう。特に娘久美子の会見は上手かった。父は「娘」に対して家族問題として会見を開いたが、娘は会社のビジネスモデルの違いとして会見を「冷静に」行った。基本的に記者会見は冷静な方が勝つ。youtubeで検索をかけてもらえば分かるが、娘の記者会見の動画は多く上がっているが、父勝久の会見はほとんどない(私が検索した結果は全くなかった)。

 因みにPR会社の暗躍を知りたければ『戦争広告代理店』を読むと良い。ボスニア紛争の裏で情報操作がどのように行われていたかが分かる。それはそうと記者会見という情報戦では娘が勝利した。では実際、父のビジネスモデルというのはそれほどダメだったのだろうか。私はそうは思わない。父は高級志向の富裕層をターゲットにしているが、娘は中流層をターゲットとしている。しかし娘の層にはイケアやニトリという大企業が控えているのだ。

 大企業と戦うには知恵が必要だ。娘も優秀な経営者なのでいろいろな戦略を練るだろうが、父の富裕層向けビジネスの方が競合が少なく勝ち目が多くなると思う。結果的に父は「匠大塚」という新会社を起こしたが、大塚家具とは競合しない。勝久に言わせると業者も新たに開拓したそうだ。その点でも全く大塚家具とは競合しない。父娘の仲直りが出来れば経営統合してもおかしくはない。

 ただ、これは一部に言われているような出来レースではないと思う。結果的にはそうなったというだけだ。ここまで複雑な経緯を経た結果を事前に予測できるほど人間は頭が良くない。内幕は当事者が主張している通りなのだろう。結果、娘はフレイザーの言う、「王殺し」を行うこととなった。これに対して「王」はまだ「王」であることを示した。というのが私の感想だ。

 それはそうと著者が結局主張したかったことは創業者から二代目に引き継ぐことの難しさだ。初代はカリスマ性がある。しかし二代目にはそれがない。全く同じことをしても「真似」となってしまう。結果、二代目は伝統的統治か合法的統治かを選ぶしかない。洋の東西を問わず古来から続く問題だ。しかし企業経営となれば「伝統的統治」という訳にはいかないだろう。久美子氏の主張するように合法的統治しか方法はない。

 一つの組織が勃興し継続していくためには基本的に「道を切り開く人」「道を均す人」「道を広げる人」の三タイプの人が必要だ。これは企業に限った問題ではない。徳川家康が道を開き、秀忠が道を均し、家光が広げる。その結果、250年の支配体制が完成した。大塚家具は二代目の道を均すフェーズに突入したのは間違いない。これからその道をどう均して広げていくのか経営者の器量が問われる。久美子氏にとっては茨の道だ。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐藤優 著
青春出版社 (2013/10/2)

 

 知の巨人と言われている佐藤優氏の経験から導き出された人間関係論とでもいうような本である。佐藤氏は元来キリスト教神学の専門家であり、哲学にも造詣が深い。その知識の蓄積から生まれる佐藤氏の著作は非常に読み応えのあるものが多い。

 佐藤氏の本の多くは、情報分析という生ものをメインで取り扱っていることから鮮度が落ちれば叩き売りされそうなものだが、佐藤氏の本は時間が経っても中古で値段があまり下がらない。理由は佐藤氏の知識の深さが本の内容に反映しているからだと私は考えている。

 それはそうと、この『人に強くなる極意』、この本は他の佐藤氏の著作とはちょっと毛色の違うものという感じを受けた。内容は平易で読みやすいものであった。基本的には佐藤氏の対人関係のノウハウ集といってもいいかもしれない。人は見えないものに対して恐怖を感じる等は非常に説得力がある。

 ただ、平易で読みやすいというのは裏を返せば内容が薄いということでもあり、今までの佐藤氏の著作と比べるといささか内容が薄い。書いてあることは佐藤氏の知識、経験から出たものではあるが、いかにも自己啓発本的な内容でちょっと物足りない。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

苫米地英人 著
コグニティブリサーチラボ株式会社 (2015/3/15)

 

 脳科学者として有名な著者の日本論である。

 日本人は何故こうも従順なのか。著者は東日本大震災で被災者が略奪をせずに並んで救援物資を受け取る姿の中に一般に言われるような日本人のマナーの良さとは取らず、日本人の従順さ、奴隷的な従属体質を見る。スーパー等に食料品があるにも関わらず、それを盗らず救援物資を空腹で待つという姿は、生存権よりも財産権が優先されている状態を表している。

 このような状態はどうして生まれたのであろうか。これは日本に儒教思想が根付いている結果だという。儒教思想は家族の上下関係を基本にそれを社会全体に拡大していく考え方であるが、基本的に秩序を守り上下の分別をはっきりさせるという側面も持つ。これが日本人の従順さの理由であると考える。しかし儒教は中国、朝鮮半島、東アジア全域に広く受け入れられている考え方であるにも関わらず、中国、朝鮮半島の人はここまで従順ではないという。そこに第二の理由が存在する。それが日本人の他人の目を気にするという価値観である。

 要するにスーパーの食料品を奪わなかったのは、善意からではなく、他人の目を気にしてできなかったと考える。これはフーコーの指摘する相互監視社会そのものであるという。相互監視社会とは権力者が社会の構成員を監視するのではなく、構成員が相互に監視し合うというメカニズムのことだ。この相互監視社会が日本では発達しているという。

 さらに著者は日本の裁判制度の情状酌量についても手厳しく批判する。情状酌量とはその人の人となりによって判決の結果が変わってしまう。例えば、裁判所にスーツを着てくるかボロボロの私服を着てくるのかで刑の軽重が変わってしまうということが起こる。例えばライブドア事件で堀江氏は50億円超の粉飾をした。これに対し、山一證券は1000億円の粉飾を出した。判決は堀江氏のみ実刑判決である。これは堀江氏が態度が良くなかったからだと指摘する。このように判決の内容が裁判官の心証によって決まってしまうことを批判する。

 さらに小売店と客との関係にも言及する。小売店の販売員と客との関係は基本的に客の方が偉いということになっている。普通会社内で吐いたパワハラになるような暴言も客が従業員に言う場合にはなんの咎めもない。このような状態が恒常化しているため、商人になるんだったら役人にという風になってしまう。

 これらのことが積み重なることによって日本に閉塞感が漂っているのだという。そしてこれに対する解決法は、日本から出ることであるという。携帯のキャリアを選ぶように国家を選ぶことを著者は提言する。そこまでいかなくても道州制を施行して、各道に独特の政治体制を敷くことで日本国内でも政治体制を選べるようにすればいいという。

 以上が本書の内容の大まかな部分である。基本的には私と全く同意見である。正直、ここまで同意見の人がいることに驚いたくらいだ。苫米地氏はとかく胡散臭いイメージが付きまとうが本書の内容はまさに正論であると思う。少なくともこれくらい市民が強気に出なければ日本は変わらない。社会保障を充実させるという名目で消費税を増税し(消費税増税の理由を知らない人も大勢いる)、同時に年金支給額を切り下げられても、じっと耐える日本人、これでいいのだろうか。本書を読むことをお勧めする。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

東 茂由 著
経済界 (2011/3/1)

 

 私は自己啓発本はあまり好きではないのだ。どうしてかというと結局、「ポジティブに頑張って生きましょう」ということを色々な経験をした人が色々な書き方で書いているだけなので一冊読めばもういいという感じになってしまう。それなのになぜ今日はこの自己啓発本を紹介するかというと、この著者、経歴がめちゃくちゃなのだ。

 元々組織の中でやっていけない性格であった著者は、大学卒業後、就職するも転職を繰り返しとうとう会社の人事部長に、

 

