東村アキコ 著
講談社 (2014/9/12)

 

 何となくなんだよねー。kindleで無料コンテンツにあったから読んでみた。私も聞いたことがある作品でドラマ化もされたので相当面白いものなのだろうという、いわば「何となく読んでみた」作品だ。私は全巻無料だと勘違いしていたんだけど、実際には1〜2巻は無料、あとは有料だったのだ。で、1巻を読んだらこれがまた面白い。kindleだとサクサク読めるので、続いて2巻も読む。ストーリーもアップダウンがあって構成もうまいし「たらちゃん」「レバちゃん」の毒舌も面白い。何だかんだで2巻も読み終わり3巻を読もうと思ったら、はい。。。

 

有料でした(汗)

 

 しかしここまで読んでしまうとどうしても先が気になるのが人間というもの。仕方なく3巻を購入。うーん、Amazonってこうやって儲けるのか。そして私は簡単にそのトラップに引っかかってしまった。だって面白いんだもん。3巻はイマイチだった。せっかく購入したのにー。と思ったがしばらくすると4巻以降はもっと面白いのではないかとの疑惑が。。。

 でもつまらなかったらどうしよう、いや面白かったらその楽しみを知らずに私は永久に生きていかなければならない。所謂「人生損している」状態になりかねない。迷った結果。。。

 

全巻購入!

 

 だってー、どうしても読みたかったんだもん。ということで読みだしたのだけど、1〜2巻はギャグ漫画的な内容だったけど、4巻以降はストーリー重視ですごく面白い。ここで『東京タラレバ娘』のストーリーを簡単に紹介。主人公達は33歳の高校時代からの親友3人組の女子。それぞれ脚本家、ネイリスト、居酒屋の切り盛りを仕事にしている。

 全員独身で完全に婚期を逃した状態だ。頻繁に女子会を開いては、「あの時〜していたら」「あの時〜していれば」など、過去の決断を後悔している日々。そこに異性が現れ、後の無い3人はそれぞれの「婚活」をするのだ。これ、男の私が読んで何が面白いのかと思われるかもしれないが、男女を入れ替えるとそのまま男にも通用する部分がありまくる。

 

意外にリアルな設定

 

 結局、この漫画のポイントって年齢からくる不安の話なのだ。特に結婚。男は30歳過ぎて独身でも「甲斐性の無い奴」程度で意外と普通に扱われるが女子はそうではない(らしい)。30歳を過ぎると周りの「イイ男」はすでに売約済み。同世代より上で残っているのは「余り物」(私もこっちサイドだw)で魅力がない。だからといって若い男は若い女が好きな訳で選択肢は極端に狭まる。婚期を過ぎても結婚しなかった女性は周りからは主体的に結婚しなかったのではなく「できなかった」人と思われる。

 さらに女性自身も「選ばれなかった」という風に捉える人が多い(らしい)。そして体の問題がある。女性は35歳を過ぎると出産のリスクが急激に高まる。いろいろな意味で33歳というのはギリギリの年齢なのだ。この作品で主人公達の年齢を33歳に設定しているのは絶妙だ。すぐに結婚すれば34歳での出産となる。ギリギリでリスク回避ができるという年齢なのだ。

 この作品のポイントは主人公達は全てにおいて中途半端なのだ。男から声をかけられるくらいなので容姿はある程度だが美人というほどではない。主人公達は「普通」に会社に就職せずに脚本家やネイリストなど職業的には自立している「普通」ではない仕事を選んだ。しかし全てを捨てて仕事に夢中になるほど仕事が好きではない。故に世間の価値観を否定できるほどの自信もない。

 「普通」であれば会社に勤め、適当な相手と結婚するという特に悩むことのない人生を送る。しかし彼女達は若い頃にその生き方を否定する。そして「普通でない職業」を選ぶ。その結果、「普通でない」人生が始まるが主人公倫子の後輩のように突き抜けることも出来なかった。人生は「普通」じゃないのに価値観は「普通」だからだ。

 

「ねじれ」が最重要ポイント

 

 「普通」を否定しつつも「普通」の価値観に縛られている「ねじれ」がこの作品の一番重要なところだ。主人公達は女性だが、この「ねじれ」に男女は関係ない。主人公達は「普通」を受け入れなかったが、読者の中には「普通」になれなかった人も多いかもしれない。しかし結果は同じ「ねじれ」を持つ。この「ねじれ」を持たない人はこの作品に魅力は感じないだろう。共感できないからだ。

 本作品は大ヒットだ。ドラマ化もされた。つまりはこの「ねじれ」を持っている人が非常に多いことを意味している。因みに、実はこの主人公達は自分から何も積極的に行動を起こしていない。 偶然、モデルをやっている若い男の子に好意を寄せられ、偶然、昔付き合っていたバンドマンに誘われ、偶然店に来たサラリーマンに誘われる。

 紆余曲折があり、ラストには、自分の行動を批判的に見ていたもう一人の自分である「たらちゃん」「レバちゃん」の幻覚すら消えてしまい、主人公達は、今までと変わらない生活を送る。要するに主人公達は現状を肯定してしまったのだ。主人公は、「たらちゃん」「レバちゃん」の代わりにkey君という幻覚を見て生きていくことになる。主人公達は最後までタラレバだった。結局、幸せな結婚をした倫子はそれを捨て、元のタラレバ娘に戻っていく。小雪の不倫関係もそのままだ。最後は女子会で大はしゃぎして終わる。

 倫子と香はゼロの状態に戻り、一番不器用な小雪は不倫関係を引きずったマイナス状態になる。ハッピーエンドで終わっているようで実は悲劇なのだ。最後は悲しい終わり方だったが、これがリアルなのかもしれない。男女に関係なく自分から行動を起こさない人間には幸せはやってこない。コンフォートゾーンから抜け出さない限り人間の成長はない。人間はついつい現状維持に汲々として受け身になってしまう。

 テーマも内容も面白かった。テンポもいいし展開も楽しい。少女漫画でありながら私が全巻買ってしまったくらいだ。内容は女性の話だが、主人公の性別を男にしても同じことがいえる。実は内容は意外と深刻なのだけど笑いが適度に入っているので楽しい。

 

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