飛行艇空戦記が意外と少ないのでとうとう水偵空戦記にまで手を出してしまった。まあ、水偵も飛行艇だけどね。内容は面白い。これは著者自身の筆によるものなのではないだろうか。描写が非常にリアルだ。


概要
 零式水上偵察機(れいしきすいじょうていさつき)は、十二試三座水上偵察機として愛知航空機により開発され、昭和15年12月に日本海軍に兵器採用された水上偵察機。 略称として零式水偵、零水とも呼ばれ、零式小型水上偵察機との違いを明確にするため零式三座水上偵察機とも表記される。略符号はE13A。連合国が名づけたコードネームはJake(ジェーク)。
(wikipediaより一部転載)
 さらに詳しい情報を知りたい方はこちら(wikipedia)


 著者は甲飛7期、飛練24期なので部隊配属になったのは昭和17年12月。ソロモン方面に配属されたのが昭和18年8月ということなので一年弱内地での配置であったようだ。


 因みに飛練24期というのは予科練の丙飛7期、8期も一緒に訓練を受けている。これらの期は太平洋戦争後期に大量投入され多くの隊員が戦死したクラスだ。


 初の戦場はソロモン諸島であった。太平洋戦争初期に水上機で編成された九三八空に配属される。ここでの作戦の描写はかなりの緊迫感だ。





 探照灯に照らされるという経験を書いた本を私は初めて読んだ。一本に照らされると数本の探照灯が集中し、前が見えなくなってしまうという。


 めちゃくちゃな操縦をして回避すると今度は突然真っ暗になるという。探照灯から脱出した証拠だ。この生々しい描写はかなりの迫力がある。


 この中で二号爆弾というものが登場する。二号爆弾とは今でいうクラスター爆弾のようなものだ。空対空爆弾といってもいい。空中で投下すると一定時間で爆弾を留めているリングが外れる。そうすると子爆弾が数発ばらまかれる。実際、撃墜戦果もあったようだ。


 ここら辺は梅本弘『ガ島航空戦上』に実際の戦果があるかもしれない。著者の貴重な経験としてはソロモン戦で陸軍中将今村均を自身の飛行艇で運んことだろう。運んでいる最中は気付かなかったという。


 トラック島空襲を地上で体験したのち潜水艦で内地に帰還する。その後、台湾沖で筆で「大」と書いたような浮遊物を見つける。


浮遊物は確かに人間の死骸のようである。浮遊物はどれもみな水ぶくれで、その胴体や手、足は丸々としていて、着用している軍服は、いまにも敗れんばかりにふくれあがっている。また、その両手両足を一杯に開いているので、上空から見ると、”肉太に書かれた「大」の字”のようにみえていたのであった。
(『零式水偵空戦記』より転載)


 「大」は撃沈された輸送船に乗っていた陸軍兵士達であったようだ。著者は哨戒中に敵潜水艦を撃沈する戦果も挙げた。もちろん撃沈された潜水艦の乗員も上記のような状態になったのであろう。戦争は絶対に起こしてはいけない。


 本書には予備学生の士官に対する不満が多く書かれている。予備学生は海兵出身の士官から殴られ、その鬱憤を予科練出身の下級兵士に晴らしていたのだという。





 そうとう頭にきていたようだ。ただ、それは一部の予備学生士官なので全ての予備学生士官がダメだった訳ではない。これは海兵出身者にも同様のことがいえる。土方敏夫『海軍予備学生零戦空戦記』等を読むと今度は予備学生側からみた海軍というのが見えて面白い。


 著者は特攻待機の状態で終戦を迎えるが、その描写は淡々としているというかどうも今ひとつ実感がわかなかったようだ。場所が大湊だったことも影響しているのだろう。


 因みに著者が実戦で使用した兵器の中に「誘発弾」というものがある。これは、磁気感応機雷を破壊するための爆弾で、長さ30cmくらいのもので船舶のスクリュー音と類似の作用を出すことができ、機雷を爆破することが可能だったという。



零式水偵空戦記―ソロモン最前線の死闘 (光人社NF文庫)

商品の説明
昭和十八年秋、落日のソロモン最前線を舞台にペア三人が一致協力、出撃すれば生還の保証なき零式水偵を駆って、夜間爆撃に敵中突破長距離索敵行に、制空権なき死闘をくり広げた海軍水上機隊―フロート付の機体を操る予科練パイロットが、知られざる大空のサムライたちの戦いの日々を赤裸々にえがいた感動作。
(amazonより転載)


 二号爆弾といい、誘発弾といい、あまり知られていない兵器があるものだと思った。二号爆弾は海軍戦闘機隊が使用した三号爆弾の前型なのだろうか。うーん、よくわからない。


 本書を読めばわかるが描写が非常にリアルだ。戦記物の多くがゴーストライターを使用しているらしいが、これは著者が自分で書いたように感じる。理由はうまくいえないが、何か行間から滲み出てくるものがあるという感じだろうか。非常に勉強になる本であった。



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