「東くんはどこの会社に行っても勤まらない。そのことは保証する」

 

 とまで言われてしまったのだ。このエピソードを立ち読みで読んだ直後、私はこの本を持ち、そのままレジへと向かったのだった。私もサラリーマンを少しだけやったが、サラリーマンには向かない性格だったようで苦痛で仕方無かった。結局、会社は辞めたのだが、こういう私にとっては著者はものすごくシンパシーを感じるのだ。

 本書の内容はというと、要するに「捨てる」ということに尽きる。仕事を捨て、人間関係を捨て、自己を捨てる。捨てた結果、より大きなものが手に入るという。この本の中で私がドキッとしたのは米国ビジネス社会の言葉で

 

「コンフォートゾーンを超えよ」

 

 という言葉であった。コンフォートゾーンとは心地いいゆりかごのような場所のことで、居心地のいい職場、人間関係を指している。そこにいるのは心地いいがそこでは成長は得られないという。

 

「周りがバカだらけというのはあなたもバカの一員であり、そこにいる限り成長は望めない」

 

 さらに嫌なことを手放す。無理してやればストレスになる。因みに子供の頃の好き嫌いがあなたの本質なのだそうだ。さらにピカソの話も秀逸である。ピカソは自分の過去の作品のマネはしなかったという。「自分の作品のマネをするくらいなら他人の作品のマネをした方がいい」とまで言い切っている。

 思い込みを捨て、こだわりを捨て成長し続ける。しかしそこには絶えずベースに「悲観主義があることが望ましい」という。これはかなり賛成できる。世間ではポジティブシンキングやらプラス思考やらでやたらと明るく前向きにものを考えるのが流行っているようだ。しかしそう考えなければいけない状態というのがそもそも問題なのである。その問題を解決しないで自分を騙している人がどれだけ多いことか!

 この本はブックオフでもアマゾンでも格安で売っている。ブックオフでは基本的に108円、アマゾンでは1円。ざっと読むだけでも面白いと思う。さいごにこの本の言葉の中で特に私が気に入った言葉で〆ようと思う。

 

40歳過ぎのいい人はどうでもいい人

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

アルボムッレ・スマナサーラ 著
筑摩書房 (2008/2/5)

 

 著者は仏教思想では全てのものは関係しているという。例えば、豚肉を食べたとしよう。そこで食べた人間と豚の関係がある。さらに豚も食べ物を食べる。養豚場の豚であれば世話をする人がいる。豚肉を食べるという行為自体、様々な関係性の上に成立している。このように人間(自然のもの全て)が関係性の中で生きている。さらに著者は生きる目的を考えてはいけないという。存在していることが一番大切なのである。存在していること自体が誰かに望まれ、誰かを助けいてるということであろう。

 そして人生は楽しむものである。苦しい中では何も得られないという。仕事観についても言及している。仕事は好きなことをやるのではなく出来ることをやるのだ。出来ることをさらに高めるために勉強することが必要だという。これも関係性という概念で考えれば仏教の「他利」の考え方に起因していると言える。そして仏教で守らなければならないことは5つのしてはいけないこと(五戒)、4つのしなければならないこと(四摂事)があるという。

 

 五戒とは

”垰生、生き物を殺してはいけない。
不偸盗、他人のものを盗んではいけない。
I埃抂戒、性欲を満たしてはいけない。
ど毀儻譟嘘をついてはいけない。
ド坩酒、酒を飲んではいけない。

 

 である。イ亮鬚魄んではいけないというのは薬物も含まれる。理由は頭が悪くなるからである。仏教では頭が悪くなることはやってはいけないらしい。対して四摂事とは、

 

”杙棔⊃佑鵬燭してあげる。
愛言、やさしい言葉を話す。
B祥、人を助けてあげる。
な薪、人を差別しない。

 

 である。これを守った上で智慧を使って生きるのが初期仏教の教えであるという。ここで著者のプロフィールをwikipediaから引用してみる。

 

 アルボムッレ・スマナサーラ(Alubomulle Sumanasara 1945年-)はスリランカ出身の僧侶。スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老であり、スリランカ上座仏教シャム派の日本大サンガ主任長老、日本テーラワーダ仏教協会長老、スリランカ・キリタラマヤ精舎住職。日本において仏教伝道、および瞑想指導を行う。『怒らないこと』(サンガ新書)など多数の著書がある。仏教とは今この場で役に立ち、自ら実践し理解する智慧の教えであると説く。

 

経歴

1945年、スリランカのアルボ村に生まれた。名前のアルボムッレは出身地に由来する。13歳で沙弥出家、1965年に具足戒を受けて比丘となった。

スリランカの国立ケラニア大学で仏教哲学の教鞭を執ったのち、1980年に国費留学生として来日し、大阪外国語大学語学コースを経て駒澤大学大学院人文科学研究科仏教学専攻博士後期課程に進学し、駒澤大学教授奈良康明の下、道元の思想を研究した。その後、スリランカと日本両国での活動を経て、1991年に再来日し、上座仏教修道会にて仏教講演や瞑想指導を本格的に開始した。

1994年11月に、初代会長を鈴木一生として、日本テーラワーダ協会(のちの宗教法人日本テーラワーダ仏教協会)を設立し、2001年5月に東京都渋谷区幡ヶ谷にゴータミー精舎幡ヶ谷テーラワーダ仏教センターを開山し、2005年8月にスリランカ上座仏教シャム派総本山アスギリヤ大精舎にて日本大サンガ主任長老(ナーヤカ長老)に任命された。

(wikipediaより転載)

 

 初期仏教というのはあまりよく分らないがものすごく緩やかで日本人には受け入れやすい思想であろう。因みに一応世界的には日本は仏教国ということになっているらしい。この本を読んで改めて思ったのが、仏教というのは宗教ではなく哲学なんだなぁということ。まあ、宗教と哲学を分けることがナンセンスなのかもしれないが、超越的な存在が神であり、それを信じるのが宗教だとすれば、仏教はむしろ哲学に近いと思う。

 スリランカ内戦で命を狙われた若者に相談された著者は、若者に命を狙っていると思われる組織の自分に対する「殺害予告」のポスターを書かせ張り出したところ、その組織が「自分たちが殺したと思われては困る」ということで若者の警護をしたというエピソード等面白い。なんか読み終えたあとやさしい気持ちになれたのだ。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐藤優 著
扶桑社 (2011/9/28)

 

 本書は、知の巨人と言われる佐藤優氏がその博識と経験を元にして様々な悩みに氏ならではの答えを出すというものである。出版されたのが震災後であることから震災に関する質問が多いが、それ以外にも仕事、人間関係等に対しても広く質問に答えている。

 佐藤氏は一見常識的で型どおりの答えを出しそうな気がするが、各質問に対する佐藤氏の答えは独創的であり、読んでいてハッとさせられる。内容は一般の質問者に対して一問一答式で答えるもの。ロシアでビジネスがやりたい、文筆家として成功したい、インドで働きたいという質問から、外務省に入りたい等々。

 それらに対する答えは、ロシア人は最初はやさしいが自分より金持ちになると面倒だ、文筆家は99%運である、外務省で働きたいなら英語に堪能にならなければならない等、自身の実体験から的確な答えを返す。因みに外務省に入るには、英検一級、若しくは準一級を持つ必要があるという。無論なくても入れるが一級が取れないほど語学センスが無い人は外務省ではやっていけないということだ。2回受けて落ちたら諦めろと厳しい。

