ミニマム情報戦記

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 特攻隊の生みの親と言われる日本海軍の提督、大西瀧治郎。太平洋戦争末期、フィリピン決戦が叫ばれる中、大西瀧治郎の発案により特攻隊は生まれた。それ以前にも個人的に敵に体当たりをしたり、小規模の特攻は命令されていたようだが、大々的に特攻隊が編成されたのはフィリピンが最初である。


 本書は特攻隊生みの親、大西瀧治郎がなぜ特攻を命令したのかを調査した本だ。ことの始まりは零戦搭乗員、角田和男氏が聴いた大西瀧治郎の特攻の真意から始まる。それは

「特攻をすることによって天皇陛下に戦争終結の聖断を仰ぎ、講和のための手段とする」

 ことであったという。この角田氏が聴いた話を当時、大西瀧治郎の副官であった門司親徳氏にぶつける。基本的にこの二人の知った情報により話は展開する。結論は上記のものになるのだが、本書は特攻隊に編成された若者、海軍上層部等をうまく描き出している。


 中には海軍乙事件と呼ばれる連合艦隊の参謀長、福留繁以下がフィリピンで捕虜になり、後日、救出される事件についても言及している。福留参謀長は、本来なら軍法会議にかけられるところを不問に付し、その後栄転することになる。


 これと比較して興味深いのは坂井三郎『大空のサムライ』に登場する下士官陸攻搭乗員達である。彼らは開戦初頭、同じくフィリピンで現地人の捕虜となるが、その後進出してきた日本軍に救出される。


 その後、日本海軍軍人が捕虜になったという事実を消すため戦死させようと最前線に送られる。編隊ではカモ小隊カモ番機といわれる第三小隊三番機のさらに後ろ四番機の位置に付けられ出撃させられる。しかし練度の高い彼らは生き残ってしまう。


 司令部はさらにポートモレスビーへの単機偵察を命じるが、それでも生き残ってしまう。そしてとうとう敵飛行場に体当たりを命じられ戦死する。高級軍人と下士官兵への対応から当時の日本海軍の体質が分かって興味深い。ここらへんの顛末は森史朗『攻防―ラバウル航空隊 発進篇』に詳しい。


 それはそうと私が印象に残ったのは大西瀧治郎の死に方である。特攻を命令した士官の多くは戦後、何事もなかったかのように平和な生活を楽しむのだが、大西瀧治郎は違った。特攻を命じた責任をとるために割腹自殺する。


 それも腹を十文字に切り裂き、さらに首と胸を突いたのち介錯も拒み半日以上も苦しんで死ぬという壮絶なものだった。その後、大西自決を知った中澤佑中将の「俺は死ぬ係じゃないから」や戦後、元特攻隊員になぜ自決をしないのかを問われた猪口力平参謀の「残された者にもいろいろ役目があるんだよ」と苦笑して答えた姿と比較すると何ともいえない。



特攻の真意 大西瀧治郎はなぜ「特攻」を命じたのか (文春文庫)

商品の説明
「特攻隊の英霊に曰す 善く戦ひたり深謝す」。昭和20年8月16日、大西瀧治郎中将はそう書き遺して自刃した。自ら企図した特攻を「統率の外道」と称しながら、なぜ数多の若者に死を命じなければならなかったのか。生存者の貴重な証言をもとに、特攻の父と呼ばれた男の謎に迫る衝撃のノンフィクション!
(amazonより転載)


 本書は戦後、大西の妻が坂井三郎の印刷店の名目上の取締役に就任したことやその裏事情等にも触れていて面白い。大西の副官門司親徳氏の聡明さも私としては印象が強かった。本書は大著ではあるが、本書の解説にもあるように推理小説のように話が展開するのでついつい引き込まれてしまう。本書を読むと著者がどれだけ調査したのかが分かる。良書だ。



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