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 これはニューギニアの密林で10年間生活をした日本人の話だ。もちろんアウトドアやサバイバルが好きで自発的に行った訳ではない。ニューギニアに取り残されてしまった日本兵である。著者の島田氏は戦争後半に満洲からニューギニア戦線に派遣される。


 そこで見たものは正に地獄そのものだった。優勢な連合軍の前に武器もなく、食糧もなくただただ敗走する日々。部隊としての統率もほぼ無くなり、遂には銃も失い、日本軍の拠点を目指して密林を徒歩で30km、40km進んでいく。


 40kmを食糧もなく体力も落ちた状態で足場の悪い密林を進むのであるから、その辛苦は想像に余りある。しかし目指した基地はすでに陥落しており、島田氏達はこれ以上、彷徨するよりも日本軍の巻き返しがあるまで密林で自活しようと考える。


 「巻き返し」とは、現代において当時の歴史を知る我々は不可能であると考えるが、当時の現場の日本兵たちは精強日本軍は自分達の戦域では劣勢であるが、これは戦局の一部で他の戦場では優勢であると教えられていた。故に「しばらく」辛抱すれば、日本軍が巻き返して来ると信じていた。


 密林での自活を始めた時には17名の隊員がいた。当初は軍隊の階級も維持されていたが、密林での生活が数ヶ月、1年と進むにつれてそれもなくなっていく。そして栄養不足や敵との戦闘により1名また1名と減っていくのであった。


 数年ののちとうとう隊員は4人になってしまった。この4人が1950年に救出されるまで共同して生活していくこととなる。


 自活といっても既に武器もなく、服すらまともにない状態であった。食糧は当初は、すでに連合軍の管理下に入ってしまった日本軍の食糧庫に侵入して食糧を調達していた。しかしそれも尽き、野草、蛇、昆虫等、食べられるものは何でも食べる生活が始まる。


 塩だけは自活生活の最後まで入手することは出来ず、日本軍の倉庫から得た乾燥醤油を使い続けていたが、生活の後半になると原住民との交流が始まり、塩も調達できるようになっていった。しかし、栄養の悪い食生活は、彼らの体をむしばんでいった。


 森の中で自活すると本来の人間の生活に戻り、健康的になると考える人もいるかもしれない。しかし、実際はそうはならないようだ。栄養バランス、衛生状態の悪さから、マラリアを発病し、腹は膨れ上がり、歯は抜け落ちていった。


 のちには畑を作り、日本兵の戦友の遺体から小銃も手に入れ肉も得られるようになるが、文明の中で生活している我々に比べればはるかに不健康な生活であった。確かに縄文時代の平均寿命は30歳前後だったということを考えれば納得のいく話でもある。


 この4人での密林の生活にも転機が訪れる。それは原住民との接触であった。この時期になると4人は自前の畑を持ち、家畜も飼い、鉄器も作れるようになっており、ある程度、安定した生活が出来るようになっていた。しかし、この生活がいつまで続くのであろう。夢も希望もなくただ生きているだけ。


 こんな生活に意味があるのだろうかと考えるようになる。そこでたまたま接近してきた原住民との接触を図ろうとする。当初は言葉も分からずお互いに警戒していたが、徐々に打ち解けていく。この時のバーバルコミュニケーションが面白い。


 「10日後にまた来る」と原住民たちは告げて帰っていった。そのジェスチャーはこうであった。指を東に指し、半円を描いて西を指す。この動作を10回繰り返し、最後に地面をドンドンと叩く。島田達は当初は分からなかったが、のちに意味に気付いたという。そして10日後に彼らは来たのだ。


 この原住民とのコミュニケーションでは、島田達が鉄器の製造、修復が出来たというのが大きかった。原住民は鉄器の修復技術を持っておらず、持っている鉈はボロボロであった。その鉈を修復してあげることで原住民との信頼関係が生まれていった。


 しかし、幸か不幸か、この技術が原住民の間に知れ渡り、遂にはオランダ憲官の耳にまで届いてしまう。そして密林生活から10年目にしてオランダ憲官から戦後の日本のことを知らされる。ニューギニアに残留するか日本に帰るかを選ばせられるが、島田達4人は日本への帰還を希望する。


 この本は私が以前から読んでみたいと思っていた本だった。たまたま古本屋で見つけ読んだ。当初は、流し読みをしてざっと内容を把握しようと思っていたが、内容のあまりの面白さに、分厚い本にも関わらず精読してしまった。


 面白いのは10年間密林に住んでいても文明人はあくまでも文明人であるということだ。当初からカレンダーを作り、畑を耕し、わずかな知識から鍛冶を行う。同時に、島田達4人は10年間、裸足で生活していたにも関わらず、原住民が裸足で歩ける荒地も島田達には無理であったりと、体や五感等は10年間密林で生活していても原住民と同様にはならなかった。


 文明とは何か、さらには異文化コミュニケーションの面白さを教えてくれる本であった。


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