 私が特に面白いと思ったのは、男女関係に対する質問の数々だ。カルヴァン派キリスト教の熱心な信者であり、牧師の資格も持つ佐藤氏なので性に関しては当然保守的なのであろうと考えていたが(保守陣営だし)、意外に開放的であった。質問の中で興味深かったのは、イスラム教に入信した方からの質問だ。質問者はイスラム教に入信し、ロシアへの留学経験もあるという。そしてイスラム教を周りに布教したいという。佐藤氏の回答は、布教してはいけないという。それよりも自分自身が他人を思いやり愛を持って生きるというのが大切であるというような回答である。そうすればその姿を見て周りの人々はイスラム教に興味を持つかもしれないとのことだ。

 特定の宗教に入信していない私のような人間からすると勧誘されるのは正直迷惑なのである。無論他人が進行するのは構わないし否定もしないが。佐藤氏のようなスタンスで宗教を信じるのは良いことだと思う。何事も自分の意見を人に押し付けてはいけないのだと考えされられた。

 

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

大石哲之 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013/3/28)

 

 ノマドは3タイプに分かれる。ハイパーノマド、中層ノマド、下層ノマドである。国境を超えるのはエリートのみではない。下層ノマドも仕事を求めて世界を移動する。例えば日本人のフリーターが大連で時給340円の日本語のデータ入力の仕事をしている。しかし中国は物価が年々高騰しており、現在の時給では生活できないので、香港に行って仕事を探すそうだ。

 企業もノマドとして国境を越える。少しでも経費の安い国へ移動する。それは企業がまるごと移動しない場合も多い。部門ごとに最適の地へ移動する。事実、シンガポール等はいろいろな企業の同一部門が集中しているという。

 特に競争が激しい韓国は人材の流出が止まらないという。内需が少なく国内の競争が激しいため、より良い職場を求めて外国へ行くのだ。本書には例としていろいろな人々が登場する。実力をつけるために日本の大企業を辞め、シンガポールの会社でそれまでの半分の給料で働く日本人、日本で大学卒業時に就活したが、全く相手にされず、フリーターとなって、仕事の合間に世界各国を短期旅行を繰り返して調査し、インドネシアの会社に就職した日本人等もいるという。

 この本を読んで初めて気が付いたのは企業もノマド化して国境を越えるということだった。多国籍企業というのは昔からあり、本社をどこに移すかというのが度々ニュースになっていたりしたが、一つの会社が部門ごとに違う国に行くというのは考えていなかった。確かに本社に全部門がある必要はないだろう。メール、電話、スカイプ等を使用すればリアルタイムで連絡を取ることも出来る。これからは各部門にとって居心地の良い国に移動していくという。因みに居心地の良いとは、コストが安い、資材、人材等の補充が容易等の要件が当てはまる国である。

 本書は日本のサラリーマンについても警鐘を鳴らす。日本の企業は新卒で入社した後、三年位かけて各部門の経験を積み、調整のプロとして出世していくが、これは会社内の専門職に過ぎず、ノマド化した時代には対応できないのである。そして突然、ノマドとして生きることを要求される事態が来ることも十分にありうるという。ただ、不安と同時に自己実現を出来る場であるというメリットも存在する。

 日本人でも国内旅行をする感覚で世界を渡り歩く人も多いという。しかし彼らは日本を捨てた訳ではない。彼らは日本が変化するアクティブな国になった時、他国との相対的比較で日本を選ぶという。良くも悪くもこのような時代になっていくのであろう。ただ、このように考えて行くと国家が消えてなくなるのではないかと考える向きもあると思うが、国家はもっと強力であることを最後に書いておく。良くも悪くも・・・。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

 

 著者は貧しい家庭に育った。父親は借金を背負い、結局、離婚。新聞配達のアルバイトをしながら美大を目指していたようだ。そしてアルバイトをしながら借金をして買ったMACでデザイン、プログラムを勉強して技術を身に付けた。しかし美大受験は当日寝過ごしてしまったため受験しなかったそうだ。

 その後、九州で会社員をした後、起業して社員150人の会社を作ったが売却して十数億円の金を手に入れた。しかし六本木で全て使ってしまった。一か月の飲み代が2000万円というからすごい。現在は、新規事業を立ち上げたり、ベンチャーに投資をしている。預金は皆無であり、月末には携帯電話の支払いも出来ないことがあるという。

 でも著者は楽しいという。金は無いがfacebookの多数のフォロワーを失う方が金を失うよりも辛いという。著者は金に価値を置かない。楽しい事業に投資することがワクワクするという。そして雇用関係についても雇用者、被雇用者という立場はもっとフリーであっていいという。0円で雇用して利益が出たらみんなで分ける会社というのもやっているらしい。

 この本の中で特に面白かったのは、暗闇合コンだろう。全くの暗闇の中で男女4人ずつが会話をする。興味深いのは参加者達は最後まで顔を見せないという。厳密には合コンではないがアートなのだそうだ。さらに必ず盲目の人を一人は参加させていたという。それは盲目の人の世界を目の見える人が体験するという意味らしい。この合コンはかなり人気があったようだ。最後に著者の金に対する考えは、金は事業では血液と同じでなくてはならない。しかし流れるもので貯めることはしないという。

 著者は、今年東京都知事選に立候補して話題を集めた人である。最近、youtubeで岡田斗司夫氏と対談している動画を観て気になったので本を読んでみた。ユニークな人柄で読んでいると何かこっちも楽しくなってくるし、なんでもできるような気にさせてくれる。楽しかった。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

岬龍一郎 著
角川グループパブリッシング (2009/6/10)

 

 本書は、高等遊民とはどういうものかということから始まる。高等遊民とは明治から大正初期まで高等教育を受けながら定職につかない人のことだという。著者はその高等遊民という生き方を目指そうと提言する。一般的な日本人の人生は、就職してから定年まで働き、その後自分のやりたいことをやるというものであるが、「50歳、60歳では遅すぎる」という紀元前のローマの政治家セネカの言葉を引用し、日本人一般の人生観に警鐘を鳴らす。

 高等遊民がどういうものかというと、ソロー、橘曙覧、良寛を参考に分析していく。ソローはハーバード大学卒業後、小学校の教師となるが二週間で退職。その後仕事を転々として定職にはつかなかった。しかしただのフリーターではなく、生活に必要な金だけを稼ぎ、あとは自分の研究の時間に充てたという。橘曙覧は裕福な商人の家に生まれたが、35歳の時、家業を弟に譲り、自らは歌人として貧しい生活を送る。良寛も商人の息子であったが、商才が無いため仏門に入れられる。厳しい修行の末、諸国を行脚し、44歳の時、故郷に帰る。しかし実家には戻らず、山腹に庵を設けそこで生活したのだ。

 これらから金や物に拘らない生き方、現状を楽しむという考え方を見て取る。彼らに共通しているのは、橘曙覧、良寛は詩を読み、ソローは思想を深めたようにただのニートではなく知的作業に従事していたということだろう。これが高等遊民の生き方と著者は評価する。さらに儒教と老子の思想の中間にあって、半隠遁の状態が理想であるとする。それは精神的にも社会と一定の距離を置くが、社会から完全に隔絶することなく、地理的にも都会と山奥の中間に住む。このような社会に片足を突っ込んだ状態を理想としている。

 要するに清貧であり、知的であること、社会からは距離を取るが隔絶はしないというのが高等遊民の条件であるということだろう。

 これらを踏まえた上で、現代の高等遊民になるためにはどうしたらいいかというと、まずは50歳までは老荘の思想で行動してはならず、若者は社会的なことを一応済ませなければならないという。それをしないで高等遊民となるのはただの逃避であると厳しい。そして50歳を過ぎたらいよいよ高等遊民として生きるのが良い生き方だと指摘する。しかし何故50歳であるのかは不明である。恐らく著者が現在の生活を始めたのが50歳だからだろう。

