あまり読者から求められていないのは分かっているがまた書評を書いちゃう。最近、本の電子化(いわゆる自炊というやつ)が完全に完了したのだ。んで、早速、タブレットで電子化した本を読んだら読みやすいこと読みやすいこと。。。普通の本みたいに両手が塞がらないし、どこでも気楽に読める。

 それはともかく、電子化読書第一弾は国際政治学者の三浦瑠麗氏の『シビリアンの戦争』だ。三浦氏は今では売れっ子の政治学者としてテレビ等で活躍しているのでご存じの方も多いだろう。私が三浦氏を知ったのはyoutubeの動画で、西村博之氏や橋下徹氏との討論番組だった。ブッシュ大統領の石油利権等、的外れな議論をしている論者が多い中で一人的確な議論をしている人がいて非常に興味を持った。

 それが三浦氏だった。以来、三浦氏の動画は結構見たが、なかなかに的確であった。ということで是非三浦氏の著作を読んでみたいと思い本書を購入したのだ。本書はどうも三浦氏の博士論文を元に書いたもののようだ。内容を簡単に書くと、一般に軍人は好戦的で戦争を始めたがる。そのためにシビリアンコントロールという制度が生まれたのだが、実際は軍人が戦争に反対してシビリアンが戦争を強行するということが多い。

 政治家や国民は自分が戦争に行くことはないので戦争を求めるが実際に戦争に行かなくてはならない軍人は反対する。これをイラク戦争、フォークランド紛争、中東戦争等を題材に論証している。このシビリアンが戦争をやりたがることに対する対策も提示している。それはまず、政治家のリテラシーを上げること、職業軍人の助言を受けること、そして徴兵制を敷くことだという。

 私が三浦氏の著作の中で特に本書を選んだのは、元幕僚補の松村劭の著書『もう一つの「戦争学」』で松村氏が同様の指摘をしていたことによる。軍人は戦争によって兵士という財産を失うので戦争を嫌がるというものだ。これは非常に説得的であった。さらに詳しく知りたい私は、レビューなどで、本書が松村氏の指摘と同様のテーマを詳述していると踏んで購入してみたのだ。本書は全体的に論証が今一つだ。いろいろなタイプの戦争を比較分析するのではなく、軍人が反対した戦争の事例だけを取り上げ結論を出している。

 三浦氏が軍人がシビリアンの反対を押し切って戦争を起こしたとしている満州事変等は「特殊な例」として特に理由もなく切り捨ててしまっている。イラク戦争に反対した「軍人」として扱っているコリン・パウエルはイラク戦争の時点では軍人ではなく「シビリアン」であり、「軍人」「シビリアン」という定義もはっきりしない。全体的に議論があまりにも主観的だ。学術的な研究であるならば、まず「戦争」「シビリアン」「軍人」等の用語を定義しなければならない。

 古い時代では「軍人」「シビリアン」は分離していない。戦争もどの段階からを研究対象とする「戦争」とするのかを明確にする必要がある。さらに定義が完了し対象とする時代を設定したのであれば、その時代の対象とする戦争を全て抽出する必要がある。このような過程を経て初めて説としての説得力を持つ。実証が無ければ学問とはいえない。

 そして、これら「シビリアンの戦争」を抑制する対策として、政治権力の分散、三浦氏は政治家のリテラシーを上げる、軍事専門家の助言が必要であるとする。さらに国民全てが権力と責任を持つという共和国概念を提唱する。具体的な方策として、ゆるやかな徴兵制の復活を提唱している。政治家のリテラシー、軍人の助言は分かるが、なぜ徴兵制でなければならないのかの論証がが全くなされていない。

 かつて太平洋で干戈を交えた日米は当時、どちらも徴兵制であった。徴兵制下でも日米国民は熱狂的に戦争を支持している。この例から見ても、一概に徴兵制にすれば戦争を抑制できるとはいえないだろう。さらに現実問題として、実行するにはかなり問題がある。何故かというと、現在の軍隊というのはかなり専門性が高い。兵器はハイテク化しているし、前線で戦闘をする兵士も全世界的に少数精鋭化している。

 ハイテク兵器を扱うには高度な知識が必要だし、精鋭化した部隊は戦闘に適性のある兵士を配置することが必須だ。そこに強制的に徴兵され、戦意もない何の知識も素質もない人間が大量に入ってくるというのは軍隊の行動をかなり制約する。そこに素質のない人間を大量に入れればどうなるかは火を見るより明らかだ。国民に戦争のリアリティを持たせるためだけに徴兵制を敷くというのは机上の空論に過ぎない。

 三浦氏の言論人としての発言は非常に的確で鋭い。本書の「シビリアンが戦争を好み、軍人が戦争を嫌がる」という考えも全くその通りだと思う。論証など学問的手続きには不備が多いし、緩やかな徴兵制という意見には全く賛同できないが、「シビリアンが戦争を好み、軍人は戦争を好まない」という趣旨には全く賛成である。本書は、上記の考え方を広めることに貢献しているという点においては価値のある本だ。

 

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