不定期更新です。 更新は気分次第でーす(^_-)



総評
 本書は、著者が海軍士官を中心とする方々との交流の中で聞いたエピソードをまとめたものである。内容は非常に興味深く、今まで知られていなかったエピソードも多い。著者の戸高氏はあまり自分の意見を前面に出さす記録者として本書を執筆している姿勢に好感が持てる。14章立てで1章一人なので1章読み切りという感じでついつい読むのが止まらなくなってしまう。本当に面白かった。


書評
 本書は著者が戦後生き残った海軍士官から直接話を聞いた内容を書いている。厳密に言うと13人の海軍士官と1人の報道カメラマンである。戸高氏の著書は以前、古書店で偶然見つけた『海戦からみた太平洋戦争』があまりにも面白かったので、同氏の別の著作を購入したのだ。


 内容は一貫性が無いという批判もあるが、聞き書きなので当たり前だ。逆に私は簡潔にそれぞれの人の興味深い話が短編として記されているので、読みだしたら止まらなくなってしまった。話の内容が人によって違うので退屈しないのだ。


 聞き書きに登場する海軍士官は、以下の通りである(カッコ内は著書)。

第1章、大井篤(『海上護衛戦』)
第2章、藤田怡与蔵(『零戦隊長藤田怡与蔵の戦い』※藤田氏の著作ではない)
第3章、関野英夫
第4章、山本正治
第5章、大西新蔵(『海軍生活放談』)
第6章、三原 誠
第7章、日辻常雄(『最後の飛行艇
第8章、新見政一(『第二次世界大戦戦争指導史』)
第9章、小瀬本國雄(『激闘艦爆隊』)
第10章、中島親孝(『聯合艦隊作戦室から見た太平洋戦争』)
第11章、千早正隆(『連合艦隊興亡記』等多数)
第12章、山下清隆
第13章、豊田隈雄
第14章、牧島貞一(『炎の海』)



 大井篤氏、日辻常雄氏等半数程の方は著書を持っており、戦記物をよく読む人だったら知っているかもしれない。一応、私の分かる限りで著書を挙げておいた。本書の内容は多岐にわたり、末期の瑞鶴は天山艦攻が3機余計に積めるようになっていた等、あまり知られていない情報や現場の人間しか分からないことが満載されている。


 私が面白かったのは、第3章の関野英夫氏が遠洋航海でサンフランシスコに行った時、野村吉三郎長官が日系人に万が一日米が戦争になったとき、我々はどうするべきかということを質問されたところだ。それに対して野村長官の対応が面白い。

<その場の雰囲気は、長官が「日本に忠誠を尽くせ」ということを期待していたようでした。ところが野村長官は「君たちはアメリカ国籍なのだから、立派なアメリカ人としてアメリカに忠誠を尽くさなければならない。それが大和民族の正しい忠誠心というものだ」とはっきり言ったそうです。


 この言葉に関野氏は感動したという。さらに戦後、米海軍基地のパーティーで関野氏が、

「我々日本海軍軍人だった人間は、米海軍がいかに勇猛でかつ突撃精神を持っているか、またどのような任務でも全力で戦う海軍であることを知っている。だからこそ米海軍は信頼できると思っている。


 と発言したのに対して、米軍側は、

「我々も日本海軍がどんな困難な任務でも命をかけて最後までそれを果たす海軍であることを良く知っている。だからこそ信頼できると思っている」


と返してきたという。これは北村淳『米軍が見た自衛隊の実力』でも米軍軍人の言葉として同様のことが記されている。これはリップサービスではなく、米軍軍人の本心であると私は思っている。ただ、戦時中、日本軍には捕虜の人権を無視していたというような残念な話もある。


 本書で紹介されている士官の最高位である新見政一中将が装甲巡洋艦出雲で遠洋航海に行った際、サンフランシスコで火災に出くわした。その時、出雲でも消防隊を出したのだが、アメリカ側は当然、ポンプ車やはしご車を出したのに対して、鳶口や高張提灯という江戸時代さながらの装束で駆け付けたというちょっと恥ずかしいエピソードも載せている。


 著者曰く、新見氏は分析や研究能力は高かったが、押しの弱い性格だったようだ。その新見氏の著作『第二次世界大戦戦争指導史』に対して昭和天皇が「これはいい本だから皇太子にも読ませたい」と語ったというエピソードも面白い。私は皇太子ではないが、さっそくアマゾンで購入してしまった。


 中島親孝氏の章も面白い。栗田健男中将の艦隊はまともに敵に突っ込んだことがないことや「仙人参謀」黒島亀人大佐はかなり独りよがりの性格であったことなど面白い。因みに黒島大佐については千早氏も宇垣纏『戦藻録』の一部を紛失したことについて自分に都合の悪い部分があったので処分したのではないかと語っている。


 戦艦武蔵の副砲は最上型巡洋艦の主砲であり、装甲が薄い。ここに命中弾を食らったら弾薬に引火して致命傷になるということに誰も気が付かなかったことも初めて知った。戦艦大和型に関しては戸高氏の著書『海戦からみた太平洋戦争』でも大和型は着弾の振動によって主砲の照準器が使えなくなるという欠点があったことが書かれている。

 
 その他、殺人光線の開発に従事した山本正治氏や有名な坂井三郎氏が負傷して単機で帰る途中の零戦を作家の丹羽文雄氏が見ていたこと、著名な航空機設計者クルトタンク氏と語り合った豊田隈雄氏や戦後軍人の公職追放はマッカーサーはむしろ批判的であったのに日本人が強硬に主張していたことなど、興味深いエピソードが多い。



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