 ただ、著者の考え方では20歳そこそこで高等遊民として生活を始めたソローは完全にアウトである。社会的なことを済まさないただの逃避である。そしてローマの政治家セネカの「50歳では遅すぎる」という考え方もまた著者の哲学とは相容れないものである。 

 最後に著者の現在の生活ということになるが、東京荻窪に自宅を持ち、そこから10分のマンションの最上階を借りているという。そこは駅から1分の好立地で近くにはコンビニ、飲食店等は一通りあり、大変「便利」あるようだ。まあ、荻窪という都会であれば当たり前であろう。そしてその富士山の見えるマンションの最上階で52インチの大画面でブルーレイで映画を観るのが楽しみだという『高等遊民』として生活している。

 因みに本書でいう高等遊民とはあくまでも著者が考える高等遊民である。現在定義されている高等遊民とはだいぶ違うので誤解しない方が良い。著者は「高等遊民とはこうでなければならない」という感じで事細かく高等遊民の型を作るのであるが、これがまた何でも型にはめたがる日本的というかサラリーマン的である。本書中で物にこだわらない生き方、都会から距離を置くことの良さを強調しながらも、自身は都心のマンションの最上階でブルーレイで映画を観ながら生活するという著者の思想と行動のギャップもまた面白い。また前半と後半では主張が矛盾していたり、それ以外にも多くの細かい矛盾がある。これらを探すこともまた本書の楽しみである。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

岸見一郎 古賀史健 著
ダイヤモンド社 (2013/12/13)

 

 久しぶりの書評。最近、いろんなところで話題になっているのでケチな私がわざわざ新刊を購入して読んでみた。この本は著者がアドラーの心理学を哲学を援用しつつ分りやすく伝えていくというもの。全頁にわたって「哲人」と「青年」の対話形式でアドラー心理学の内容が説明される。感想から言うと、半分以上は私が今までの人生で実践してきたものだった。しかし残りの部分はかなり参考になった。漠然と考えていたことを明確に論理的に説明してくれたことも有難かった。

 内容はというと、まず、人間というのは普通、原因論で物事を考えるが、実際は目的論で考えているという。原因論というのは、Aという事象が起こったからBという結果になったという至極簡単な考え。例えば、過去のトラウマが原因で現在の私の性格になったというようなもの。しかし、アドラーは違う。逆なのだ。Bという状態にするために過去の事象からAという題材を探してきたというのだ。つまり、現在の私の性格を作ることを目的として私が、過去の出来事の中から目的に合った事象を探してきたのだという。要するに原因があって結果があるというものではなく、自分で判断して現在の状態を作り上げたのだという。

 さらに人間のすべての悩みは対人関係の悩みであると喝破し、他人との比較を否定する。比較するというのは敵との戦いであり、相手と自分の関係を縦関係でみているのだという。大切なのは自分の中の理想と現在の自分との比較であり、他人は敵ではなく、仲間であるという。そしてアドラーは共同体感覚を持つことが大切だという。そしてそれに対する貢献感を感じることで人間は自分には価値があると感じられるという。

 簡単に内容の中で気になった部分を書いてみた。賛否あるのかもしれないが、私はこの考え方はいいと思う。ただ原因論と目的論の関係が本当に普遍的にいえるのかということについては疑問が残った。しかしこれはアドラーの著書を読めば説明されているだろうという気もする。

 アドラーとは別にこの本が面白いのは哲人と青年の対話形式で進行するが、その青年のキャラクターがものすごく良い。青年期の悩める青年であり、無頼派の文学に登場する悩み、苦しみ、そしてひねくれた性格なのである。この青年が時には哲人にからみ、感情的になり、暴言すら吐く。それを哲人が論理的に諭していく。そして青年は前向きに生きていく。読者は時には青年になり、時には青年の感情的な言動に苛立ちを覚える。そして青年をたしなめる哲人にもなり、どんどん本の世界に引き込まれていく。すごい構成になっている。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

北芝健 著
扶桑社 (2008/11/30)

 

 最近、北芝健著『ニッポン非合法地帯』を読んだ。久しぶりに書評を書いてみようと思う。内容は、著者が警察官時代も含めた半生に見聞きした裏社会について書いている。人身売買で売られていく女性やそれを食い物にするヤクザ等々。さらに警察内部の犯罪等についても記している。

 内容はかなり衝撃的だが、恐らく事実であろう。日本が人身売買大国だという話は良く知られているし、外国で誘拐された日本人が売られたり、見世物にされたりしているということもあるらしい。内容的にはあまり人に薦められるようなものではないがヤクザ映画を見る感覚で読むといいかもしれない。

 しかし、この北芝健という人物が直接見聞きしたものであるかというと大いに疑問が残る。北芝健という人物自体、ネットで検索してみたが、どうも胡散臭い。まず年齢、プロフィールが明らかにされていない。極端な話、本当に警察官だったのかということすら分らない。

 警察官であったという証拠もない上、事件の内容に具体性が無さすぎる。事件の関係者の実名が出せないのは仕方が無いとしても、年月日、場所、事件名等の特定できるようなことが一切書かれていないのでは信用しろと言っても無理だ。内容も実体験とは思えないくらいリアリティが無い。

 

 今後、北芝健氏の著作を読むことは無いだろう。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐藤優 著
岩波書店 (2009/4/16)

 

 本書は元外務省主任分析官で現在作家の佐藤優氏が東京拘置所にて拘留された512日間の日記を編集したものである。全体の内容としては拘置された当初から出所まで時系列に記述され、拘置所内の細かな仕組みや制度、拘置所内での読書、思考等が詳細に記述され、途中、弁護士、外務省の後輩、友人に宛てた手紙等を織り込む。現在、八面六臂の活躍をしている佐藤優氏の内面を知る上での好著である。

 特に興味深いのは、佐藤氏が拘置所の生活を修道士の生活になぞらえていることだろう。佐藤氏は別の本で自分にはキリスト教、国家、マルクスが絶対であると書いているが(佐藤優『国家と神とマルクス』角川文庫2008年)、第一回目の日記で自身を修道士になぞらえていることや入所初期の早い段階でまずキリスト教神学の本をひも解いていることからも何よりもキリスト教徒であることが判る。

 同時に至る所に「知識人」という言葉が見られる。自分が知識人であるという強烈な自負心が感じられる。当然といえば当然だが、「知識人」として哲学書やその他の書籍も熟読し思考を深めていく姿が描かれる。前半部分では自分は公の場からは退きたい、大学院で博士号を取りたい、高等遊民になりたいという厭世的考えを持つが、後半になるにしたがってそういった考えは小さくなっていったようだ。

 本書では佐藤氏が拘置所内で一連の事件について振り返り、考察を深めた上で、佐藤氏のいう「思考する世論」を誘導しようとする姿も描かれ、転んでもただでは起きないという一面も垣間見れる。事実と向き合い、信仰という強力な武器を持ち時には『監獄の誕生』を拘置所内で読むというユーモラスな人柄も垣間見れる。

 ただ、本書を読む上で注目しなければならないのは、この記録自体が拘置所の検閲を受けているということとさらに(恐らく)いずれ公表することを前提に書かれているということだろう。本書を素直に獄中での「人間佐藤優」とみるべきではない。例えば弁護団への手紙の中でやたらに拘置所の生活が気に入った、長くいたいということが書いてあるが、もちろん拘置所に長くいたい人間などそうそういない。

