また飛行艇戦記。著者は藤代護氏、乙種予科練9期出身の水偵乗り。偵察員であった。「偵察員」とはよくわからない方もいるかもしれないが、水上偵察機には通常、2〜3名の搭乗員が乗る。操縦員と偵察員、または操縦員と電信員、偵察員である。

 
 予科練を目指す者で初めから偵察員を目指す人はまずいない。著者も予科練では当然のように操縦員を希望していた。しかし操縦員には選ばれなかった。著者はトイレで泣いたという。


 しかし、今度は日本一の偵察員にやってやると気持ちを切り替える。著者はその後も数々の不本意な状況に置かれるがその都度前向きに頑張る。





 偵察員に指名されたことについて、これは私の勝手な推測だが、著者は操縦適性が無かったのではなかったと思う。ただ、偵察適性がダントツに高かったのだろう。要するに頭が良かったのだ。


 著者は予科練での送受信訓練でモールスで送られてくる通信文を毎回一文字も間違えなかったという。さらに飛行時間1000時間を超えるころには300カイリを飛行しても推測航法で誤差が1カイリ以内だったという。


 海軍の航法には天文航法、地文航法、推測航法の3種類ある。天文航法は天体の位置から自機の位置を測るというもので地文航法とは地形を見て自機の位置を測るものだ。そして推測航法とは自機の速度と風向き、風速を推測して自機の位置を測るという最も難易度の高い航法である。


 全て推測だ。300カイリ飛行して1カイリ以内に収めるというのがどれだけすごいことなのか想像できるだろう。kmに直すと500Km以上を飛行して誤差は2Km以内ということだ。


 著者は恐らく、操縦適性以上に偵察適性があったのだろう。例えば操縦適性がBランクで偵察適性がAであれば偵察に回される。こういうことだったのだろうと思う。著者は戦後、大学に入っている。もともと頭の良い人だったのだろうと思う。


 著者は部下の統率にも優れた才能を発揮している。予科練内での甲乙間の軋轢なども興味深い。



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