01_武士
(画像はwikipediaより転載)

 

 武士について簡単に説明してみよう。武士とは日本古代末期から近代まで存在した戦闘を生業とする人のことだ。日本は鎌倉時代から江戸時代まで武士の時代が続き、さらに明治政府を構成したのも若い武士たちであった。故に武士という存在は現代においても否定的に捉えれることはなく、むしろ憧れを持ってみられている。

 まあ、武士に限らず、人間というのは戦いに非常な魅力を感じ、戦いに強い人に憧れる性質がある。武士というのは「サムライ」として外国人に評価されたものだから、古代より外国の目を気にする日本人には「サムライ」は特別なのだ。若干嫌味っぽくなってしまったが、私は子供の頃、時代劇フリークであり、専門的に歴史を勉強するようになったのも要は「サムライ」のお陰でもある。大好きであり大っ嫌いなのがこの「サムライ」なのだ。

 

高橋昌明『武士の日本史』

 

高橋昌明 著
岩波新書 2018/5/23

 私が知る限り最新の武士論。著者は中世史の専門家。古代からの武士の歴史を新書にしては驚きの詳細さで書いている。「日本中世史の重鎮クラスの人が本気で書くとこうなる!」という感じの本だ。「侍=武士」ではないこと、武士とは本来的にかなりの暴力性を持つことなど、武士の歴史を知らない人にとっては新鮮だと思う。専門家が古代から現代まで幅広く書いている貴重な本。今回紹介する本の中でイチオシの本だ。

 

野口実『武家の棟梁の条件』

 

 20年以上前の本。著者は専門の研究者であるようなので、とりあえず購入してしまった。どうも専門は平安末から鎌倉初期位までのようで、ここらへんの時代に関してはやたら詳しい。「サムライってカッケー!」的な、高いIQを持っている人々に対して、苦々しく思っているだろうことは内容を読むと容易に想像できる。

 源頼朝が求めた地位が近衛大将ではなく、征夷大将軍であったのは、外敵から日本を護ることを自己の存在意義としたためであるということや当初、天皇の警護をしていた滝口の武士に求められたのは実は、呪的能力であったことなど知らなかったことが多い。

 ただ、著者の専門外の時代になると論証に緻密さがなくなる。「東国は狩猟民族で暴力的、西国は農耕民族で非暴力的だったけど、東国の武士が権力を持ったことで全国に野蛮な風潮が伝わった(かなり意訳)。」というようなことが特に論証されることなく事実として書かれているのは疑問。

 

下向井龍彦『武士の成長と院政』日本の歴史07

 

 著者は古代軍事史研究者。国衙軍制という視点で武士の成立を説明する。これらによって徴発された、郡司や富豪、俘囚たちが後の武士になっていくというもの。日本刀のルーツが蝦夷の持つ蕨手刀→毛抜型太刀→日本刀と変化していくという説も説得的である。

 本シリーズは一人の研究者が一時期の時代を総合的に執筆するという珍しいスタイル。一つのテーマに限らず政治、経済等あらゆる面から時代をみる。便利ではあるが、雑多な感は否めない。ただ、本書はこのシリーズの中でも武士の誕生から時代を動かすまでになる様を中心にしており良くまとまっている。

 

藤木久志『新版 雑兵たちの戦場』

 

 あまり注目されることのない戦国時代の「雑兵」をテーマにした本。農民が強制的に戦場に徴発されるのではなく、農業だけでは生活できない農民が戦場に出稼ぎに行くという。戦場では人や物の略奪は凄まじく、敵国の人は商品として売買された。

 対する村は領主の城に逃げ込むか、村の城に逃げ込んだ。村自体も武装し落ち武者狩りも行う。面白いのが、上杉謙信がしばしば関東に侵入したのは、一毛作しかできない越後の「口減らし」のためだという。1月、2月の農閑期に関東に侵入して略奪を行うという。

 その後、豊臣秀吉は朝鮮に戦場を求めることで国内に平和をもたらす。雑兵たちは朝鮮の戦場で荒稼ぎをし、江戸時代には傭兵として東南アジアで活躍することになる。戦国時代は大名の「国取り」は有名であるが、その下で生きた雑兵や村人たちに焦点を当てたことにより時代をより深く理解することができる。こういう「亜流」の本が多くでることによりより多面的に歴史を観ることが出来る。

 

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