 出所後、佐藤氏はしばしば拘置所の環境が勉強するには理想的であったと発言しているので全くの嘘ではないと思われるが、検察官が手紙を読むことを前提に出所を「餌」に自白を引き出そうとする検察官との駆け引きであると見た方がいい。

 手紙や日記は閲覧されることを前提にした検察官へののメッセージであり、さらにそれと同時に獄中記を書籍化することで無実の罪で不当な仕打ちを受けたということを一般に広く伝えるという意図があることを忘れてはならない。本書は「思考する世論」に対する戦略の一つであると言える。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

飲茶 著
河出書房新社 (2015/11/6)

 

 哲学って良く分からないですよね。少なくとも私は良く分からないです。正直、20歳位までは要らないと思っていました。私が20歳位の時の哲学のイメージって「ここに物は存在するのか」とか「光の反対は闇なのか」とかいう感じのちょっと浮世離れした清談のイメージがあった。ところが21歳の時、職場で知り合った読書家のおじさんに哲学とは今を見るための道具だよということを教わり哲学への偏見が解けた。

 大変重要なものだということはその後の人生で嫌というほど知った。やはり学者でもジャーナリストでも哲学を知っている人の意見は精度が全然違うのだ。私も哲学を勉強しようと思っていろいろな入門書を渉猟してみたが簡単な入門書でも結構分かりにくい、もしくは簡潔過ぎて頭に入らなかった。そんな私がひょんなことから本書を手にした訳ですよ(怪しい表現ですねw)。本書の著者の詳しい経歴は不明だけど、どうも専門的に哲学の研究をした研究者だったらしい。

 そしてさらに『グラップラー刃牙』が大好きらしい。内容をパラパラとめくってみるとどうも今までの哲学入門書には「バキ分」が足りないとのこと。本書はその「バキ」分を十分にして書いたもののようだ。内容は驚くほど分かり易い上に面白い。大爆笑するというようなものではないが所々で「クスっ」と笑ってしまうような書き方だ。著者は相当面白い人なんだろうなぁ。『史上最強の哲学入門』は2冊あり、最初の『史上最強の哲学入門』は西洋哲学編、続編は東洋哲学編だ。

 最初、西洋哲学編を読んであまりにも面白かったので東洋哲学編も買ってしまった。西洋哲学編はテーマごとに古代から現代までの哲学の流れを分かり易く書いている。このテーマごとというのが本書の一番のポイントだ。西洋哲学は古代から現代まで積み重ねがある。古代から順番に読んでいかなければ現代の哲学は理解できない。

 それは映画を途中から観て内容を理解するようなものだ。今までの哲学入門書が分かりにくかったのはこの積み重ねを見なかったからかもしれない。これに対して東洋哲学編は逆だ。一つずつの思想について簡潔に説明していく。これは哲学の違いによるものだ。東洋哲学は計算式のような論理性はない。あくまでも体験を大切にする。体験というのは論理的に説明しても分かるものではないのだ。西洋哲学がシリーズ物のドラマだとすれば東洋哲学は一話完結のスペシャルドラマだ。

 著者は、西洋哲学編、東洋哲学編を同じ構成にはしていない。哲学の違いをよく理解しているのだろう。とにかく難解な哲学の概略、全体図が頭に入る本当に良い本だ。世間の評価もかなり高いようで単行本の発行から6〜8年も経っているのに古本の値段が全然下がらない。哲学に興味があってさらに全体像を知りたいという人であれば本書以上の入門書はないと思う。時々例えでアニメのセリフとかがさりげなく出てきたりとか難解な内容を退屈しないで最後まで読める貴重な本だ。

 


人気ブログランキング

 

 堀江貴文氏の著書の中で私が最もおススメするのが本書『すべての教育は洗脳である』だ。本書は学校教育が従順な平均点の人間を作るための機関であると主張する。その目的は将来、会社や工場で「労働」をするための労働力を確保することにある。故に個性や個人の才能を伸ばすことよりも指示通りに作業をこなせる人間を作る必要があるのだ。

 コミュニケーション能力が過度に求められるのも会社や工場で共同作業をするために必要だからだ。このための洗脳装置が「学校」であった。しかしその時代はもう終わった。これからは自由な民として国家に縛られずに生きることができるという。本書の中でも特に面白かったのは人間をG人材、L人材に分けることだ。G人材とはグローバル人材の略で合理的思考を持ち、場所に縛られず変化を好む人材だ。

 これに対してL人材はローカル人材の略で地元の仲間を大切にして過去の思い出に生きる。地元に生き、変化を好まない。これはどちらが良いかということではない。自分の嗜好によって分かれてくるものだそうだ。どちらにもそれぞれの幸せがある。私が衝撃を受けたのは「それ以外の人」の存在だ。GにもLにもなれない人はN人材となる。N人材は変化にも取り残され地元の昔からの友達もいないという孤独な人達だ。

 そのN人材がすがるのが「国家」だ。そうN人材のNとはナショナル(国家)のNなのだ。彼らは自分のアイデンティティを国家や会社に求める。国家や会社と一体化することで自分のアイデンティティを確立する。この分類は私の中ではかなりリアリティがあった。私が今までボンヤリと「何でこの人はこんなに国家に拘るんだろうか」という疑問を明快に説明してくれた。

 本書を読んだのは実は数ヶ月前だったのだけど、内容があまりにも濃厚なので自分の血肉にするのに時間がかかってしまった。やっと文章に書くことができたという私の中でも重要な本だ。とにかく1ページ1ページ、モヤモヤしていたものが解消していく。著者と違う考え方を持っている人も相対的に自分の考えをまとめられる。本書を読んで「自分は違う考えを持っている」と思えればそれはそれで良いことだ。これは良書。

 


人気ブログランキング

スタンレー・ミルグラム 著
河出書房新社 (2012/1/7)

 

 一般に「アイヒマン実験」といわれる心理学の古典的実験について書かれた本である。アイヒマンとはナチスドイツ時代にホロコーストに関係した人物でユダヤ人輸送に指導的役割を果たした人物だ。アイヒマンが世間を驚かせたのは彼は凶悪なサディストなどではなくごく普通の官僚であったことだ。ユダヤ人虐殺も上部からの指示で淡々とこなしていた。

 ここから誰でも一定の条件下であれば残虐行為を起こしうるのではないかという疑問が提示されたのだ。そこでミルグラムは実験をする。それは人が権威というものに対してどれほど従順なのかを証明することになった。被験者は新聞広告で心理学の実験の参加者として集められた。職種、年齢、性別はまちまちだ。そしてイェール大学で試験が行われる。会場では電気椅子に座らされた人と心理学実験の指示者がいる。

 一般の参加者は電気椅子に電流を流す役をやらされる。参加者がボタンを押すと電流が電気椅子に流れる。電気椅子に座らされた人が悶絶するが、指示者はもっとやれという。実は電気椅子には電流は流れておらず座っている人は電気ショックを受けているように演技をしている役者だ。この試験は指示者という権威の指示で参加者はどこまでの電流を流すのかを見るものだ。要するに目の前で苦しんでいる人がいるという現実と権威の指示のどちらが優先されるのかという実験なのだ。

 その結果、恐ろしいことに多くの人は指示者の指示通りに高圧電流を流す。最高は450ボルトだが、何と40人中37人が450ボルトまで指示通りに流したのだ。人間とは権威に対して従順であることが実験によって証明される。これは社会的生き物としての人間が社会を円滑にするため生命に組み込まれているものだと分析する。

 

権力への服従を拒否した人々

 

