神立尚紀 著
潮書房光人新社 (2016/2/19)

 

 著名な海軍戦闘機搭乗員、宮野善治郎氏の生涯を追いかけた本である。著者は元海軍搭乗員との交流が深い神立氏である。著者は偶然にも宮野氏と同じ高校の卒業生であるという。因みに私が宮野善治郎大尉について知ったのは、だいぶ前(多分1990年代中盤頃)に読んだ『ラバウル空戦記』であった。204空搭乗員の生存者が中心となって執筆された本であるが、その中で宮野善治郎大尉の人望というのが非常に印象に残っていた。

 ということで読んでみたのだが、とにかくボリュームが凄い。700ページ以上の大著だ。それもそのはず、執筆には11年かかっているという。内容は史料を丹念に調査しているのがよく分る。さらに当時の生存者の証言が多く掲載されている。この証言は今後はさらに貴重になってくるだろう。宮野大尉の幼少時代から戦死に至るまでのことを詳しく書いている。元々はあまり目立たない少年だったようであるが、兵学校で鍛えられ立派な青年士官となっていった。

 本書は宮野氏以外にも同時期に同じ場所にいた人々の手記や証言を織り込むことで立体的、相対的で内容の濃い作品となっている。実際に宮野氏にはあったことがないので(当然だが)、人となりは本書やその他書籍から知るしかないが、空戦後に下士官兵の宿舎に行き、一緒に酒を飲んでいる時のエピソード等からもその人柄が偲ばれる。

 死と隣り合わせの極限状態で人を惹きつける人というのはこういう人なのだろうと思ったと同時にこういう人が上司だったら仕事のモチベーションも上がるのかな。。。とちょっと考えたりしたが、この宮野大尉、現在の私よりもはるかに年下であったことに何とも言えない気持ちになったのであった。。。

 

 

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