 この実験の中で面白いのは、電流を流すことを拒否した少数の人だ。そのうち一人は旧約聖書の文献学の教授だ。指示者に対して全く気圧されず反論する。彼は指示者を鈍重な技術者としてあつかっている。つまり、彼にとっては権威とは神でありイェール大学というのは権威足り得ないのだ。だが彼も逆に言えばより大きな権威に従っているといえる。

 他にはドイツ人の医療技師の女性が指示を拒否する。皮肉にも彼女は若き日々をナチスドイツのプロパガンダの下で送ってきた人であった。そして従順に指示に従った人、拒否した人がいるが、その後、心に重荷を感じるのは拒否した人だという。道徳的に正しいことをしたとはいえ、自分が引き起こした社会的秩序の破壊に困惑するのだった。

 本書が特に素晴らしいのは、このミルグラムの実験に対する訳者の批判である。この有名な実験に対して鋭く問題点を指摘している。これが秀逸だ。この実験自体は有用な実験であるが、この有名な実験を無批判に受け入れることはまさに権威に盲従することに他ならない。巻末の訳者の批判まで含めて本書は完全なものとなる。

 

【お願い】
下記のリンクを踏んで何らかの商品を購入して頂くと私にちょっとだけお金が入ります。良い記事だと思われたら投げ銭代わりにお願いします。


ミリタリーランキング

東村アキコ 著
講談社 (2014/9/12)

 

 何となくなんだよねー。kindleで無料コンテンツにあったから読んでみた。私も聞いたことがある作品でドラマ化もされたので相当面白いものなのだろうという、いわば「何となく読んでみた」作品だ。私は全巻無料だと勘違いしていたんだけど、実際には1〜2巻は無料、あとは有料だったのだ。で、1巻を読んだらこれがまた面白い。kindleだとサクサク読めるので、続いて2巻も読む。ストーリーもアップダウンがあって構成もうまいし「たらちゃん」「レバちゃん」の毒舌も面白い。何だかんだで2巻も読み終わり3巻を読もうと思ったら、はい。。。

 

有料でした(汗)

 

 しかしここまで読んでしまうとどうしても先が気になるのが人間というもの。仕方なく3巻を購入。うーん、Amazonってこうやって儲けるのか。そして私は簡単にそのトラップに引っかかってしまった。だって面白いんだもん。3巻はイマイチだった。せっかく購入したのにー。と思ったがしばらくすると4巻以降はもっと面白いのではないかとの疑惑が。。。

 でもつまらなかったらどうしよう、いや面白かったらその楽しみを知らずに私は永久に生きていかなければならない。所謂「人生損している」状態になりかねない。迷った結果。。。

 

全巻購入!

 

 だってー、どうしても読みたかったんだもん。ということで読みだしたのだけど、1〜2巻はギャグ漫画的な内容だったけど、4巻以降はストーリー重視ですごく面白い。ここで『東京タラレバ娘』のストーリーを簡単に紹介。主人公達は33歳の高校時代からの親友3人組の女子。それぞれ脚本家、ネイリスト、居酒屋の切り盛りを仕事にしている。

 全員独身で完全に婚期を逃した状態だ。頻繁に女子会を開いては、「あの時〜していたら」「あの時〜していれば」など、過去の決断を後悔している日々。そこに異性が現れ、後の無い3人はそれぞれの「婚活」をするのだ。これ、男の私が読んで何が面白いのかと思われるかもしれないが、男女を入れ替えるとそのまま男にも通用する部分がありまくる。

 

意外にリアルな設定

 

 結局、この漫画のポイントって年齢からくる不安の話なのだ。特に結婚。男は30歳過ぎて独身でも「甲斐性の無い奴」程度で意外と普通に扱われるが女子はそうではない(らしい)。30歳を過ぎると周りの「イイ男」はすでに売約済み。同世代より上で残っているのは「余り物」(私もこっちサイドだw)で魅力がない。だからといって若い男は若い女が好きな訳で選択肢は極端に狭まる。婚期を過ぎても結婚しなかった女性は周りからは主体的に結婚しなかったのではなく「できなかった」人と思われる。

 さらに女性自身も「選ばれなかった」という風に捉える人が多い(らしい)。そして体の問題がある。女性は35歳を過ぎると出産のリスクが急激に高まる。いろいろな意味で33歳というのはギリギリの年齢なのだ。この作品で主人公達の年齢を33歳に設定しているのは絶妙だ。すぐに結婚すれば34歳での出産となる。ギリギリでリスク回避ができるという年齢なのだ。

 この作品のポイントは主人公達は全てにおいて中途半端なのだ。男から声をかけられるくらいなので容姿はある程度だが美人というほどではない。主人公達は「普通」に会社に就職せずに脚本家やネイリストなど職業的には自立している「普通」ではない仕事を選んだ。しかし全てを捨てて仕事に夢中になるほど仕事が好きではない。故に世間の価値観を否定できるほどの自信もない。

 「普通」であれば会社に勤め、適当な相手と結婚するという特に悩むことのない人生を送る。しかし彼女達は若い頃にその生き方を否定する。そして「普通でない職業」を選ぶ。その結果、「普通でない」人生が始まるが主人公倫子の後輩のように突き抜けることも出来なかった。人生は「普通」じゃないのに価値観は「普通」だからだ。

 

「ねじれ」が最重要ポイント

 

 「普通」を否定しつつも「普通」の価値観に縛られている「ねじれ」がこの作品の一番重要なところだ。主人公達は女性だが、この「ねじれ」に男女は関係ない。主人公達は「普通」を受け入れなかったが、読者の中には「普通」になれなかった人も多いかもしれない。しかし結果は同じ「ねじれ」を持つ。この「ねじれ」を持たない人はこの作品に魅力は感じないだろう。共感できないからだ。

 本作品は大ヒットだ。ドラマ化もされた。つまりはこの「ねじれ」を持っている人が非常に多いことを意味している。因みに、実はこの主人公達は自分から何も積極的に行動を起こしていない。 偶然、モデルをやっている若い男の子に好意を寄せられ、偶然、昔付き合っていたバンドマンに誘われ、偶然店に来たサラリーマンに誘われる。

 紆余曲折があり、ラストには、自分の行動を批判的に見ていたもう一人の自分である「たらちゃん」「レバちゃん」の幻覚すら消えてしまい、主人公達は、今までと変わらない生活を送る。要するに主人公達は現状を肯定してしまったのだ。主人公は、「たらちゃん」「レバちゃん」の代わりにkey君という幻覚を見て生きていくことになる。主人公達は最後までタラレバだった。結局、幸せな結婚をした倫子はそれを捨て、元のタラレバ娘に戻っていく。小雪の不倫関係もそのままだ。最後は女子会で大はしゃぎして終わる。

 倫子と香はゼロの状態に戻り、一番不器用な小雪は不倫関係を引きずったマイナス状態になる。ハッピーエンドで終わっているようで実は悲劇なのだ。最後は悲しい終わり方だったが、これがリアルなのかもしれない。男女に関係なく自分から行動を起こさない人間には幸せはやってこない。コンフォートゾーンから抜け出さない限り人間の成長はない。人間はついつい現状維持に汲々として受け身になってしまう。

 テーマも内容も面白かった。テンポもいいし展開も楽しい。少女漫画でありながら私が全巻買ってしまったくらいだ。内容は女性の話だが、主人公の性別を男にしても同じことがいえる。実は内容は意外と深刻なのだけど笑いが適度に入っているので楽しい。

 

【お願い】
下記のリンクを踏んで何らかの商品を購入して頂くと私にちょっとだけお金が入ります。良い記事だと思われたら投げ銭代わりにお願いします。


ミリタリーランキング

 

 本書はかつてライブドア社長であり、今はHIU(堀江貴文イノベーション大学校だっけ?)を主宰する堀江氏の考えを漫画にしたもの。一流大学を卒業して一流銀行に就職した女の子が、ホリーという実業家と出会うことで自分の人生を自分の力で生きるようになるという話。時々、ウシジマくんも登場したりと面白い。

 本書で一貫しているのは、「失敗を恐れず行動すること」だ。ただ、同時にリスクに対して細心の注意を払い、その上で大胆に行動する。リスクというのがどういうものか、どういう行動が自分と周りの人間をダメにするのか等、堀江氏の考えを知ることが出来る。タイトルの「バカは最強の法則」とは、「バカ」はリスクを恐れず、失敗も恐れずにとにかく行動する。

 結果、リスクを考え行動を起こさない「小利口」な人間よりも成功しやすいということ。考えてみれば当たり前のことだ。行動しない人と行動する人のどっちが成功しやすいかと言われたら考えるまでもないだろう。さらに、「できないやつを助けていると転落する」や「SNS で簡単にいいねするやつは危険」等、ちょっと厳しいようだが理にかなった考え方だ。

 私も会社を辞めて今後どうなるか分からないが、失敗を恐れずにやりたいことをやって行こうと思ったのだ。

 

 

【お願い】
下記のリンクを踏んで商品を購入して頂くと私にちょっとだけお金が入ります。良い記事だと思われたら投げ銭代わりにお願いします。


ミリタリーランキング

浦沢直樹 長崎 尚志 著
小学館; 第2版 (2014/11/28)

 

 マスターキートンとは80年代後半から90年代前半にかけて、ビッグコミックスで連載されたそこそこ人気があった漫画だ。主人公はオックスフォード大学で考古学修士号(マスター)を持つ考古学者でもとイギリス軍特殊部隊SASの教官でサバイバル術の達人(マスター)である日本人と英国人のハーフ平賀・キートン・太一。考古学の知識と軍隊仕込みのサバイバル術で数々の事件を解決していくというのが大まかなストーリーだ。

 連載が始まったのは、私が高校生ぐらいの時だった。新刊が出るたびに買うぐらい大好きだった。今回私が読んだのはそのマスターキートンの続編『 マスターキートンリマスター』だ。 結論から書くと、全体的には相変わらずのマスターキートンという感じだが 正直言ってイマイチ面白くなかった。なんか全体的にストーリーに深みがないと言うか構成が丁寧じゃない気がする。

 私は漫画の専門家じゃないんで偉そうなことは言えないが、何というか理解できないうちに話がどんどんどんどん進んでいってしまうそんな印象を受けた。そうは言っても私が大好きだったマスターキートン。何よりもキートンのその後が分かって楽しかった。マスターキートンは 現実世界と同じ時間軸で話が進んでいく。キートンは1年の連載で1歳ずつ歳をとっていくというわけだ。

  続編が発表されたのは2012年で最後の連載から19年が経っており、キートンは何と58歳 になってしまった。作中でも字を読むときは老眼鏡をかけるなど歳相応に描かれている。キートンのお父さん(生きてたのか!)や娘の百合子も相応に歳をとっている。『マスターキートン』は浦沢直樹と勝鹿北星が原作者となっているようだが、『マスターキートンリマスター』では浦沢直樹と長崎尚志となっている。

 原作者が変わったからなのかどうか知らないが、以前のように当時の国際情勢を意識した物語というものは少なく、軍隊に関するエピソードも昔ほどの迫力はない。かつて『マスターキートン』は銃器関係のアドバイザーとして床井雅美氏がクレジットされていたが今回は参加していないようだ。銃器に関する描写や細かなエピソードがないのもここら辺が原因なのかもしれない。

 まあ、想像なので何とも言えないが、結局、私にとって『マスターキートン』は人生を変えた作品なので、新刊が発売されればどんな内容でも購入するしかないのだ。。。岡田斗司夫氏はこれを「税金」と呼んでいるが、全くその通り。ファンとしては購入するのは義務なんだよね。。。(涙)

 

【お願い】
下記のリンクを踏んで商品を購入して頂くと私にちょっとだけお金が入ります。良い記事だと思われたら投げ銭代わりにお願いします。


ミリタリーランキング

坂口恭平 著
筑摩書房; 増補版 (2020/11/12)

 

 以前、坂口氏の『独立国家のつくりかた』という本がかなり面白かったので再び坂口氏の著書を読んでみた。本書は『独立国家のつくりかた』よりももっと内面的な表現で書かれている。同じ空間でも視点を変えることで全く違った世界に見えてくる。これは坂口氏が以前から持っている思想であろう。私達は子供の頃はいろいろな視点でものを見ることができた。例えば私の子供の頃は空地というものがまだ沢山あった。

 その空地の横にある抜け道を通ると別の学校へ入ることができたりした。その道はそれを発見した発見者達だけの秘密であったりもした。その道から入る世界とその学校の正門から入る世界というのは違う世界である。もっと身近な世界では部屋のレイアウトを変え、机の下にもぐってそこに一つの世界を構築するというようなことも確かに子供の頃やったことがある。

 坂口氏は家の中でキャンプをしたことがあるという。畳を草原に見立ててビニールシートを広げて食事をするという。坂口氏の子供は普通のキャンプより楽しそうだったという。こういう気持ちや視点というのは子供の頃誰でも持っていた。私も時々、家と家の間の隙間に入ってみたくて仕方ないが、大人としては何か別の方法を考えよう。あくまで社会に適応していないとまずい。

 子供の頃の気持ちを思い出すことができる本であった。坂口氏はうつ病を持っている。うつ病を持っている人には独特の世界観を持っている。独特の才能といってもいい。私はうつではないので分らないが、本書を読むと相当苦しいらしい。本書も苦しみながら書いているのが分かる。後半部分はかなり難解になっていって難しかったがいつか理解できる日も来るだろう。

 

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐々木俊尚 著
佐々木俊尚; 第1版 (2014/7/25)

 

 

 『レイヤー化する世界』を読んで、すっかり佐々木俊尚氏の著書に魅了されてしまった。以前『そして、暮らしは共同体になる』を紹介したが、さらに今回もまた佐々木氏の著書を紹介しよう。

 私の考えはどうも佐々木氏の意見と大変近いようだ。本書の内容は大雑把に書くと、かつては会社が全て面倒を見てくれた。これは旧来の家族的な強いつながりだ。それに対してこれからはネットでゆるくつながる弱いつながりが必要になってくるというもの。ネットというのは表現者の本性が見えてしまうものだ。長くブログやFacebook、Twitterをやっているとその人の性格がどうしても出てきてしまう。なのでその人がどういう人かわかってしまうのだ。

 それを利用して弱いつながりを作り維持することによって自分自身のセーフティーネットとすることができる。ネットで本性が出てくるというのは私もよくわかる。以前、私はYahoo!チャットに夢中になったことがあった。そこで毎日常連さんとチャットをしているとその人の性格というのが実際に会う以上に分かってしまうという経験をしたことがある。

 実は私はそこで自分の名前と電話番号を公表したことがある。その結果、現在に至るまで特に問題は起こっていない。チャットをやっていてこの人は信頼できると思ったのは正しかったようだ。私のブログの記事もすでに700を超えた。この記事を全部読む人はいないと思うが、全部読めば私の性格も分かると思う。1本、2本程度の記事であれば嘘の人格も作れるだろうが、数百となれば本性を隠すことはできない。

 それはそうと、私が本書で結構うれしかったのは、私はだいぶ前の記事で、「おふざけ投稿」に関して書いたことがあった(ブロンコビリー、冷凍庫のおふざけ写真で店舗閉鎖 元店員2人に賠償請求へ)。この記事はまとめサイトにも選ばれた思い出の深い記事だった。恐らくこの事件だと思うのだが、佐々木氏も当時同様の意見を持っていたようだ。そして結構批判されたようだ。私の記事にはそういったコメントはなかったが、同じ意見を主張していたというのはうれしい。

 因みにコメントと言えば、私は今までコメントをできない設定にしていたが、最近、再度コメント欄を解禁した。理由は特にないが、私の記事に対しての感想から目を背けてはいけないと思ったという程度だ。最近気づいたのだが、私のブログに対しての荒らしコメントというのは実は今まで一件しかない。ほとんどのコメントは好意的なものばかりだ。批判を受けたこともあったが、それは批判した方の意見の方が正しかった。単純に私の勉強不足であった。

 結構、世の中いい人が多いんだなぁというのが私の最近の感想。何の得にもならないのにわざわざ意見を書いてくれて時には教えてくれる人もいる。佐々木氏が本書で書いているように「渡る世間に鬼はない」のかもしれない。また記事が長くなってしまったが、本書は『レイヤー化する世界』ほどではないが面白いものだった。先日ブックオフで100円で売っているのを発見してしまったのでちょっと凹んでいるが。。。私はもっと高い金額で買っている。

 

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

佐々木俊尚 著
佐々木俊尚; 1番め版 (2015/6/9)

 

 『レイヤー化する世界』以来、佐々木俊尚氏にすっかり虜になってしまった。本書は『レイヤー化する世界』の後に書かれたものだ。内容は正直、基本的に一緒だった。ただ、佐々木氏の主張は基本的に賛成なので私としては読みやすい本ではあったが、『レイヤー化する世界』ほどのインパクトななかった。本書で主張していることは「優しいリアリズム」の社会を作っていこうということだ。「優しいリアリズム」とはどういうことかというと、リアリズムとは論理の世界である。

 リアリズムとは例えば、下流老人になった人は若いうちにきちんと準備をして貯金や投資を行っておくべきだった。それをしかなったので自業自得というような考え方だ。しかしそれでは多くの人は幸せになれない。そこには情が必要だ。感情的なものだけでなく、かといって論理だけの世界でもない中庸の世界が望ましいということだ。

 私は佐々木氏の結論には賛成だが、『レイヤー化する世界』と内容がかなり重複しているように感じる。佐々木氏の本の傾向として本論にいくまでの前置きがちょっと長い。佐々木氏はかなり博学で正確を期するためにこのような書き方になったのであろうがちょっと前半は読むのが辛かった。全体としては『レイヤー化する世界』の方が完成度は高かったと思う。

 

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

坂口恭平 著
講談社 (2012/5/18)

 

 私は本を読むときには大体、一つのテーマについて複数冊の本を続けざまに購入する場合が多い。例えば「武士道」について調べるのであれば、武士道について書かれた本をネットで調べまくって気になった本はどんどん購入する。だから部屋には必ずまだ読んでいない本が何冊かはある。鞄には読みかけの本と読んでいない本が数冊、常時入っている。本はその本を味わうというよりもデータを収集するための媒体という感覚が強いので、あまり「ハズレ」という本には出会わない。

 そんな読み方の私だが、たまに(最近は読書量がどんどん増えてきているので結構頻繁に)、すごい面白い本に出会うことがある。最近だと佐々木俊尚『レイヤー化する世界』や伊藤佑靖『国のために死ねるか』等があった。やたら長い前置きを書いてしまったが、もっとも最近読んだ、「すごい面白い本」が今日、紹介する『独立国家のつくりかた』だ。

 何故、こんなに前置きが長いかというとすごい面白い本というのは感想をどう書けばいいのか分からなくなるのだ。私の【書評】は面白い部分を抽出しているつもりだ。ただ、全部が面白いというのは書きようがないのだ。そんなことで読書後も結構、放置していたのだが、そろそろ書評を書こうかと思い立った。そうしないと鞄からいつまでも出せないからだ。

 坂口氏は以前、ネット動画でひかりの輪を主宰している上祐史浩氏との対談で存在を初めて知った。面白い人だなぁと感じた程度だったが、魅力的な人柄だなとは感じた。そして最近、モバイルハウスという言葉をネットで知り、検索していたところ坂口氏の著書に出会った。せっかくなので一番有名な本を買おうと思い購入したのが、本書だ。

 日本に生きるホームレスの取材から始まり、家というものの存在の意味や土地との付き合い方など、非常に面白かった。ホームレスでも決して不幸な人達ばかりではなく、多くの現金収入がありながらもホームレスを選んでいる人もいる(取材した人の中には月収50万円という人もいる)。何より家が魅力的だ。そのホームレスさんはブルーシートの家に住んでいる。しかし普通のブルーシートの家ではなく、きちんと直角平行で設計されている。

 内部も工夫されており、合理的なシステムキッチンならぬ、システムハウスと呼んでもいいようなものだった。さらに河川敷の管理が行政で曖昧であることや強制退去をさせると都市にホームレスが戻ってしまう等の理由から河川敷のホームレスは野放しにされていることなど内容は盛りだくさんだ。モバイルハウスについても詳しく書いてある。家ではあるが、車輪がついているために法律上、家とは認識されないので駐車場に置いたりすることで固定資産税等も発生しない。面白いことに気が付いたものだ。

 その他、内容が濃すぎて面白い部分を全部書いたらブログが膨大な分量になってしまう。これは是非買って読んでほしい。特に不動産業界の慣行や家賃を払うことに疑問を感じている人は必読だ。そう、必ず読まなければならない。その他も著者の現在に至るまでの人生等も本当に面白い。人間、会社に就職するだけが生きる道ではないことを教えてくれる。たぶん、本書はそれ以外にもいろんな悩みを解決してくれると思う。是非読んでほしい。

 本書の内容の要約を書こうと思ったけど、全部が面白いので書けなかった。私もまた読み直してみたいと思う。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

羽生善治 著
KADOKAWA (2006/11/10)

 

 ミリタリーとは全く関係ない本になってしまったようだが、そうではない。本書は「勝負師」について書かれた本だ。私が本書を読んだのは、とある武術の先生が絶賛していたからだ。因みにその武術の先生は多くの真剣勝負をくぐり抜けて来た人だ。本書は勝負についての羽生氏自身の経験と考えを凝縮したものだ。私は勝負師ではないが、読んでいて納得できる部分や私自身がやってきていることも多い。

 私が非常に参考になったのは、まず直観を信じること。直観とは長年の経験から出た正解を無意識に出したものであること、さらに変化しなければ現状維持すら難しい。さらに勝つことはもっと難しいということ。そして、何よりも大切なのは継続することだという。この継続こそが才能だと羽生氏はいう。継続とは難しいことのように感じるがそうではない。好きなことを続けることが継続するだけのことだ。

 特に私が参考になったのは「集中すること」についてだ。集中とは段階を踏んで行うことであり、徐々に深海に潜っていくようなものだという。その結果、自分でも集中しすぎて戻れなくなるのではないかという恐怖すら感じたことがあるという。それ以外にも将棋に限らず別の世界でも参考になる部分は多い。私は遊びで将棋を指すことはあったが、将棋というのにそれほど関心はなかった。しかし将棋の奥深さや狂気を知ることが出来た。非常に魅力的な本だ。

 

↓良かったらクリックして下さい。

人気ブログランキング

↑このページのトップヘ